初聴きディスクレポート

洋楽ひとことレビュー Vol.29(2011年11月)

11月に買った&借りたアルバムの「一番最初に聴いたとき」の感想です。次回からこの記事のタイトル、過去分も合わせて変えたいと思ってます。洋楽だけでなく邦楽についても(少ないけど)書くことはあるし、「レビュー」っていうのが個人的にはアーティストの背景とか制作意図とかにまで踏み込んだ批評というイメージがあるので。この記事は、作品に初めて触れたときの直感的なファーストインプレッションを個人的に記録していきたいと思ったのがきっかけだからもう少し軽いものなのです。「アルバム初聴き感想」とかがストレートでわかりやすいのかな。


<★の解説>----------------------
★★★★★今年の名盤上位20位以内確実!
★★★★☆すばらしい
★★★☆☆普通に良作
★★☆☆☆若干気になる部分もあり。もう少し聴きこみたい
★☆☆☆☆期待ハズレ
☆☆☆☆☆全然ダメでした
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では今月もさっそく、「Album of The Month」からご紹介します。


【Album of The Month - Birdy / Birdy (Deluxe Edition)】
★★★★★
birdy-birdy2011
10月は、今年の下半期で最も期待しているデビューアルバムと言ってもよいThe Sound of Arrowsの「Voyage」があり、さらに前作が2008年の私的年間ベストアルバム1位となったColdplayの新譜が(9月末リリースながら)手元に届いたので、Album of The Monthはこのどちらかになると思っていた。少なくともこの、イギリス出身の15歳の女の子によるアルバムに出会うまでは。
もちろん、この後の感想を見ていただければおわかりのように、ColdplayもThe Sound of Arrowsも期待通りの内容の作品を届けてくれたことは間違いない。しかしそれらを凌駕するほどに、エモーションと抒情性に満ちたこのアルバムは僕の心を激しく揺さぶるものだった。1曲を除いてほぼ全編がカバーであるにもかかわらず、選曲とアレンジの妙でここまで完成度の高い傑作を突き付けてきたのは、もちろんプロデューサーのジェイムス・フォード(Arctic Monkeys、Klaxons、Last Shadow Puppets他)とジム・アビス(Adele、Arctic Monkeys)による助言もあったのだろうけど、15歳にしてここまで「個」を確立し、シンプルなピアノ弾き語りからドラムマシンを使ったほんのりエレクトリックな曲、オーケストラも加わった壮大なナンバーを自分のものにする才能は驚異的だ。普通、歌がショボイとそういったアレンジはオーバープロデュース気味になり、ボーカルの印象が薄れてしまうのだけど、初めて聴いたときにまず強く心に残ったのは憂いも秘めたこの声だった。かつてアデルの、彼女が19歳の時に録音したアルバムを聴いたときも同様の印象を受けたのだが、彼女はまだ15歳。来たるべき次回作はオリジナル曲メインで真っ向勝負してくるだろう。本当に今後が楽しみな存在である。



※Mewとスマパンのカバーが収録されたデラックス盤が絶対オススメ。





Coldplay / Mylo Xyloto
★★★★★
今さら説明不要ですね。「現代で最も有名なロック・バンド」と言っても過言ではない彼らによる5作目は基本的に前作路線を踏襲しており、キラキラとしたピアノリフやアンビエント/シューゲイザー系のギターエフェクト、高揚感のあるメロディが混然となったアルバムで、今回もプロデューサーのブライアン・イーノ色が色濃く出た作品と言える。その前作路線にさらに「Every Teardrop Is A Waterfall」のようなアンセミックな祝祭感が加わったことで、初期にメディアからさんざん言われたような「引きこもりのための音楽」というものから完全に脱却しており、冒頭から(2曲目だけど)アップテンポなナンバー「Hurts Like Heaven」が飛び出すパターンは彼らにとっての「アッパーに攻めます」宣言のようだ。ただ、佳曲満載ではあるけどリアーナとコラボした曲「Princess of China」は少し蛇足だった気も。リアーナの声が浮いているとかではなく、アルバム全体の流れとして。





