初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.42(2012年12月)

12月に入手した音源の初聴き感想まとめです。今年は邦楽はレンタルばかりでしたが、ようやく今年初の邦楽アルバムを購入(キノコホテル新譜)。あと今月は洋楽新譜以外はほとんどレンタルでした。

<★の解説>----------------------
★★★★★年間ベストアルバム20位以内確実
★★★★☆すばらしい
★★★☆☆標準レベルの良作
★★☆☆☆若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆期待ハズレ
☆☆☆☆☆全然ダメでした
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それでは12月の「Album of The Month」の発表です。


【Album of The Month - Chomp / Buddha Jabba Momma】
★★★★★
chomp.jpg

Cloud NothingsのギタリストJoe Boyerと、ドラマーのJayson Gerycz、そしてTotal BabesのChris Brown(歌って踊れるアノ人とは同名別人)によるサイドプロジェクト。Cloud Nothings同様にファストでパンキッシュな曲がメインながら、ノイジーでチープな打ち込みのミディアム曲「Fresh Wounds」をはじめとするキャッチーな曲群からは、Cloud Nothingsの1stと2ndのいずれとも趣の異なる、このバンド固有のポップセンスが垣間見える。

彼らの最大の魅力はなんと言ってもメロディーだろう。初期Weezerもしくは初期The Get Up Kidsのように、メジャーコードとマイナーコードをせわしなく行き来する「泣き」のメロディーは甘酸っぱくも瑞々しく、そしてどこか懐かしい。それは粗削りでラウドなギター、暴力的なベース(マイブラの「You Made Me Realise」のベースを連想させる)、そして手数の多いひしゃげたドラムの、ガレージで一発録りしたかような乾いた音の質感によって、90年代末のエモーショナル・ハードコアのバンドを想起させるからであろうか。60'sガールポップやビーチボーイズの雰囲気さえ感じさせるM2「Done Waiting」(当ブログでは2012年の年間ベストトラック6位に選出)とM6「Throw Out Your Wishlist」、先述のM7「Fresh Wounds」が白眉。

なお、現時点ではCD化はされおらずアナログかデジタルでのみ入手可能なようで、レーベルのオフィシャルbandcampではデジタル・アルバムが$8で購入できる。Cloud Nothingsファンだけでなく、90'sエモ好きにもオススメの1枚。

Chomp - "Buddha Jabba Momma" (Full Album Stream from bandcamp)





Danger Mouse / The Grey Album (Remastered)
★★★★☆
Jay-Zの「The Black Album」とビートルズの通称「White Album」を、今や売れっ子プロデューサーとなったデンジャー・マウスがマッシュアップした2004年作。今まで未聴だったのだけど、最近になってリマスターされた音源がフリーで公開されていたので聴いてみたところ、なるほどこれはかなりカッコいい。ここで長々と説明するよりも、フリーなのでとりあえず以下からダウンロードをどうぞ。




Bat For Lashes / The Haunted Man
★★★★☆
彼女のアルバムを聴くのは本作が初めて。今まで暗くて難解なイメージを抱いていたのだけど、本作に先駆けて公開された「Laura」があまりにも美しかったのが本作購入に至ったキッカケ(当ブログの「2012年の年間ベストトラック」でも9位に選出)。厳かで愁いを感じさせるエモーショナルなボーカルは、伸びやかな高音で歌いあげる「Lilies」も、低音で静かに歌う「Laura」の出だしも実に表現力が高く喜怒哀楽に富んでいる。Lana Del Reyの「Born To Die」と同様、エレクトリックな装飾をトゥーマッチに感じる人もいるかもしれないけど、個人的にはオーセンティック(正統派)な要素と、モダナイズされたアレンジとのバランス感が絶妙だと思う。




トクマルシューゴ / In Focus?
★★★★☆
海外でもリリースされた前作「Port Entropy」に続くアルバム。全15曲ながらコンパクトにまとまっており、1分ほどの小曲にも多彩なアイデアが散りばめられている。従来の通りさまざまな打楽器や非楽器の音に彩られつつも、これまでになかったようなボサノバ風のリズムアプローチの「Poker」、大滝詠一チックな「Sirase」、珍しくアコギ弾き語りの「Tightrope」など、意欲作と言える作品。




