初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.34(2012年4月)

毎月恒例の、今月買った&借りたアルバムの「一番最初に聴いたとき」の感想をまとめてお届けします。今月は枚数が過去最多だったかも…。



<★の解説>----------------------
★★★★★年間ベストアルバム20位以内確実
★★★★☆すばらしい
★★★☆☆標準レベルの良作
★★☆☆☆若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆期待ハズレ
☆☆☆☆☆全然ダメでした
---------------------------




ではさっそく4月の「Album of The Month」の発表です!



【Album of The Month - Internet Forever / Internet Forever】
★★★★★
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ロンドン出身のスリーピースバンド(男性2人+女性1人)によるデビューフルアルバム。時折シューゲイザーなムードも感じさせる空間系ギターノイズが、不思議とキラキラした感じを与えているのが魅力的なほか、ドラムマシンやキーボードを多用しつつ元気いっぱいのコーラスが絡む様はJohnny ForeignerやLos Campesinos!、Times New Vikingなどを連想させる。しかしそれらのバンドとの決定的な違いは、おもちゃ箱をひっくり返したような賑やかなサウンドの中にもローファイ感やトラッシー感がなく、むしろ洗練されたグッドメロディーとシンフォニックな音づくりのセンスが端々に感じられる点にあると思う(そういう意味においてはどちらかというとTeam Meに近い)。

もともとローファイ・ガレージ然としたつくりだった初期シングル群からの音の変化はプロデューサーとして起用されたJames Rutledge、Dreamtrakの手腕によるものと言えそうだけど、最もそれが功を奏しているのは「Cover The Walls」だろう。この曲はアルバムで打ち込みビートによるバースト・ダンスチューンとして新たに生まれ変わり、後半におけるハイライトとなっている。他にもアッパーなロックンロール・チューン「I'll Sleep When I'm Alive」からJ&MC(ジーザス~)の「Just Like Honey」的なイントロを持ったロマンティックな「Centre of Your Universe」など個性豊かな楽曲が並び、彼らが決して勢い一辺倒のローファイバンドではないことがわかる。

リリース形態がデジタルとVINYL輸入盤のみであるため、まだ日本のメディアであまり取り上げられていないのだけど、洋楽インディーロックのインタビューサイト「Too Early?」では彼らの日本初(?)となるインタビューが掲載されていて、バンド名の由来や影響を受けたバンドなどについて語られている。ちなみに当ブログでも過去に特集記事をあげているので、ご興味がある方はこちらも併せてどうぞ。

Internet Forever - "Break Bones"




Hannah Cohen / Child Bride
★★★★★
シングル曲「The Crying Game」を聴いただけで、アルバムのクオリティを確信して即予約したほどの魅力的な歌声の持ち主。可憐だけど力強いボーカル、シンプルでアコースティックな演奏、叙情性溢れるメロディー、そしてジャケットでの凛とした表情のポートレイトなど、Sharon Van Ettenとの共通項もいくつかみられる。SVEにハマった人はきっと気に入るはず。




Of Monsters & Men / My Head Is An Animal
★★★★★
フォークをベースにしつつも、ビート重視のアッパーな曲が多くむしろギターロックに近いノリなので、アルバム通して聴いても途中でダレないのがよい。Starsのエイミー嬢やRussian Redを彷彿させるなめらかで透明感のある女性ボーカルを含む男女混声により、瑞々しさが加わると共に多くの人の心を捉えるような大衆性もアップ。全米チャート初登場6位という結果に正直かなり驚いたのだけど、それも妙に納得してしまったほど。ややマイナー調なメロディーも多いけど、それでいて湿っぽい印象を与えないのは、そんな素敵なボーカルの声質や華やかなオーケストラル要素によるものが大きいと思う。




Stars / Set Yourself On Fire
★★★★★
2004年のリリース当時に試聴して気に入ったものの、なぜかずっと買うタイミングを逃していたアルバム。その後の作品でも大きな魅力となっている、力強く透明感に満ちた男女ツインボーカルと美メロはここでももちろん聴ける。曲によってはややソウルフルだったりノイジーだったりしつつも、ひと通り聴いても違和感を与えることなくきれいにまとめられている。ちなみに5つ星の基準は「年間ベストTOP20クラス」ゆえ、基本的に年内リリースの作品しかないのだけど、この作品は初の例外となった。