The Sound of Arrows / Voyage
★★★★★
先述のように、下半期で最も期待していたデビューアルバム。2年ほど前にリリースされたシングル曲「Into The Clouds」や「M.A.G.I.C.」(アルバムでは「Magic」に改題)の時からずっとアルバムを待っていて、ようやくこうしてリリースされたのが何よりうれしい。その2曲もしっかり収録され、ペット・ショップ・ボーイズ感バリバリの哀愁エレポップとキラキラした高揚感のあるエレクトロがバランスよく配された作品となった。オープニングやエンディング、そして「Ruins of Rome」「Conquest」「Lost City」といった曲名から、アルバム全体のコンセプトやストーリー性が感じられる点もポイントが高い。難点はリアレンジされた「Into The Clouds」が、音の粒子はクリアになった半面、作り込み感が出てしまったこと。この曲に関してはシングルバージョンの方が好きです。





Big Troubles / Romantic Comedy
★★★★☆
えっ、これがあのBig Troubles?というのが最初の率直な感想。ガレージで宅録したようなガシャメシャ感とローファイ風味が魅力だった前作から一転して、音はすっかりクリアに進化を遂げた。それにより、前作ではローファイ・シューゲイズな音響に隠れがちだったメロディセンスが、今作では冴えわたっている。それはまるでTeenage FanclubやFountains of Wayne、はたまたスピッツのように、エヴァーグリーンなグッドメロディを奏でるギターポップバンドと並べても遜色ないレベルだし、ボーカルの歌い方はSmith Westernsも彷彿させる。タイトル通り、ロマンティックで少しコメディ的(シリアスでないという意味において)でもあるギタポ名盤の誕生。





Under Electric Light / Waiting For The Rain To Fall
★★★★☆
まだあまり知名度が高くない上に、CDフォーマットは日本でしかリリースされていないカナダ出身の宅録シューゲイザーユニット。ローファイなドラム音の質感はチルウェイヴ/グローファイとも共振する部分もあるけど、Slowdiveを思わせるメロディアスでソフトなシューゲイズサウンドはかなり耳馴染みがいい。表題曲「Waiting For The Rain To Fall」のビーチボーイズ風なメロディをはじめとして、けだるいボーカルの中にも明るくハッピーなヴァイブが感じられ非常にポップ。であるにもかかわらず、本作は墜落する飛行機の乗客の心情をコンセプトにした作品だというあたりもひと癖あって、そこが魅力的な要素になっている。





Summer Camp / Welcome To Condale
★★★★☆
イギリスの男女デュオによるデビューアルバム。「ローファイ」「宅録」「80's」といったタームで語られるサウンドでありながら、単純にエレポップやチルウェイヴには括ることができないあたりが彼らの本質的な個性をよく表していると思う。似たようなバンド名が多い中(90年代にはまったく同名のバンドもいた)、彼らはギタポでもソフトサイケでもなく、「電気仕掛けのストロークス」とも言えそうなほどキャッチーなメロディを最大の武器に、そこにノスタルジックな電子音と少し間が抜けたような男女ツインボーカルを加えることによって爽やかかつストレンジなサウンドを鳴らしている。古いフォトアルバムから引っぱってきたようなインナーのアートワークも音とマッチしているのがいい。





Avalanche City / Our New Life Above The Ground
★★★☆☆
ニュージーランド出身の男性ソロユニット。本国ではクライストチャーチで起きた地震で被災した人々の心を癒し、チャート1位になったそうだ。優しげなボーカルとギターの音、牧歌的なメロディは癒し度満点。ウクレレやバンジョー、グロッケンシュピール、アコーディオンなどオーガニックな音で構成された、癒し系オーケストラルポップと言える作品だけど、曲のバリエーションが少ないのが残念だった。たまに「この曲とこの曲、イントロ同じだよね…」というのもあったりして。でもメロディセンスはあるので、次作ではバラエティ豊かな作品を作ってくれることを期待したい。





Russian Red / Fuerteventura
★★★☆☆
少し舌っ足らずな歌い方がなんとも胸キュン(←死語)な、スペイン出身の才色兼備な女性シンガー。正直、1回目聴いたときはそのキュートな声を除いて「普通だな」という印象だった。それは、彼女が敬愛するベル&セバスチャンを生んだグラスゴーの地で、ベルセバでおなじみのトニー・ドゥーガンによるプロデュースで、ベルセバのメンバー4人を含むバックバンドでレコーディングされたからだろう。つまり、あまりに「ベルセバ過ぎた」ことでサウンドに新鮮味が感じられなかったのは事実。しかし2回目、3回目と聴きこむにつれてそのメロディセンスや歌声の耳馴染みのよさが際立ってきて、聴くたびに好きになってくる。これはベルセバ同様、長く聴けるアルバムになるはず。





