初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.30(2011年12月)

「洋楽ひとことレビュー」あらため「初聴きディスクレポート」です。相変わらずダサい名称ですみません。わかりやすさと汎用性を重視してこのタイトルにしました。それではさっそく、12月に買った&借りたアルバムの「一番最初に聴いたとき」の感想をレポートしていきます。



<★の解説>----------------------
★★★★★今年の名盤上位20位以内確実!
★★★★☆すばらしい
★★★☆☆普通に良作
★★☆☆☆若干気になる部分もあり。もう少し聴きこみたい
★☆☆☆☆期待ハズレ
☆☆☆☆☆全然ダメでした
---------------------------




では今月もさっそく、「Album of The Month」からいってみましょう。

【Album of The Month - Generationals / Actor-Caster】
★★★★★
generationals
12月はそれほど注目のリリースがなかったのと、1年の締めくくりに年間ベストとか決める上で今年のリリース作品で買い漏らしがないかあらためて整理する月でもあった。そんな中で、そういや買ってなかったと思い出したのがニューオーリンズの2人組Generationals。本作はセカンドアルバムでリリースは今年の4月、国内盤は6月。確か知ったのは5月か6月くらいだったけど、ファーストとセカンドどっちから手を出そうかと迷っているうちにすっかり忘却の彼方へ追いやってしまっていた。そんなわけで、ファーストを聴かずにとにかくセカンドを購入してみたが素晴らしかった。

例えるなら、MGMTがまだ賢くなる前に、難しいことを考えずに初期衝動で(慣れないキーボードでいろいろ実験しながら)無邪気に演奏してみましたという感じ。チャイルディッシュなボーカルはMGMTのアンドリューの声に似ていて、でもMGMTよりもヤンチャな感じもする。1曲目「Ten Twenty Ten」はのっけからロカビリー風で驚かされる。ネオアコ風のチャカチャカしたギターも小気味よく、そこにストロークスのファースト期のような瑞々しいポップネスをふりかけ、さらにキラキラしたシンセでシュガーコーティングしたサウンドは「ポップ」「キャッチー」そのもの。これをポップと言わずして何をポップとするのかと言わんばかりに陽性に弾けている。曲のバラエティも富んでいて、アルバム通して飽きることなく聴ける名盤。








Chad Valley / Equitorial Ultravox
★★★★★
12月に行われたフレンドリー・ファイアーズ来日公演のオープニングアクトとして出演し、自分はそこで初めて彼の音楽に触れたワケですが。最近のエレクトロハウス/ダンスロックはテンション高すぎる、でもチルウェイヴはフワフワし過ぎるという僕にとってこの「ユル過ぎず、トガリ過ぎず」なバランス感はちょうどよかった。自然と体が動く心地よいミッドテンポなダンスビートと、キラキラとした浮遊感のあるシンセ、そしてソウルフルなボーカルの組み合わせは、確かにフレンドリー・ファイアーズの前座としてこれ以上の人選はないと思う。ライブ後にこのCDを買ってみたら、当のフレンドリー・ファイアーズよりもこちらの方が好きになってしまったほど。








Princess Chelsea / Lil' Golden Book
★★★★★
舌っ足らずなロリータボーカル、シンセ・ポップ、チェンバー・ポップ、ドリーム・ポップと、自分が好きな要素がこれでもかとふんだんに盛り込まれたサウンド。クラシカルな雰囲気と、どこか陰のあるメロディがヨーロピアン風な気品や美学も感じさせてくれる(ニュージーランド出身ですが)。スローな曲が大半を占めるのがちょっと気になるけど、どの曲も単なるバラードではなくポップな意匠に満ちている点が素晴らしい。子守唄としても機能しそう。








Phoenix / It's Never Been Like That
★★★★☆
彼らのアルバムで音源を持っていない唯一のアルバムだったけど、Twitterのフォロワーさんの勧めでようやく購入。無駄な装飾のないシンプルな音ながら、メロディの良さとアルバム全体の緩急によって、飽きることなく長く聴ける作品となりそう。





Serph / Heartstrings
★★★★☆
今年の上半期に買おうとしていたけどタイミングを逃していたので、年が変わる前にようやく購入。鋭角的で粒子の細かいエレクトリック・ビートとキラキラしたピアノ・フレーズ、ドリーミーなシンセ音がかっこいい。日本人アーティストの中でも抜群のポップ・センスを感じる。今後世界でどのように評価されていくのか楽しみ。





The Weeknd / Thursday
★★★☆☆
正直、最初のミックステープ「House of Baloons」は、スージー・アンド・ザ・バンシーズの「ハッピー・ハウス」をサンプリングした表題曲以外はピンと来なかった。でもこのセカンド・ミックステープでは、その時に足りないと思ったものが十分に備わっていると感じる。スリリングな展開、先鋭的なビート、センチメンタル過剰になり過ぎない程度にドラマティックな歌、それらがバランスよく配されている点を評価したい。
TheWeeknd_Thursday