キノコホテル / "マリアンヌの誘惑" "マリアンヌの憂鬱" "マリアンヌの休日" "クラダ・シ・キノコ"
★★★★☆
つい先日ライブを観て以来マイブームなキノコホテルの全タイトルを入手(キノコホテルのライブレポートはこちら)。1st「憂鬱」2nd「恍惚」3rd「誘惑」と通して聴くと、このバンドがガレージ/サイケ/エレキ/GS的なサウンドを軸にしながらも、実に様々な音楽スタイルを取り込み、懐古趣味とか色物バンド的なパブリック・イメージからの脱却を試みているのがわかる。さらに、作品を重ねるごとにライブ感がどんどん増してヘヴィになってきているが、その一方でより一層ポップさが明確になっているように感じられる。

最新作「誘惑」は、レコードでいうならA面にあたる前半はアッパーなガレージパンク調が続き、B面にあたる後半はスカ、ボッサ・スキャット、そして四つ打ちキック+パーカッションのディスコティックなインスト曲など実にバラエティ豊か。しかしどの曲もしっかりとキノコホテルらしさがあって、全作品中最も起伏に富んでいる。「休日」はカルト歌謡のカバー集で、原曲は全く知らないけど歌い方や微妙なエコーのかかり方もそれっぽくなっていてかなり好き。「クラダ・シ・キノコ」は旧メンバーのレコーディングによるお蔵入り盤。のちに全曲ともオリジナルアルバムに再録されているが、本作ではガレージやサイケ色がまだ強くなく、わりとGSっぽいソフトな仕上がり。それだけに現在のエッジの立った演奏と比べると少し物足りなくもあるが、「夕焼けがしっている」などはこちらの方がセリフパート含めて夕焼けっぽい哀愁が漂っていて、これはこれでよいと思う。




San Cisco / San Cisco
★★★★☆
当ブログでも「2012年デビューアルバムが期待される新人」として紹介していたオーストラリア出身の彼らの待望のデビューフルアルバム。Ra Ra RiotやGiversからダンサブルな要素を少し引いてロックンロールを加え、キーボードで大胆に装飾した感じと言えるだろうか。紅一点のドラマーがサビでボーカルをとる一曲目「Beach」など、キュートでチアフルなサウンドが全開。「Awkward」や「Golden Revolver」といった既発EPの曲を収録しない潔さからも、本デビューアルバムに対する彼らの自信が窺える。




神聖かまってちゃん / 楽しいね
★★★★☆
前作「8月32日へ」はどうしても好きになれなかった。「友達を殺してまで」収録曲の再録はどれも劣化していたし、全体的にプロダクションも安っぽく、の子の既発デモをそのままバンドでコピーしましたみたいだったこともあり、期限ありきで間に合わせで作った感じがモロに出ていたのだけど、本作では各曲、各パートごとにアレンジが練られている。ただ、「僕はマヌケ」とフリーキーに歌うシークレット・トラックを聴く限り、いわゆるJポップやJロックの定型にはまらない、自由奔放なアイデアを詰め込む余力があるように感じられたので、もっとはっちゃけてもいいのにと思ったりも。

雑誌「ミュージックマガジン」のクロスレビューでは4人の批評家が本作についてそれぞれ「8点・8点・1点・0点」を付けたが、それが象徴しているように彼らはそういう「一部の人には拒否反応すら起こさせるバンド」であり続けてほしいし、それこそが彼らのアイデンティティだと思う。彼らの場合、ポップな側面は抑えようとしても出てくると思うので、次作ではもっと過激でイビツな方向へ振り切れてほしい。




Unicorn Kid / "True Love Fantasy ft. Talk to Animals" "Chrome Lion" "Boys of Paradise" "Come Unity Mixtape" "Full Mixtape Coral Reefer"
★★★★☆
スコットランド出身の21歳Oliver Sabinによるソロユニット。バレアリック・トランス、レイヴ、ドラムンベース、ブロステップなど様々なダンスミュージックをゴッタ煮にして、日本のオタクカルチャーのエッセンスを注入した猥雑なサウンドが特徴。SoundCloudに上げられているいくつかのフリー音源をDLしたのだけど、ミックステープでは全編姫トランスだったりとやりたい放題。一方で「Chrome Lion」や「Boys of Paradise」ではスペインのインディバンドDeloreanを思わせるバレアリックなダンストラックだったりと音楽的なレンジがかなり広く、今後のリリース、特にフルアルバムには俄然期待が高まる。

