初聴きディスクレポート

洋楽ひとことレビュー Vol.28(2011年10月)

10月に買った&借りたアルバムの、「一番最初に聴いたとき」の感想を紹介します。いろいろ買いましたが、実はまだあんまり聴き込めてないというものも多いです。最初に聴いたときの感想なので、聴いた回数はあまり関係ないのですが。今月は5つ星が1枚のみ。全体的に良作が多かったけど、飛び抜けてよかったのは1つか2つだけかな。以下、よかった順に発表します。

<★の解説>----------------------
★★★★★今年の名盤上位20位以内確実!
★★★★☆すばらしい
★★★☆☆普通に良作
★★☆☆☆若干気になる部分もあり。もう少し聴きこみたい
★☆☆☆☆期待ハズレ
☆☆☆☆☆全然ダメでした
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さっそく「Album of The Month」から。


【Album of The Month - Grouplove / Never Trust A Happy Song】
★★★★★
grouplove
まるでアメリカとイギリス両方のインディーロックのいいとこ取りのよう。メインボーカルであるクリスチャン・ズッコーニのハスキーで野性的でエモーショナル感たっぷりなところがUSオルタナやポスト・ハードコアな印象も与えつつ、ブリットポップのような突き抜けた陽気さもある。しかしここに収められた全12曲は曲調がまるきりバラバラで、言ってしまえば統一感がない。でも陽気だったり陰鬱だったり、この両極性が彼らの最大の魅力なのではないだろうか。どの曲もアレンジがよく練られておりクオリティが高いし、メロディもキャッチー。もう一人のボーカル、ハンナ嬢がメインボーカルの曲も、エレクトリックなトラックとアトモスフェリックで中性的な声質の相性がとてもよく感じられる。実験的な要素もありつつ、どの曲も耳馴染みがよくダンサブルな点はFoster The Peopleとの共通項も感じた。もしFoster The Peopleの全米ヒットによって、アメリカでインディロックシングルがメインストリームに進出する下地を作ったとしたら、その後に続くのは彼らではないかと思う。捉えどころがない、それなのにとても耳に残る。今後聴きこむにつれて、さらに評価が上がっていきそうな予感もある。

1曲だけでは絶対に彼らの魅力を十分に伝えきれないので、異なるタイプの2曲を紹介します。












Neon Indian / Era Extrana
★★★★☆
チルウェイヴははっきり言って大して好きじゃないんだけど、結局チルウェイヴ四天王(ってなんだよ笑)のWashed Out、Toro Y Moi、Memory Tapes、そしてこのNeon Indian全てゲットしてしまった。ただ、「チルウェイヴ」だから聴いてるわけではなくて、どれもメロディがしっかりしていて普遍的なポップスとして成り立っているところに惹かれてるのです(この4組は実際、最新作でチルウェイブの枠に当てはまらない音楽をやっているし)。このアルバムも例外ではなく非常にメロディアス。中でも白眉なのは「Hex Girlfriend」で、高揚感がありつつ哀愁も漂う甘酸っぱいメロディが好き。ちなみにこの曲は先日ちーたかさんが「Hard To Explain」のイベントでDJした時もプレイしていました。
先行試聴した段階ではゲーム音楽っぽいチープなピコピコガチャガチャした装飾音が余計に感じてイマイチだと思ったのですが、メロディが印象に残るので気になってしまい何度か試聴するうちにハマりました。1曲目「Heart: Attack」のイントロにおける、天に上っていったあとにバーッと一気に世界が広がる感じがたまらない。





Clubfeet / Gold On Gold
★★★★☆
オーストラリアのメルボルンと、南アフリカのケープタウン出身というところが一風変わってる5人組バンド。一応オージーエレクトロというカテゴリでいいのかな。Cut CopyやVan SheなどModularレーベル勢と似たタッチのメロディアスでダンサブルなサウンド。シンセの音はどれも80's風でキラキラしていて、掛け声風コーラスも入っていたりとかなりキャッチー。繊細で神経質そうなボーカルがHot Chipにも近い印象。あまり日本では話題になってないのか、2010年リリースである本作をつい最近知ったけど、リリース時にはピッチフォークでは7.7点とまあまあ高めの点数。次作で本格ブレイクしてもおかしくないポテンシャルを持っていると思う。





Oasis / Standing On The Shoulder of Giants
★★★★☆
2001年作品ながら、今まで聴かずにスルーしてしまっていたアルバム。ノエル本人が「出すべきではなかった」と言うなど悪い評判しか聞かなかったので今まで聴かずにいたのだけど、これはかなりかっこいい。確かにリリース時に聴いていたらハマらなかったかもしれないけど、いろいろな音に慣れた今となってはグルーヴ感、サイケ感、ロックンロール度どれも見事な出来栄え。リアムの声もまだ若々しく、若さを取り戻した彼らの新譜を聴いているような気分になれました。





