初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.46(2013年4月)

2013年4月に初聴きした音源の感想まとめ。前回から、今年以前のリリース作品にも5つ星が付きやすいように基準が変わりました。

<★の解説>----------------------
★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリース作ではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
----------------------------

さて、それでは4月の「Album of The Month」です。


■■■■■Album of The Month■■■■■
Gliss / Langsom Dans (2013)
★★★★★
Gliss-Langsom_Dans.jpg

LAを拠点とする、アメリカ人とデンマーク人の男女トリオによる3作目。よく比較されるアーティストとして挙げられるのがビーチ・ハウス、クリスタル・キャッスルズ、ロウアー・デンズということで、幽玄なサウンドとノスタルジックなメロディーは確かにロウアー・デンズとの類似性を感じさせるし、少しハスキーでアンニュイな女性ボーカルはビーチ・ハウスのヴィクトリア・ルグランを彷彿させる(ちなみにボーカリストの名前はヴィクトリア・セシリア)。ただ、Glissの音楽からはドリーミーというよりはヒンヤリとした緊張感や退廃的なムードが強く感じられ、そのサウンドから醸し出されるゴシックな世界観はザ・レヴォネッツ、カルツ、ドーター、エスベン・アンド・ザ・ウィッチ(全部大好きなバンド!)辺りの方が近い気も。

本作の中には歌謡曲ばりにアンニュイなハーモニーを聴かせる「Through The Mist」から、60'sガールポップのような「The Sea Tonight」まで、曲調は多彩でありながらいずれも非常にキャッチー。彼らが決して退廃的なイメージ先行型ではなく、ソングライティングにしっかりと力点を置いているバンドであることが窺える。

Gliss - "Blur"


Gliss - "Weight of Love"




The Strokes / Comedown Machine (2013)
★★★★★


まずオープニングを飾る「Tap Out」が素晴らしい。細かいビートで刻まれる一見複雑そうなギターやドラムが絶妙にレイヤードされて心地よいグルーヴ感が生まれ、彼らが3作目以降目指している「複雑なアンサンブルを一度解体してスマートに再構築する」という実験の成果がしっかりとあらわれている。「One Way Trigger」や「Chances」といった、80'sニューウェーヴのストロークス流解釈とでも呼べそうな曲群がとりわけ素晴らしいが、全体を通じてソングライティングのクオリティも過去2作と比べて格段に高い。ギター、ベース、ドラム、そしてボーカルのどれをとってもそれぞれの個性が色濃く出ており、まさに「この5人でしか鳴らせない音」を鳴らしていると思う。

The Strokes - "Chances"




Cocteau Twins / Blue Bell Knoll (1988)
★★★★★


1曲目、表題曲のハープシコードとリズムマシンによるイントロが鳴った瞬間から傑作を確信できるような作品。1曲目以降もエリザベス・フレイザーのボーカルや憂いを帯びたメロディーなど、どれをとっても素晴らしい。ベスト盤で聴いていて以前から好きだった「Carolyn's Finger」(すごい巻き舌唱法!)が入っているということもポイントが高い。

Cocteau Twins - "Carolyn's Fingers"




The Horrors / Strange House (2007)
★★★★☆


リリース当時にサマソニでライブを観たときには好きになれず、その後も大きな進化を遂げたセカンド「Primary Colours」が好きすぎたためにずっと避けてきたデビューアルバム。個人的にゴスブーム(ジャンルというよりは雰囲気的なゴスではあるけど)が到来中なので今ならいけるかもと軽い気持ちで聴いてみたのだけど、これは期待した以上によかった。

バンド名、ルックス、猟奇的なイメージを喚起させる歌詞、ファリスによるB級ホラー感溢れる手書きイラストなど、この頃から非常にコンセプチュアルな世界観と個性を確立している。演奏は今とは比べ物にならないほど粗削りなガレージパンクだけど、鬼気迫るファリスのボーカル、フリーキーにノイズを放つジョシュアのギターなど、むしろその粗さがいいアジになっている。実験性の高いインスト「Gil Sleeping」と、フリーキーさが最も強い「A Train Roars」が特によかった。ドラムの音がもう少しトガっていたら文句なしだった。



Pulp / This Is Hardcore (1998)
★★★★☆


前作「Different Class」が持っていた享楽性とはおよそ反対にある、内省的でせつない曲が多いアルバム。どうやら一気に注目を集め過剰な期待を寄せられたがために、それから逃れようと酒とドラッグに溺れたらしく、そんな当時のバンドの心境が色濃く反映されている。よって一見地味なように感じられるが、「パルプ版Creep」とも呼べそうな「Help The Aged」をはじめとして「A Little Soul」「Glory Days」などソングライティングセンスが爆発しており、非常に完成度の高い、美しくエモーショナルな楽曲が詰まっている。