Hospitality / Hospitality
★★★★☆
ブルックリンのスリーピースバンド。購入前に少し試聴した段階では、Giversのようなダンサブルでトロピカルなネオアコがメインで、アクセントとして爽やかギターポップが数曲あるような印象だったのだけど、実際アルバムを聴いてみるとあくまでギターポップに徹している。チャーミングな女性ボーカルと、そこかしこにエレガントさや知性も感じられるギターの軽やかな音色はIvy(Fountains of WayneのソングライターやTahiti 80のプロデューサーらによるバンド)なんかを連想させた。遊び心が感じられるちょっとひねくれたアレンジもブルックリン出身らしくていい。




Dinosaur Feathers / Whistle Tips
★★★★☆
Vampire WeekendやGivers好きにはたまらない、陽気でダンサブルなサウンドが特徴的。各パートが複雑な動きをしつつ絶妙に絡み合い、見事にダイナミックなアンサンブルを聴かせてくれる。ジャケットアートワークのイメージ通り、キャッチーで明るく、祝祭感に満ちた作品。




Death Cab For Cutie / Plans
★★★★☆
通算5作目、メジャーの1作目となる2005年リリースのアルバム。彼らの最高傑作に本作を挙げる人も多いようだけど、それも頷けるほど美しいメロディーで全編が貫かれている。初のメジャーリリースであることに対する気負いも全く感じられず、あくまで自然体で彼ららしいサウンドを追求しているところが高評価。




Oberhofer / Time Capsules II
★★★★☆
グロッケンシュピール(この楽器を使っているバンドは大概ハズレがない気がする)やピアノ、チープなリズムマシンを用いつつも、ストロークス以降の00年代的なロックンロールを鳴らすアメリカの4人組バンド。多彩な楽器による壮大なオーケストレーションはアーケード・ファイア的だし、全体を覆う、空間的な広がりを見せるリヴァーヴ感はU2っぽさも感じさせる(ちなみにプロデューサーはU2を手掛けたスティーヴ・リリーホワイト)。演奏がまだ稚拙な部分もあり、技術がセンスに追い付いていない感も否めないが、それを乗り越えれば次作で大ブレイクも可能なポテンシャルを十分に秘めていると思う。




Dry The River / Shallow Bed
★★★★☆
エモmeetsインディーフォーク。「エモ」と言いたいのは、つまりワビサビの効いた哀愁のメロディーが、高揚感を伴って演奏されているから。ダイナミックさと神聖さ、その二つの面があるのではなく、同時に鳴らすことのできる類稀なバンドだと思う。




Bruce Springsteen / Wrecking Ball
★★★★☆
フォークやカントリー、ゴスペル、そしてアイリッシュ・トラッドまで、自分色に染めつつ男気溢れる熱いロックを鳴らすボスの新作は、本作のテーマであるアメリカや世界に対する怒りがよく表現されている。それでいてリスナーにその怒りをぶちまけるのではなく、「共に立ち上がろう」と呼びかけるかのような優しさ・頼もしさを感じさせてくれるのは、全編に満ちたキャッチーなメロディーに因るところが大きい。62歳にしてなお老若男女問わず惹きつける彼の魅力の原点はそこにあるのだろう。




Team Me / To the Treetops
★★★☆☆
2012年デビューアルバムが期待されるバンド特集でもピックアップしたノルウェー出身の6人組。Mewがよく引き合いに出されるだけあって、中世的なボーカルや男女混声の美麗なコーラス、管楽器を多数使用した壮大なサウンドが魅力。曲そのものはよく書けているし、プロダクションも申し分ないのだけど、残念なのは無駄に長いと感じる曲が複数あること。長い曲がアクセントになる程度ならよかったのだけど。この点を踏まえた次回作に期待したい。




The Shins / Port of Morrow
★★★☆☆
実はThe Shinsのアルバムを聴くのは今回が初めて。シンプルと見せかけて実はよく練られているアレンジも素晴らしいが、それにも増して親しみやすいメロディーとジェイムズ・マーサーの声も魅力。即効性は低いものの、聴けば聴くほどアジが出るスルメ盤になること確定。




Madonna / Complete Studio Albums
1st "Madonna"