Army Navy / Army Navy
★★★★☆
装飾(シンセとかピアノとかホーンとかストリングス)なしのプリミティブなロックンロールバンドには、以前からあまり魅力を感じなくなっていたんだけど、これは久々にグッときた。本作における代表曲「My Thin Side」はリバティーンズを思い起こさせる性急につんのめったブリティッシュ・ビートとピロピロしたギターが印象的な爽快なロックンロール・チューンだけど、アルバム全体を通して聴くとグラスゴーのギターポップバンドや90年代アメリカのパワーポップバンドっぽさが前面に出ている。今年リリースされたセカンドもぜひチェックしたい。





Fountains of Wayne / Sky Full of Holes
★★★★☆
日本では7月リリースながら、ようやく聴けました。今作ではトレードマークのディストーションギターは控えめに、アコギをジャンジャラと鳴らす曲が大幅に増加。それによってサウンドの印象は円熟味を増したものになったけど、爽やかでときおり哀愁も感じさせるキャッチーなメロディはやはりいつものFOW印。聴けば聴くほど良さがにじみ出るスルメ盤になりそう。





Ray Charles / The Very Best of Ray Charles
★★★★☆
彼の伝記映画「Ray」は公開当時観に行ったけど、当時の「生涯の好きな映画」1位になるくらい好きだったし、それ以来彼のアルバムを入手しておきたかったのだけどいつの間にか月日が流れ、ようやくゲット。この50曲入り2枚組ベストはHMVのセールで500円でした。デジタルリマスターが施され非常に音が良く、彼の歌とピアノの素晴らしさを堪能できます。ジャズ曲やバラードもいいけど、「Mess Around」みたいなロックンロール・ナンバーも素敵。





Clap Your Hands Say Yeah / Hysterical
★★★☆☆
実はこれまでのアルバムを聴いたことがないのです。以前フジロックで少し観たことがある程度なのでこれまでがどうだったのかよくわからないんだけど、どうやら本作でだいぶ変わったらしい。何がどう変わったのかは比較のしようがないのでうまく説明できないんだけど。とにかく本作に関して言えばダンサブルな四つ打ちやクラウトロック的反復ビートにちょっと眠たげな脱力ボーカルとキラキラしたシンセが乗っていて、けっこう踊れるロック・サウンドになっている。それらの曲群に対して良いコントラストを見せているのが、「Idiot」に代表されるちょっと切ない系のミディアムテンポな曲で、アルバム全体の緩急の付け方もうまい。初めから終わりまでダレることなく聴くことができるところが好き。





Noel Gallagher's High Flying Birds / S/T
★★★☆☆
世間ではだいぶ評判のいい、Oasisの眉毛のさらに濃いほうのソロデビューアルバム。いかにもOasis印な曲が目白押し(Oasisのメインソングライターは彼だったから当たり前)なのだけど、彼らの後期アルバムに目立ったマイナー調で四分音符でズンズンしたリズムの曲が多め。でもそのせいか、若干一本調子に感じられてしまった。まあ統一感があっていいのだけど。しかしメロディの良さや、スモーキーな曲調には彼のソウルフルな歌声が合っている。国内盤のボーナストラックとして収録されている「The Good Rebel」みたいな高揚感を持った曲がもう少し多めに入っていればもっとよかったのにとも思った。おそらく彼の本領が発揮されているのは、すでにほとんど完成していると言われる次のアルバムだろう。そちらのアルバムは彼曰く「もっとブっ飛んでる」らしいので、期待値も含めての星3つ。ちなみに自分は兄弟対決、Beady Eyeに軍配を上げたい。





Feist / Metals
★★★☆☆
前作収録の「1234」がiPod nanoのCMソングに起用され、「My Moon My Man」もBoys Noizeによるリミックスがクラブヒットしたりと話題となったカナダの女性シンガー。今回は前作ほどロック寄りではなく、陽性に弾けた感じもない。むしろ内省的なアコースティック調の曲が大半を占めている。しかしそうすることによって、サウンドプロダクションよりも彼女のハスキーなボーカルが引き立ち、アトモスフェリックで統一感のある作品に仕上がっていて、アルバム全体がまるで一つの映画作品のよう。ただ、前作が好きだった自分としてはもう少し前作寄りな方が良かったかなとも思う。





The Shangri-las / The Best of The Shangri-las
★★★☆☆
60年代に活動していた3人組ガールズ・グループのベスト盤。The RonettesやThe Crystalsと同じように、ポップな曲調にコーラスワークの妙で魅せるグループ。今年になってから立て続けにこの3組のベスト盤を買ったけど、どれもやはり金太朗飴のようにポップさ全開。The Shangri-lasは他の2組と比べると若干陰があるけど、それがマイナスなのではなく逆に他との差別化に成功していて、表現の幅の広さを感じさせられます。





