初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.32(2012年2月)

フジロックの第一弾発表が待ち遠しい今日この頃ですが、毎月末恒例の「今月買った&借りたアルバムの【一番最初に聴いたとき】の感想まとめ」をお届けします。先月は残念ながら、この記事始まって以来初めての星4つでのAlbum of The Monthとなりましたが、2月は星5つの作品が5タイトルと豊作でした。


<★の解説>----------------------
★★★★★ 年間ベスト20位以内確実
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり。もっと聴き込みたい
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした
---------------------------



ではさっそく2月の「Album of The Month」の発表です。大混戦を制したのは…



【Album of The Month - Lana Del Rey / Born To Die (Deluxe Edition)】
★★★★★
lanadelrey_borntodie

世界的に話題となっただけに、賛否両論を巻き起こしているアルバム。中でも「否」の声は主に「オーバープロデュース気味」とか「歌詞がクリシェ(使い古された表現)だ」とか「"Video Games"を超えるインパクトの曲がない」とか。しかし自分はどれも逆の感想を持った。元々「Video Games」よりも「Diet MTN Dew」の持つ、いい意味で陳腐なエセ・ヒップホップ(ファースト期のLily Allenような)に惹かれた自分としては、やや懐かしさも感じさせるヒップホップ・ビート(それは90年代末のグランドロイヤル系バンドを連想させた)やサンプリング・ヴォイスは逆に一周した感じでカッコイイと思ったし、スネアの「パァーン!」というディケイ(減衰時間)の長さはダブステップのそれを思い起こさせるものだった。

複数のペルソナを演じるかのように、艶やかで低いトーンからロリータ・ボイスまで使い分けるボーカリゼーションも高く評価したい。一部の曲しか対訳を見ていないため歌詞がクリシェなのかどうかは正直わからないが、それよりも歌声とトラックに魅力を感じた。オーバープロデュースと言われるのも、おそらくはオープニングトラックの「Born To Die」のイントロで鳴らされる荘厳なストリングスのせいかもしれないが、全体的には作りこんだ感じはそれほどなく、むしろ彼女の持つ魅力である「イビツさ」や「退廃美」をよく表していると思う。

個人的には彼女は「オーバープロデュースであることこそがアイデンティティ」だと思っていたので、昨年末にYoutubeで予告的に公開されていた「Off To The Races」のサンバ・ビートブチ込みバージョン(現在は削除)の方が好きだったし、もっとクレイジーでカオティックな部分があってもよかったとは思う。

一方で、このアルバムを評価するものの、もしかしたら飽きが来るのは早いかもという不安も確かにある。持ち上げたと思ったら手の平を返してこきおろす海外メディアの風潮もあるし、長くこのスタイルを続けるアーティストとも思わない。しかし逆に、今後の方向性が非常に楽しみと言える。来年早々にでも、これまでとは全く異なるアプローチで新作を発表し、世間をあっと言わせてほしい。

Lana Del Rey - "Off To The Races"







Sharon Van Etten / Tramp
★★★★★
1st、2ndは未聴。しかし先行シングル「Serpents」を初めて聴いたときに、少しけだるく艶やかな歌声とジワジワと迫りくるようなサウンドに一気に虜になった。「Serpents」はどことなくBlonde Redheadの「23」に雰囲気やトーンが似ているようにも感じた。メロディアスで優しい雰囲気のアコースティック曲などもあり、各曲のドラマティックさを一層引き立たせる全体の構成も素晴らしい。





Cloud Nothings / Attack On Memory
★★★★★
1曲目「No Future / No Past」の出だしの一音からアルビニ録音とわかる生々しい音。この曲だけ事前に聴いていたのである程度心の準備はできていたけど、いざ聴くとやはり驚かされた。単純に90'sオルタナ回帰な音にノスタルジアを感じたというのもあるけど、随所で光るメロディアスなギタポと「Wasted Days」の後半インプロにおける絶叫とのコントラストも高評価ポイント。





Porcelain Raft / Strange Weekend
★★★★★
サイケデリックな音像が前面に出ているけど、ソングライターとしての面を評価。アコギやピアノ一本で歌ってもしっかり「いい曲」になり得る甘美でメロディアスな楽曲が目白押し。ヒップホップやR&Bからも影響受けてそうなリズムトラックもちょっとひねくれていて好き。次作も期待できそう。





Perfume Genius / Put Your Back N 2 It
★★★★★
マスターテープを消失し、デモ音源で代用したというデビュー作に比べ音質は向上しているものの、生々しく人間性を感じる歌声はそのまま。彼の魅力が最大限に発揮された作品だと思う。1曲目「AWOL Marine」の後半ではシューゲイザー的な瞬間もあったり、音楽的にも広がりをみせている。息を飲むほどの美しいサウンドと歌声に、サイモン&ガーファンクルとの類似性も感じた。