ダウンロードはこちらから→ https://soundcloud.com/unicornkid




Sonic Youth / Daydream Nation
★★★☆☆
個人的にSonic Youth再評価の波が来たので未聴のものを聴こうと思い、「Goo」に近い音のアルバムをTwitterで募ったところ本作を推す声が多かったのでレンタル。「Goo」よりもフリーキーな演奏で、キムのボーカルもかなりパンキッシュ。




ザ・なつやすみバンド / TNB!
★★★☆☆
Twitter上で評価が高く、気になっていたバンド。こういう気になったバンドに対して、音はもちろんアーティスト写真やメンバー構成、レビューなどいっさいの情報を意図的にシャットアウトして、先入観なしでアルバムを初聴きするのが好きなのだけど、このバンドはそんな聴き方をした。なんとなくceroのようなサウンドの男性ボーカルのバンドを想像していたので、柔らかで脱力系の女性ボーカルにびっくり。さらに驚いたのは、ギターの音が鳴っておらず、代わりにピアノとスティールパンがメインの旋律を奏でている点。冒頭に蝉の音も入っているし、バンド名の通り夏休みの時期に縁側でボケーッとしながら聴きたかった(ちなみに我が家に縁側はありません)。夏のうちに出会っておきたかった作品。




キノコホテル / マリアンヌの恍惚
★★★☆☆
本作収録の長尺サイケ「風景」は先日観たライブにおいても個人的なハイライトだったけど、アルバム内では中盤に置かれたことでレコードのA面とB面を意識した作りになっている。他の曲も総じてクオリティが高く、ポップセンスとロックンロール魂が遺憾なく発揮されている。ただ、他のアルバムに比べるとギターとドラムの音が小さく、音のバランスが悪いのが気になる。




Galileo Galilei / Baby, It's Cold Outside
★★★☆☆
1曲目の「Sex and Summer」がとにかく素晴らしい。初期のスーパーカーにも通じるような、青臭さとロック的衝動に満ちた美メロトラック。他の曲もポップでメロディアスだし、プロダクションもあえてきっちりとクリアに処理されていないからこそ良い(日本のロックバンドの多くは音質をやたらとクリアにしてしまうことが多く、それが苦手である)と思う。今年リリースされたアルバム「PORTAL」からプログラミングセンスも格段に進化している。これがフルアルバムであってほしかったという要望も込めて★ひとつマイナス。




This Many Boyfriends / This Many Boyfriends
★★★☆☆
ギターポップとロックンロールの中間を行く感じ。ファースト期のLos Campesinos!を感じさせる瞬間もあったりと、とにかく楽しく突っ走るポップアルバム。ただ最近の自分の趣向としては、もう少しノイジーで尖った音の方がハマったと思う。




Mazzy Star / She Hangs Brightly
★★★☆☆
女性ボーカルの中では最も好きな声の持ち主、ホープ嬢を要する90年代のサイケ・フォークバンドのファースト。好きとか言いつつ、実は3rd(「Among My Swan」)しか所持していなかった。数曲を除いて割とコンパクトで、カントリー/フォーク色が強い代わりにサイケ度は弱く、すんなり聴きやすい。




The Garlands / The Garlands
★★★☆☆
ネオアコ・ギターポップバンドのデビューアルバム。詳しい紹介記事はこちら。確かに全曲キャッチーでいい曲なのだけど、後半は7曲目「Tell ME」から10曲目「Why Did I Trust You」まで似たようなアッパーなビートの曲を並べた意図が不明で、曲順にはかなり不満あり。




Phillip Phillips / The World From The Side of The Moon
★★★☆☆
アメリカのオーディション番組「アメリカンアイドル」シーズン11のウィナーで番組初のインディー系シンガーの優勝者といわれ、カントリーやフォーク、ブルースをベースにした音楽性はArcade FireやMumford & SonsなどからBruce SpringsteenやDave Mattewsまで引き合いに出されている。そんな彼のデビューアルバムは力強いブルースロックからメロディアスなオーケストラル・フォークと、番組中に見せた彼の魅力を余すところなく発揮できていると思う。最終審査で披露され彼を優勝に導いた名曲「Home」(2012年の年間ベストトラックでは8位)が最も優れているのは当然ながら、他にも今後のシングル候補となりそうな「イイ曲」が複数あるのも嬉しい。




Mazzy Star / So Tonight That I Might See
★★☆☆☆
「Fade Into You」はもちろん名曲なのだけど、全体的には少し冗長な感じの曲が多くて「She Hangs Brightly」や「Among My Swan」には劣る印象。
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