Razika / Program 91
★★★☆☆
あらためて聴くと別にザ・ドラムスっぽくはないんだけど、「女の子盤ザ・ドラムスmeetsスペシャルズ」なキャッチコピーに惹かれた。とにかくキャッチーでちょいレトロなギターポップ(スカ風味)。ノルウェー語なのか、独特の言葉のリズム感もいいし、ときどき語尾を伸ばしながら音程を震わせる(なんていう技法か知らないけど、控え目なローラ・ロジック(Essential Logic)みたいなやつ)ボーカルとかも素敵です。残念なのは曲のバリエーションが少ないことと、中盤以降似たようなスカ調の曲が続くので単調な印象を受けること。曲単体ではとてもいいだけにもったいなかったかな。





坂本慎太郎 / 幻とのつきあい方
★★★☆☆
彼がゆらゆら帝国という完全無欠の個性を放つバンドを解散させた理由が、これを聴くとよく分かる。ここで鳴っている音楽は決して新しくはない。70年代のフォークロックやウェストコースト・サウンド、AORなどのユルめの音楽をそのまま拝借して、彼特有の独特の歌詞を乗せただけのアルバム。それなのに全くつまらない作品にはならず、例えばMetronomyの「The English Riviera」やGirlsの「Broken Dreams Club」にも近い感触を受ける。さりげなく捻じれたセンスをしのばせたスタンダードなポップソング集。





Emmy The Great & Tim Wheeler / This Is Christmas
★★★☆☆
稀代のメロディメイカーとしての二人のソングライティング力が最大限に発揮されたアルバム。交際中の二人なだけに息もぴったりで、幸せオーラ全開の「ど」が付くほどキャッチーな曲が並ぶ。ただし鈴の音などクリスマス・アレンジ過剰なため、聴きたくなるシチュエーションが限られてしまう点が何とももったいない。





Youth Lagoon / The Year of Hibernation
★★★☆☆
睡眠導入剤としても効果的な音楽。優しいピアノの音色や、遠くからかすかに聞こえてくるような繊細なボーカルはパフューム・ジーニアスも思い出させる。ベッドルームに引きこもって作ったような「箱庭感」が強すぎる気もするが、それだけに次作でどのような成長ぶりを見せてくれるのか楽しみ。





Kate Bush / 50 Words For Snow
★★★☆☆
かつて小悪魔的と言われた要素はここではほぼ感じない。それどころかとても落ち付いていて、天使のように優しい歌声だと思った。7曲で65分という、長尺曲が続く構成なのに全く冗長な感じを与えないところも巧みである。楽器はピアノをメインに、シンプルで最小限の音が鳴らされるのみ。聴いていると、いろいろな風景(それは主に雪景色だったりする)が目に浮かんでくる、非常に抒情的で映像的な作品。





The Weeknd / Echoes of Silence
★★☆☆☆
今年3枚目のミックステープは冒頭のマイケル・ジャクソンの「モノマネ風」カバーから度肝を抜かれる。いつになく力んだ歌い方に、少々やり過ぎ感を覚えるけど、音作り・音選びのセンスも目に見えて向上しているように感じられる。ただ「Thursday」ほどのインパクトはなかったかな。
TheWeeknd_Echoes




Perfume / JPN
★★☆☆☆
「レーザービーム」の東洋的なメロディも好きだったし、今回はかなり期待していただけに、過渡期とも言えそうなこのアルバムは少し残念だった。「GAME」「⊿」の2作品を聴いたときは単純にかっこいいと思ったし、さまざまなタイプの曲調や多彩な音にも魅力を感じたけど、今回は「またこれか」という過去の焼き直し感、言ってみれば既聴感が強かった。典型的なパフューム・マナーに倣ったそのサウンドは、捉え方によっては「過去の集大成」や「スタイルの確立」と言えるかもしれないけど、自分としては既存のPerfume像をぶっ壊すような要素がもっと欲しかった(それは国民的な人気を得た存在だからこそ)。
あとは音の引き算が全くないという印象を受けた。音を引くなんてもったいないと言わんばかりに、全ての音が同時になっている感じがどうしてもあって、こういうグイグイした音って最近の自分の趣向からは完全に逸脱している。1曲の中でも音を足したり引いたり、アルバム全体の流れでもそういう緩急がもっと欲しかった。そんな中でも歌詞が「五・七・五」のリズムで書かれた「575」は、ラップパート含め高く評価したい。





■過去アーカイヴ

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