Cocteau Twins / Heaven or Las Vegas (1990)
★★★★☆


「Treasure」「Blue Bell Knoll」そして本作と、3枚同時に買った中では一番好きだろうと聴く前に予測していたけど、結果としては3番手。しかし最もポップで美しいのは本作だと思う。エリザベス・フレイザーの声が他2作と比べてかなりハイトーンで、神々しささえ感じられるほどに美しい。曲調も初期のゴスやポストパンクっぽい部分が完全に取れ、穏やかなヒーリング・ミュージックとなっている。



The Knife / Shaking The Habitual (2013)
★★★★☆


コンクリートで固められた四辺1メートルくらいの真っ暗な独房の中で聴きたいアルバム。精神を暗闇の果てに追いやるかのような「Fracking Fluid Injection」はもはや前衛ノイズと呼べそう。先行で公開された「Full of Fire」がやはり本作のベスト・トラックだけど、アッパーなダーク・エレクトロ「Networking」、デトロイト辺りのアンダーグラウンド・ハウスな香り漂う「Stay Out Here」もカッコいい。



The Postal Service / Give Up
[10th Anniversary Edition] (2013)

★★★★☆


2000年代を代表するロック/エレクトロ・ポップ名盤の10周年記念盤。蔵出し音源のクオリティがかなり高いのと、リミックス曲が思った以上にいい出来だった。特にコードを変えてアンニュイな雰囲気になった「Such Great Heights (John Tejada Remix)」がよかった。



Mumford & Sons / Babel (2012)
★★★☆☆


広大な自然の中でオーディエンスが足を踏み鳴らしながら大合唱する光景が目に浮かぶような、スケールの大きなフォーク/カントリーサウンドはとても心地よい。ただ、アレンジのバリエーションが少ないためかアッパーな展開になるとどれも似た曲調になってしまうのが難点。バンジョーの音は好きなのだけど、弾き方がどうにもワンパターンなので、今後この辺のアレンジセンスの開花に期待したい。ボーカルの声質に関してはあまり好みではなく、彼らのような曲調であればもっとジェイン・マガウアン(ザ・ポーグス)みたいなダミ声の方が相性がよさそうと思ったけど、ボーナストラックとして収録された「For Those Below」や「Where Are You Now?」などのスローな曲では繊細な歌声も披露しており、こちらの歌い方はかなりよかった。



Dexys Midnight Runners / Too-Rye-Ay (1982)
★★★☆☆


全米一位を記録した名曲「Come On Eileen」が収録されたアルバム。ジプシーやケルトといった音楽を咀嚼しながら享楽的なムードで包みこんだサウンドは野外でお酒を飲みながら聴くのにピッタリ。一発屋というイメージが強いながらも、「Come On Eileen」以外の曲もクオリティが高いと思う。



Neutral Milk Hotel / In The Aeroplane Over The Sea (1998)
★★★☆☆


たまたま先日ようやく本作をレンタルしてみたら、なんと再結成して12月に来日(Hostess Club Weekender?)することが報じられたので正直驚いた(活動休止していたのは知らなかったけど)。フォークやカントリーを基調にしながらも随所にパンク魂がヒシヒシと感じられる辺り、個人的にはザ・ウォークメン(The Walkmen)に近いと思った。もちろん時期的にはNMHの方が古いので、ザ・ウォークメンが実際にNMHから影響を受けたのか気になるところ。余談ではあるけどアートワークが秀逸。



The Cure / Boys Don't Cry (1980)
★★★☆☆


初期の編集盤。音の質感はまちまちなのであまり一つのアルバム作品として好きではないけど、大好きな「Boys Don't Cry」が入っているほか、各曲ともに退廃的なムードとキャッチーなメロディーの絶妙なバランスがよい。



Nick Cave & The Bad Seeds / Dig, Lazarus, Dig!!!
(2007)

★★☆☆☆


ニック・ケイヴというと、かつてフジロックで楽屋破壊事件とかあってあまりいい印象を持っていなかったけど、本作と最新作(「Push The Sky Away」)が共にメディアから高い評価を受けたということは知っていたし、先日のコーチェラフェスのライブでも子供合唱団を率いたエネルギッシュなライブパフォーマンスがとても印象に残っていたので、結構気になっていたアーティストのひとり。勉強不足で彼のことはまだまだ詳しくはないけど、とにかくこのアルバムはブルーズやフォークに根差した渋味とオヤジならではのスゴ味が備わりつつ、表面的なサウンドだけを捉えれば非常にパンキッシュで、そこらの若手バンド以上にロックンロールしている。デヴィッド・ボウイの最新作「The Next Day」にも通じるものがあるのでは。



The Cure / Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me (1987)
★★☆☆☆


長い。そして曲数が多い。そのため、聴いているうちにだんだんと飽きてきてしまった。サウンド的にもスプラッシーなシンバルの音がいかにも古臭くて好きではなかった。曲単位でみれば、「Just Like Heaven」も収録されているしそこまで悪くはないので、もっとすっきりとまとまっていればよかったと思う。
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