ライブレポート

ライブレポート:Beach House@恵比寿LIQUIDROOM

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1月20日に恵比寿LIQUIDROOMで行われたBeach Houseのライブに行ってきました。ライブレポートをどうぞ。




東京公演の前売り券はソールドアウトしただけあって、恵比寿LIQUIDROOMにはかなり多くのオーディエンスが詰めかけた。自分は前から5列目くらい、最前列からは2mと離れていない、中央寄りでステージ全体がよく見渡せる位置を確保。まずはオープニングアクトのDustin Wongがさらりと登場し、客電が落ちるより早くギターを弾き始める。


恥ずかしながら、ダスティンのソロ作はおろかPonytailも聴いたことがなかったのだけど、既にActive Childのオープニングや朝霧JAMなどにおける彼のライブパフォーマンスを絶賛する声はよく聞いていたので非常に楽しみにしていた。そして、彼のライブはその期待を遙かに超える素晴らしいものだった。一本のギターをつま弾きながら、フットペダルで音をレイヤードさせていくスタイルは、ライブで観る分には楽しいけど、音源が欲しくなることは個人的にはあまりない。ループを基本としているためにコード展開が単調になりがちで、そういうのがあまり好みではないせいだけど。


しかし彼の曲は実にメロディアスでキャッチー。高速でつま弾かれるフレーズは床に並べられたいくつものエフェクターにより、まるで打楽器やマリンバなどを思わせる粒子の細かい音となり、トライバル感やキラキラ感を添えていく。そこにデヴィッド・ボウイの「Heroes」のギターフレーズを連想させるギターを乗せたりと目まぐるしく曲が展開するので、この手の演奏にありがちな冗長さやミニマルな感じがなく、その牧歌的な曲調はトイトロニカやフォークトロニカという言葉が浮かんだ。


ハワイ生まれではあるが2歳から日本で暮らしていたそうで、MCはすべて日本語。「7年前にもボルティモアのレストランでBeach Houseと一緒にライブをやりました。その時お客さんは300人くらいで、彼らは素晴らしいライブを見せてくれました。今日もきっと素晴らしいライブになると思います」と、思い出とともにBeach Houseへの感謝とリスペクトをあらわし、ラストに演奏された曲はこの日唯一のボーカル曲。詳しくないので曲名はわからないのだけど、魂を絞り出すかのようにエモーショナルで「言語文明以前の歌」とも言うべきプリミティブなシャウトが印象的だった。演奏終了後、自らの赤いコンバースのスニーカーを手に持って(ステージでは靴を脱いでいた)お辞儀をしながら去っていく姿に、実直で繊細そうな彼の人柄が滲み出ていた。ぜひともアルバムを聴いてみたいと思う。


ここで20分ほどのセットチェンジ。ステージ向かって左手にアレックスのギター、サンプラー、足で弾く用のシンセベースが置かれ、中央にヴィクトリアのキーボード(よくは見えなかったが音色的におそらく三段か)、右手にドラムとキーボード。後方には斜めに掛けられた11本の棒にそれぞれフリンジ状のものが床まで垂れており、背後から照らされるライトによってそれが幻想的に浮かび上がるとともにフリンジの隙間から光が洩れる。この舞台装飾は、非常に美しく繊細でありながらもローファイなハンドメイド感があり、彼らの音楽とも通じるものがある(もっとも、作品を重ねるごとにローファイな音の印象は薄れているけど、基本精神はデビュー時から変わっていないと思う)。


場内が暗転し、青白く浮かび上がったフリンジの前に、ヴィクトリア、アレックス、そしてツアードラマーのダニエルが登場。逆光なので初めはシルエットでしか見えなかったが、ヴィクトリアはいつもの無造作なヘアーに、胸のところにシルバーの大きな装飾が付いた黒のトップスと黒のスキニーパンツと黒のシューズ。そしてシルバーの光輝くラメジャケットを羽織り、指にはいくつものカラフルで大きめな指輪をはめていて、濃い目のアイラインと真っ赤な口紅というメイクのせいもありかなり派手な印象。アレックスは第一ボタンまでぴっちり留めた白いシャツの上に黒っぽいワークジャケット姿。


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この日のライブのものではなくネット上にあった写真だけど、セットや服装は今回のライブとほぼ同じ。


ヴィクトリアがシンセで、オーケストラの音合わせのように長い音を弾くと、そこにチープなリズムマシンが加わり、最新作「Bloom」収録の「Wild」からライブがスタート。途中から加わる生ドラムは、自分が前の方で観ていたせいもあると思うけど、ギターやシンセのドリーミーな音と比べると少し雑な音に聞こえてしまいチグハグな印象も与えたものの、緩急を付けたダイナミックなプレイでカバー。


"Wild" (live at Sydney Enmore Theater Jan.3,2013)



2曲目には2010年リリースの3作目「Teen Dream」から個人的に大好きな曲、「Walk In The Park」。やはり「Teen Dream」「Bloom」からの選曲がメインである。そんな中で5曲目に披露されたのは2作目「Devotion」の中では最も聴きたかった曲「Gila」。少し怪しげでムーディーなスロウテンポのこの曲には、フリンジに投影されたおぼろげな映像が絶妙にマッチ。さらにその後続いたのは彼らの楽曲の中でも5本の指に入るくらい好きな「Norway」。この曲のサビにおけるヴィクトリアの伸びやかなハスキーボイスは、ひたすら美しく場内に響き渡った。