David Lynch / Crazy Clown Time
★★★☆☆
「ロスト・ハイウェイ」「ツイン・ピークス」で有名な映像監督によるデビューアルバム。僕は彼の映像作品はあまり見たことがないのだけど、音を聴いたときに「デヴィッド・リンチの世界観そのまんまな音だな」と思った。要は、彼のパブリック・イメージである「不穏さ」「ダークさ」「いかがわしさ」が前面に押し出されたサウンドであり、それはまさにPortisheadが「Dummy」でみせた世界と一致していた。しかし単純にダークな作品で終わらせないのが凄いところ。先行シングルの「Good Day Today」はキャッチーなエレポップだし、カレン・O(Yeah Yeah Yeahs)がボーカル参加した「Pinky's Dream」も、スリリングな曲調でミニマリスティックな作りなのに非常に聴きやすい。リンチ・ワールドをより深く堪能したい方はもちろん、トリップホップやアブストラクト、ウィッチハウス、ポストパンク好きも唸らせる作品。





Friendly Fires / Friendly Fires (Expanded Edition)
★★☆☆☆
2008年リリースの本作は、まだニューレイヴとか新世代ポストパンク(この名称好きじゃないけど)の範疇に収まる凡百のバンドの一つだったと思う。フリーDLコンピに入っていたので以前から音源は持っていた「Paris」「Jump In The Pool」の2曲は、まあまあ好きではあったけど少しテンポが性急すぎて知的さやセクシーさが感じられなかった(持論として、世の中のダンスバンドは全てセクシーであるべき)し、当時よく彼らの記事にみられた「マイブラの影響を感じさせる云々」といった余計な情報によって、試聴した際に違和感を感じてしまいそのままスルーしていた。今年リリースされたセカンドアルバム「Pala」で彼らの知的さとセクシーさを垣間見ることができたことをきっかけに、あらためてデビューアルバムを聴いてみようと思ったが、確かに「マイブラ云々」の固定概念が取り払われた今は以前よりすんなり聞くことができた。しかし洗練されていないと感じる部分もあり、一時のムーブメントの中で作られた本作はやはり悪い意味の古くささを感じる。しかし逆にそれによって、「Pala」でみせた彼らの成長ぶりをあらためて知る結果にもなった。海外のバンドはこういった急成長を遂げるパターンが多いから面白い。





The Raveonettes / Whip It On
★★☆☆☆
今年最新作がリリースされ、過去作も含め個人的に再評価したデンマークの轟音キャンディポップ男女デュオ。唯一未聴だったのが、彼らのファースト「Chain Gang of Love」以前にリリースされたこのEP。本作は全曲がBフラットマイナーで作られているため、その後の諸作にみられるオールディーズ風の甘いサウンドはなく、ダークで凶暴なノイズと性急なビートの応酬となっている。全曲を同じコードで統一するっていうコンセプト自体は好きだけど、甘いメロディが魅力な彼らだけにやはりダークな曲調だけだとちょっと物足りない。





M83 / Hurry Up, We're Dreaming
★☆☆☆☆
最初に断っておくと、今となってはもう一つか二つくらい星をあげてもいいとは思う。だけど最初に聴いたときは、まずそのボーカリゼーションの変化にただ驚いた。これまでの囁くような歌声ではなく、本作で突然ハイトーンな声を張り上げるようになり、まず違和感を覚えた。正直ちょっとキンキン過ぎた。コンセプチュアルな作品で、それによって2枚組となった点も理解できるのだけど、コンパクトな作品が好きな僕としては冗長。2枚通して聴いてもバカ長くはないんだけど、曲の多さでお腹いっぱいになってしまうので1枚にまとまっていたほうが良かった。むしろここに収録されている短いインスト曲の方が、ボーカル曲よりも好き。曲単位では好きな曲もたくさんあるだけにもったいない。まあ、聴くごとに好きな曲はどんどん増えてるけど。





■過去アーカイヴ

10月のアルバム感想

9月のアルバム感想

8月のアルバム感想

7月のアルバム感想

6月のアルバム感想

5月のアルバム感想

4月のアルバム感想

3月のアルバム感想

2月のアルバム感想

1月のアルバム感想
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