★★★☆☆
2nd "Like A Virgin"
★★★☆☆
3rd "True Blue"
★★★★☆
安すぎると話題になった、オリジナルアルバム全11枚セット。時系列順に聴いていてまだ途中までしか聴けていないのだが、やはり時期的には初期が最高なのでは。誰しも聴いたことのあるシングルヒット曲多数収録なのはもちろんだが、この頃のマドンナは声が生意気そうなのにかわいらしくて好き。そんな中でも大好きな「La Isla Bonita」収録の「True Blue」が最も高評価で、シングル曲以外も全曲聴いた記憶があったのだけど、よくよく考えてみると親が聴いていたのを幼少期に聴いて記憶の片隅に残っていたのだろう。




M. Ward / Wasteland Companion
★★★☆☆
アコギのイメージが強かった彼だが、(従来のイメージよりも)アッパーに疾走するピアノロック「Primitive Girl」に惹かれて購入。この曲を超えるキャッチーさを持った曲が他になかったのが少し寂しかったが、アコギ主体のフォーキーな曲も美しかった。




Atari Teenage Riot / Riot In Japan 2011
★★★☆☆
昨年行われた東京での単独公演の音源。日本ではこれをパッケージしたライブ盤がリリースされたが、何とDim Mak RecordsがSoundcloud上でフリーで公開(こちらからDL可能)。日本のレコード会社から怒られないのだろうか…。それはともかく、スタジオ盤「Is This Hyperreal?」には音圧の足りなさを感じたのが不満だっただけに、ライブ盤では歓声も加わってより一段と重厚感が増し、同時に緊迫感も伝わってくる快作となった。スタジオ盤よりもこちらの方が好き。




Fun. / Aim & Ignite
★★★☆☆
売れに売れているセカンド「Some Nights」に続いて2009年リリースのファーストを後追い購入。本作もセカンドに負けず劣らずキャッチーな楽曲が並んでいるが、こっちの方が比較的ストレートなポップ。個人的にはアレンジ力や構成力の高い(というよりは強引に詰め込んだ感のある)セカンドの方が好みだった。




The Boo Radleys / Wake Up!
★★★☆☆
もう10年以上前から、周囲からよく勧められていたにもかかわらずスルーしていた90年代ブリットポップ名盤。昨年観たクリエイション・レコーズのドキュメンタリー映画「Upside Down」にもコメンタリーやミュージックビデオで取り上げられていて、とても気に入ったので中古で購入。ホーンセクションを効果的に使った爽やかなギタポはFountains of Wayneの「Radio Bar」なども連想させたが、後半に行くほどサイケデリック感というか実験性が増していく様は聴いていてスリリングだった。結果、聴き始めと聴き終わりで全く印象が異なり、なんだか狐につままれたような気分になってしまったものの、全体的にはよかった。




Miike Snow / Happy To You
★★★☆☆
ダンスミュージックという枠に留まらない、ちょっと肩の力の抜けたポップなエレクトロという点ではHot Chipに似た感触。しかしそれでいてピアノのリフが力強く鳴り響くアンセム的な「Pudding Out」をラストに持ってくるあたり、クラブで鳴らされることを意識しているようにも感じられた。少し知性的になりすぎなきらいがあるので、もう少し遊び心を加えてもいいかも。




TV Girl / "TV Girl EP","Benny And The Jetts"
★★★☆☆
もしかしたら方向性がまだ定まっていないのかもしれない。オールディーズやソウルの古いレコードをサンプリングしてノスタルジックなリヴァーヴに包み、ヒップホップ風なブレイクビーツを乗せたトラックはThe AvalanchesやStarslinger的なセンスも感じられて最高なのだけど、「I Don't Care」にみられるようなノリ重視のアップテンポナンバーでは少し無理をしているというか、持ち味が活かしきれていないのが残念だった。しかし先日公開された最新トラック「I Wonder Who She's Kissing Now」はノスタルジー全開のオールディーズ×ヒップホップな好トラックだったので、来たるデビューフルアルバムは大いに期待できそう。ちなみに音源はTV Girlのfacebookからフリーダウンロード可能。
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Kishi Bashi / 151a
★★★☆☆
これまでもRegina SpektorやSondre Lerche、of Montrealらのツアーにチェロで参加するなど輝かしい実績のあるイシバシさんのソロデビュー作。アメリカ生まれの日本人で、その日本人離れした玄人受けするポップ・センスはトッド・ラングレンなんかを連想させた。アニコレとオーウェン・パレットとJonsiの共作のような「It All Began With A Burst」など数曲を聴いて、これはAlbum of The Month級か!と思ったもののアルバム全体としてはそこまででなく、期待がかなり高かった分少し物足りなかった。