「次はとても古い曲。私たちのファーストアルバムから」と前置きして始まったのは2006年リリースのセルフタイトルのデビューアルバムから「Master of None」。この日この曲をプレイした経緯はよくわからないけど、ソールドアウトしたことに対する彼らなりのファンサービスなのだろうか。


星が瞬いているかのようなシンセを持つリフ「Silver Soul」ではフリンジの奥にランダムに浮かんだ小さなライトがいくつも輝き、フリンジに映った光がフワフワと浮遊して、まるでプラネタリウムで満天の星空を眺めているような光景が広がる。時にはそこに映像を映し、時には背後からの照明を透過させ、時にはうっすらと光を浴びて輝くこのフリンジ状のスクリーンは、楽曲が持つドリーミーなイメージを最大限に引き出すものとして非常にうまく機能していた。以前から自らを「ビジュアル重視のバンド」と語っていた通り、海外での彼らのライブではこれまでもステージ上にピラミッド形のオブジェや格子の付いた風車などが置かれることがあったが、つまりは音と光と造形物を相互補完させることによって、ライブをひとつの「アート空間」として完成させたいということなのではないだろうか。


"The Hours" (live at Forum Theatre, Melbourne Jan.9,2013)



ところで、今回どうしても観ておきたかったのはアレックスの足ベース。最近になって知ったのだけど、彼らのライブにおけるベース音は、サンプラーで流しているのでもなくヴィクトリアが弾いているのでもなく、アレックスがギターを弾きながら足元に置かれたベースシンセも演奏しているのである。これを今回見ることができてよかった。あと、彼の作り出すギターの音色は本当に素晴らしいと思う。


さて、終盤における「New Year」からの名曲三連打は個人的にかなりうれしい流れ。「New Year」は彼らの楽曲の中でもアップテンポで、後半のトレモロアームっぽい音程のゆらぎがマイブラの「To Here Knows When」にも似た陶酔感をもたらす、「Bloom」の中でも2番目に好きな曲。続いての「Zebra」では2011年のフジロックでやったように、間奏の部分でヴィクトリアが「馬が駆けるような」ジェスチャーを見せ、牧歌的なメロディーがドリーミーなお伽の世界へといざなう。そして最新作で最も好きな曲「Wishes」(2012年の年間ベストトラックでも4位に選んだ)は、赤を基調とした照明とフラッシュが明滅するドラマティックな光景に、曲の美しさも相俟って涙が出そうになった。


本編ラストは「シャッシャッ、カン、シャッシャッ、カン」のダサい(失礼)ビートとともに「Myth」。この日、イントロで最も大きな歓声が起きたのはこの曲だった。「Bloom」のオープニングを飾るこの曲は、彼らが一部のインディーファンのみに受け入れられる箱庭的ドリームポップから、より多くの人を魅了する普遍的なポップへ変貌を遂げたことを真っ先に伝えた曲なので、きっとオーディエンスにとっても彼ら自身にとっても、特別な思い入れのある曲なのではないだろうか。ドキドキしながら初めてこの曲を聴いた時の気持ちを、鮮やかに蘇らせてくれた。


"Myth" (live at Forum Theatre, Melbourne Jan.9,2013)



「Myth」が終わり3人がステージから去ると、鳴り止まない拍手と歓声。ほどなくして再び3人がステージに登場し、ヴィクトリアが「東京のためにスペシャルな曲をやるわ」と紹介して「Tokyo Witch」をプレイ。ファースト収録のこの曲は最近のライブではセットリストに入っていないそうで、2日前に行われた大阪公演でも演奏されていない。当日のセットリストの紙には「Tokyo Witch」の記載はなく、そこに「Real Love」と書かれていたので、東京のみの特別サプライズとして急遽やってくれたのだろう。


続いては「10 Mile Stereo」。2011年のフジロックでもラストに演奏された、ライブならではのダイナミズムが最も発揮される楽曲で、まさにラストに相応しい曲。予想通りラストにこれを持ってきましたか、と思いつつ目もくらむような光と音の洪水に半ば放心状態だったのだけど、驚いたことにラストはこの曲ではなく次に演奏された「Irene」だった。延々と繰り出されるミニマルなギターが印象的なやや長尺のこの曲は、今回特別にDustin Wongを迎えて演奏。途中までは控えめにしゃがんでいたダスティンだが、間奏の部分でキラキラしたギターフレーズを加え、この曲をさらに美しい楽曲へと見事に変えていた。ギターのリフレインとスネアだけになる後半のパートでは、深いリヴァーブのかかったスネアが心地よく響き渡り、波のような静かなうねりを生みつつも穏やかに終了。それまで息を呑むように見入っていたオーディエンスがいっせいに拍手と歓声を送る中、ヴィクトリア、アレックス、ダニエル、そしてダスティンの4人はステージを去っていった。


美しく神秘的。そんな楽曲の雰囲気とは対照的に、ヴィクトリアのステージパフォーマンスはとても激しかったのが印象的。足を踏み鳴らしながら頭を上下左右に振りまくり、長い髪の毛を振り乱す。「Bloom」の楽曲に相応しい、そして音源だけではけっして感じることのできない、熱量と力強さを感じさせるライブだった。次はぜひ、トワイライトから星空に変わっていく時間帯にフジロックのホワイトステージで観てみたい。


■2013/1/20 恵比寿LIQUIDROOM set list
Wild
Walk In The Park
Other People
Lazuli
Gila
Norway
Master of None
Silver Soul
The Hours
On The Sea
New Year
Zebra
Wishes
Take Care
Myth

-encore-
Tokyo Witch
10 Mile Stereo
Irene



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