Canon Blue / Rumspringa
★★★☆☆
今月はいろいろ買ったけどあまり聴く時間がなくて、本当に聴き込めてないのだけど、このアルバムのようにサウンドが多彩なアルバムは感想が非常に書きにくい。全ての曲名に地名のサブタイトルが付いているので、各地を巡ってインスパイアされて曲を作ったのだと思われる。「Indian Summer (Des Moines)」はトロピカルなキーボードの音が入っているけど陽性な感じはあまりなく、夏の終わり、あるいは「ビーチに来たけど土砂降り」みたいな寂寥感が漂っていて、物悲しささえ感じるストリングスがその寂寥感を醸し出しているのかもしれない。しかしこのアルバムの本領発揮は後半。「Fading Colors (Bloomington)」、「Bows & Arrows (Vegas)」といった人力ブレイクビーツや「A Native (Madison)」のように性急なハンマービートの曲が続き、前半のややレイドバックした雰囲気が嘘のよう。これらの曲が前半にあった方がよかった。





Copeland / Beneath Medicine Tree
★★★☆☆
「秋に聴きたいアルバム」としてTwitterのフォロワーさんにオススメされたアーティスト。名前は知っていたけどアルバムを通して聴くのは初めて。エモーショナルで胸を締め付けられるようなメロディと優しいボーカル、ピアノの流麗な旋律はWaking Ashlandにかなり近い印象。





Wilco / The Whole Love
★★★☆☆
今年のフジロックでのライブでも強烈なインパクトを与えてくれたシカゴ出身バンドの8作目。前作や前々作は結構実験的な作品だったようだけど(未聴なので詳細不詳)、本作はメロディーを中心に据えられた作品になっている。とはいえ、実験的な精神とカントリーやフォークからエレクトロニカに至るまで様々なジャンルのミクスチャー的サウンドは健在で、特にオープニングの「Art of Almost」はRadioheadを思わせる壮大で複雑なナンバー。その他、各曲の印象は見事にバラバラで聴き終わる頃にはお腹いっぱいに。そんなところへ、12分超のラスト曲「One Sunday Morning (Song for Jane Smiley's Boyfriend)」がくるので、ちょっと消化不良気味になってしまうのが残念。もう少しコンパクトにまとまっていれば、各曲の印象ももっと強くなったはずなのにと思う。





The Stone Roses / The Complete Stone Roses
★★★☆☆
絶対にあり得ないと思っていた彼らが奇跡の再結成。ということで、オリジナルアルバムには収録されていないシングルやB面曲目当てで聴いてみた。デビューシングルは置いといて、名曲「Sally Cinnamon」の音源がこうして手元に置いておけるのはうれしい。収録曲の半分くらいは既に持っている音源だったので、評価としてはこんなもんで。





Copeland / In Motion
★★★☆☆
「Beneath Medicine Tree」とともにこちらも。こちらはちょっとポスト・ハードコア風な激しい曲も入っているので、古い作品なのかと思ったらこっちの方が後なんですね。当時ファンはオープニングの「No One Really Wins」に驚かされたことでしょう。評価としては「Beneath」の方がよかったかな。





Bjork / Biophilia
★★☆☆☆
デビュー作~5作目までは「今度はこんなタイプの曲できましたか!」というのが少なからずあったのに対し、前作ではそういった要素が少なく残念だった。そしてこの本作も一部を除いて、あまり驚きのない作品だった。もちろん「Crystalline」における後半のドラムンベースは驚きを与える部分ではあるけど、そう言った驚きが他数曲しかないように感じられた。良くも悪くも「いかにもBjorkらしい」アルバムで、雰囲気としては「Vespatine」に近いかも。ガムランやオルガンを改良したオリジナルな楽器は素晴らしい音色を奏でているけど、ビートの印象が弱い曲やメロディが弱い曲もある。かつては「All Is Full of Love」のように、ビートレスでもメロディが印象的な曲が書けていたのに・・・。このアルバムはアプリと一緒に「体感」するアルバムなのでCDの音だけ聴いてこの作品の感想を述べるのは筋違いなのかもしれないけれども。





Justice / Audio, Video, Disco
★☆☆☆☆
そもそも世間では彼らはエレクトロ・ユニットと捉えられているけど、僕自身は彼らをエレクトロという範疇に当てはめたことがない。デビューアルバムにおける彼らの魅力は、ファンキーなうねるベースだった。よって自分としては、彼らはエレクトリックなファンクという位置付けだった。だから待望の新作でもファンキーなものを期待していたんだけど、とにかくこのアルバムは間違った方向にファンクし過ぎたように思う。ディストーションのかかったシンセが減ったのは問題ではなく、むしろそれは歓迎すべき方向性なのだけど、バキバキとうねるベースがないのが寂しい。もちろんウニウニとかネチネチとしたファンクさはあるけど、要はホワイト(白人)ファンク。ブラックなファンクが聴きたかったな。あと、音の使い方がダサくなった。70's~80'sのプログレやディスコファンク系の音を狙ったつもりだろうし、数年後には一巡してカッコイイ音かもしれないけど、少なくとも今の自分には合わなかった。期待が大きかっただけに、ガックリ度も高め。

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