Speech Debelle / Freedom of Speech
★★★★☆
2009年のマーキュリー賞を受賞した女性ラッパーの2nd。単純に「ラップ」や「ヒップホップ」の括りには入れられない「次世代ヒップホップ」を、カニエ・ウェストとは全く別のアプローチでやっていると感じた。ロックやトリップホップの空気感も感じさせるクールなトラックが印象的だけど、それ以上にエネルギーに満ちていたり優しい情感に溢れていたりと多彩な表情を見せる彼女のラップ・スキルは、過去5年に登場した女性MCでも最もクールだと思う。





The Darcys / The Darcys
★★★★☆
名レーベルArts & Craftsと契約しているカナダのバンドということで、レーベルメイトのBroken Social Sceneぽさも感じさせるサウンド。The NationalがRadioheadをカバーしているかのように、抒情性と実験性に溢れている点が非常によかった。各パートのアレンジがそれぞれしっかり練られていて、「Don't Bleed Me」における轟音のウォール・オブ・サウンドから「I Will Be Light」でのダビーなベースなど、様々に意匠を凝らした音作りがどれも有機的に絡み合いドラマティックな展開をみせている。The Darcysオフィシャルサイト上でフリー配信中。
the_darcys




Etta James / At Last:The Best of Etta James
★★★★☆
Adeleの歌声について語られる時、たびたび彼女が引き合いに出されていたのでずっと聴きたいと思っていたが、聴くチャンスを逃しているうちに残念ながら今年1月に逝去。ブルージーだったりスモーキーだったりする歌声は確かにAdeleの祖と位置付けられそうだが(実際AdeleはEtta Jamesの大ファンだそうだ)、それでいてクセがなく、R&Rからファンク、ジャズまで歌いこなす歌の表現力が素晴らしかった。





Freelance Whales / Weathervanes
★★★☆☆
バンジョーなどもフィーチャーしたフォーキーなオーケストラル・ポップという印象だが、Death Cab For Cutieのベン・ギバードに少し似たボーカルのせいか、曲によってはオーガニックになったThe Postal Serviceという印象を受けた。ドリーミーでキラキラしたポップ好きは必聴。





Matt Pryor / May Day
★★★☆☆
The Get Up Kids(以下GUK)のボーカルによるソロアルバム。2011年にリリースされたGUKの復活アルバムは、従来のエモーショナルさやメロディアスな要素が薄れかなり不満(というよりも疑問)が残ったのだが、こちらは従来のGUK的泣きメロのオンパレード。基本的にアコギ主体のフォーク・サウンドであるが、曲によってバンジョーやキーボードなども加わってオーケストラルなニュアンスも添えられている点が、Emmy The Greatのデビューアルバム「First Love」との類似性を感じさせた。ひとつだけ残念なのは、マイク一本で一発録りされたデモっぽいものが数曲あり、音質にバラつきがあることでアルバム全体の統一感が失われてしまっていること。





Lookbook / Wild At Heart
★★★☆☆
FOXチャンネルなどで頻繁にオンエアされているKATE SPADEのCM曲に使用されている「Way Beyond」収録のアルバム(デジタルオンリー)。80's風のレトロなシンセとパンキッシュなビートの上で、往時のロックンロール女子(ジョーン・ジェットやスザンナ・ホフスなど)風なボーカルがエモーショナルに歌い上げている。シンプリシティを追及したが故だと思うけど1曲が短く、アレンジにもうひと工夫が欲しいところ。しかし芯がブレることなくいろいろな曲調にチャレンジしていると思う。
Lookbookの紹介記事






James Blake / Live Album
★★★☆☆
2011年のデビューアルバム「James Blake」が実はそこまで気に入らなかったのだけど、フリーで公開されているこのライブ盤はよい。何より臨場感や一音一音の「鳴り」がよく伝わってくる。アルバムには未収録だった「CMYK」も収録されているし、ライブ盤にありがちな観客の声などもほとんどなく、音質的にも申し分ない作品。ダウンロードはこちらから
james_blake_live




Gotye / Making Mirrors
★★☆☆☆
2008年にフジロックにも出演したソロアーティスト。英米その他でのチャートアクションも好調で、2008年と比べ音楽的にも大躍進している。このアルバムはソウルやエレクトロニカやヒップホップなどを大胆にミックスして「Gotye流」としか言いようのないポップサウンドに消化することに成功。ただ、バラエティ豊かなサウンドに対してメロディ面のインパクトが少し足りなかった印象も。





Neon Indian / Psychic Chasms
★★☆☆☆
2011年のセカンド作「Era Extrana」、そして先日の単独公演(ライブレポートはこちら)がよかったので、未聴だったデビューアルバムをさっそくゲットしてみた。確かにローファイがウリの一つな作品ではあるけど、やはりローファイ「過ぎ」な印象。これはこれで決して悪くはないんだけど、セカンドでみられる甘いメロディや音の粒子がぶつかり合うような音像を期待していると、どうしても物足りなさを感じてしまった。逆に、セカンド作をプロデュースしたデイヴ・フリッドマンはさすがだと思った。
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