Parachutes / Tree Roots
★★★☆☆
シガー・ロスのJonsiの恋人Alexが在籍したバンド(すでに解散)。アンビエントでミニマルなこれ以前のEP(後述)に比べ、シガー・ロス的な壮大なオーケストレーションを伴う美メロ・ロックな作風の3曲入りEP。このまま活動が続いていたら今頃素晴らしい作品を生み出していたかも、と思うと解散がとても悔やまれる。
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Gotye / Like Drawing Blood
★★★☆☆
最新作が売れに売れているオーストラリア出身のGotye。個人的には最新作より、どちらかというと2006年の本作の方が好き。ヒップホップやダブなどをベースにしたサンプリング多用のパッチワーク・サウンドは、べックの「Odelay」や同国出身のThe Avalanchesらしい折衷センスが存分に発揮されている。




Blood Red Shoes / In Time To Voices
★★★☆☆
3作目にして初めてアルバムをちゃんと聴いた。思ったよりもハードでアップテンポな曲は少なく(実際のところ今作はこれまでよりもおとなしいらしい)、ちょっと肩すかし感も。とはいえ「Cold」と「Je Me Perds」の破壊力は抜群で、後者はまるでAtari Teenage Riotのようなディストーション交じりの絶叫ライオットボーカル(特にローラ。完全にATRのハニン・エライアスと化してます)。この2曲だけでも買う価値はあったと言えそうだけど、それによって他の曲の印象がほとんど残らなくなってしまった。




Madonna / MDNA
★★☆☆☆
天下のマドンナ様にこんなことを言うのもアレだが、パフォーマーやエンターティナーとしては一流だけどシンガーとしてはどうなの、というのが正直な感想。なんだかどの曲もとても線の細い小さな声で歌っているように聞こえるのは、客演のニッキー・ミナージュらと比べてしまったからというわけでもなさそう。そのニッキーやM.I.A.の参加曲「Give Me All Your Luvin'」が非常によかったのだけど、アルバム全体的には割と凡なトラックが続くうえに後半はかなりダレる印象があった。あと、いくつかの曲では間奏にダブステップ(いわゆるブローステップ的なもの)を取り入れているけど、音がベタ過ぎるし取り入れ方が中途半端なのでこれは失敗だったと思う。




Cast / All Change
★★☆☆☆
これまでほとんど聴いたことがなかったけど、10年ぶりの新譜リリース、サマソニ出演、元The La'sなどのトピックに惹かれて中古で購入。もっとThe La's直系のギターポップか、もしくは王道ブリットポップを想像していたのだけど、結構予想と違った。ポップなことは確かにポップなんだけど、一発で心を鷲掴みにするような王道のものではないと思う。一度しか聴けていない状態では少し判断に困る作品。




Parachutes / "Susy","Parachutes"
★★☆☆☆
「カランコロン」だったり「シュー」だったりと、全編がさまざまなアンビエント・ノイズに覆われた作品。イマジネーションを掻き立て、心地よい眠りに誘ってくれる音ではあるけど、聴くシチュエーションをかなり選ぶと思うので、先述の「Tree Roots EP」の方が好み。ちなみに、EP3作ともこちらからフリーDL可能です。
parchutes_susy parachutes_parachutes



The All-American Rejects / Kids In The Street
★☆☆☆☆
彼らの過去のアルバムは3作とも好きだったし、先行で公開された「Someday's Gone」のエモさにかなりヤラれてしまったので、このブログでも彼らの特集記事を書いたほどに期待していたのだけど…。正直、彼らの進みたい方向性が全くと言っていいほど見えてこなかった。「Someday's~」以外にもアルバムのタイトル曲や「Beekeeper's Daughter」など、個別に聴けば好きなトラックはいくつかあるのだが、ガレージ風な激エモも壮大なストリングスの絡むバラードもエレクトロな要素を含んだ疾走ナンバーも骨太なスタジアムロックも、今までもやってきたスタイルなのに今回はイマイチどれも中途半端。ここぞというところでギターが爆発しない「Fast And Slow」などはなんとも煮え切らないアレンジだ。その中途半端さが、彼らの中で方向性がブレまくっていてどちらにも一歩踏み出しきれていない印象を強く与えている。今後の行く末が心配になった。

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