初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.47(2013年5月)

2013年5月に初聴きした音源の感想まとめです。

<★の解説>----------------------
★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリース作ではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
----------------------------

さて、それでは5月の「Album of The Month」です。


■■■■■Album of The Month■■■■■
Vampire Weekend / Modern Vampires of The City
(2013)

★★★★★
Vampire-Weekend-Modern-Vampires-Of-The-City.jpg

彼らの作品はいつも素晴らしい(特に前作「Contra」は2010年の個人的年間ベストの2位だった)けど、現時点で「Contra」と甲乙付けがたい作品だと思う。これまでの彼らを特徴づけていた四大要素は「アフロビート、エレクトロ・ポップ、パンク、チェンバー・ポップ」だと思っているのだが、今回その前者2つは影を潜め、パンクはロックンロールに成り代わった。そしてチェンバー・ポップ要素はさらに補完され、チェンバロやグロッケンシュピール、ヴァイオリンなどのクラシカルな楽器がこれまで以上に使用され、効果的に作品全体を彩っている。しかしそれでいてイヤらしさやトゥーマッチな印象を与えず、ひとつひとつに「その音が鳴っている理由」がしっかりと存在しているのが見事だ。そしてそんなアレンジメントに呼応するようにメロディーもより洗練され、繊細で美しい楽曲が並んでいる。今後聴き込むにつれて、本作が「Contra」を超えていく可能性はかなり高いはず。

Vampire Weekend - "Unbelievers"




Youth Lagoon / Wondrous Bughouse (2013)
★★★★★


前作「The Year of Hibernation」はこじんまりとしたベッドルーム感が漂う作品で、良作ではあったと思う。しかし「ベッドルーム幻想」とでも言うのか、(彼がインタビューで明らかにしているように)実際には宅録ではなくて、エンジニアをしている友人のスタジオで録音されたということを知ったとき、妙なガッカリ感を覚えてしまったのも確かだった。所詮は流行りのスタイルを意図的に模倣しただけか、と。

そんな前作に続く今回のアルバムは、リリース前に数十秒プレビューをしただけで傑作であることが確信できたほどに、内面から飛躍的な進化を遂げている。既に数多のレビューで書かれていることだけど、本作のジャケットが示す通りあらゆる音が極彩色に彩られ、ベッドルームから外に飛び出したかのようにひたすらにユーフォリックでドリーミーなムードが漂っている。しかしながらその「外の世界」は、ギラギラと乱反射する強い光やゆらめく陽炎を想起させるような混沌とした躁状態が感じられ、前作以上に病んでいるようにも思われる。それと同時に、「You'll never die」と繰り返される「Dropla」では生への執着をも感じとることができ、そんな「生と死」「幻と現実」「インナー・スペースと外の世界」のコントラストが強く反映された本作は「(現時点までの)2010年代最高のサイケデリック・レコード」と呼んでも過言ではないだろう。

Youth Lagoon - "Dropla"




Nancy Sinatra / Greatest Hits (1990)
★★★★★


映画「(500)日のサマー」の劇中でズーイー・デシャネルが歌う「Sugar Town」、プライマル・スクリームやスロウダイヴがカバーした「Some Velvet Morning」、これらの楽曲のオリジナルを歌っているのがフランク・シナトラの娘であるナンシー・シナトラ(と共作者のリー・ヘイゼルウッド)。曲によってブルージーだったり、小悪魔風に甘くささやいたりといろいろな歌声を使い分けるナンシーのボーカルの表現力はもちろん、激渋低音ボイスのヘイゼルウッドや父・フランクの提供した楽曲そのものも素晴らしい。最近この辺りの音楽をベースにしているインディー・ロック・バンドが多いせいか、ほとんどが1960年代の楽曲ながら全く古臭さを感じさせず、逆に新鮮だった。

Nancy Sinatra & Lee Hazlewood - "Summerwine"




Annie The Clumsy / Annie The Clumsy Volume 1
(2013)

★★★★★
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日本の女性SSW。彼女は日本には他にいないタイプの才能の持ち主だと思う。ただの洋楽かぶれでは到底マネのできない、そして決して「ウクレレ/宅録/女の子」というタームから一般的にイメージされがちな、ガーリィさを強調したシンガーとは一線を画した個性を持っている(が、確かにガーリィな一面もあり、ファッション・アイコンとしても秀でていると思う)。

彼女の歌声は、艶やかな低音も聞かせるが同時に可憐でもあり、それはニコやカーリー・サイモン、ジョニ・ミッチェルなど往年の女性SSWを彷彿させるし、「You Make My Uterus Ache」における"Tik Tok"といった擬音表現や、エディット・ピアフ風の細かいビブラート、けだるく舌足らずな歌い回しなどの表現力が非常に才能豊か。最近のアーティストで言えばケイト・ナッシュ、ズーイー・シャネル(She & Him)、エミー・ザ・グレイト、Soko、レジーナ・スぺクターなどが好きな人には絶対おすすめ。tofubeatsがアレンジを加えた曲「Oh Yes He Is」がボーナストラックとして収録されたデジタル版は彼女のbandcampにて500円で購入可能。




J Dilla / Donuts (2006)
★★★★★


彼については、Slum Villageの元メンバーで、僕の好きな系統のヒップホップ作品のプロデュースを数多く手掛けていて、2006年に亡くなっている…という情報くらいしか持ち合わせていなかった。しかし、ここ数年インディー・ロック・バンドのインタビューにおいてもたびたび引き合いに出されたり、彼からの影響を公言していたりしたので聴いてみたのだけど、これは今年一番驚きを与えた作品になるかもしれない。いわゆるステレオタイプなヒップホップ作品ではないけど、むしろここ数年で最もヒップホップのマインドを体現した作品と言えるのでは。サンプリングの妙とかっこいいビートで繋いだ、全31曲43分のミックステープのような作品。個人的にはジ・アヴァランチーズの名盤「Since I Left You」とフライング・ロータスの「Until The Quiet Comes」のハイブリッド的な作品だと感じた(フライング・ロータスは彼からの影響を公言している)。1曲目が「Outro」、ラストが「Intro」となっていて初めは混乱したけど、聴いて納得。ずっとループさせて聴きたい作品。

J Dilla - "Lightworks"




Phoenix / Bankrupt! (2013)
★★★★☆


前作「Wolfgang Amadeus Phoenix」を踏襲してメロディーに主眼を置きつつ、シンセによる装飾を施したキラッキラのポップナンバーが並んでいる。曲そのものは全体的にシンプルながら、前作の「Love Like A Sunset」のような高揚感をもたらすエレクトロ・サイケ・ナンバー「Bankrupt!」を中盤に配置することで、メリハリのある曲順になっている。初めて聴いた時は前作ほどではないかなと思ったものの、その後聴きこむにつれてじわじわと評価が上がり、今では5つ星レベル。



Major Lazer / Free the Universe (2013)
★★★★☆


先行公開されていた、ダーティ・プロジェクターズのAmberをフィーチャーした「Get Free」目当てで購入。しかしそれ以外の曲も客演陣は豪華だし、ブチアゲ系パーティー・チューンからチルでダビーな曲までバラエティ豊かでとてもよかった。中でもFlux Pavilionをフィーチャーしたレイヴ×ダブ×ブロステップな「Jah No Partial」がお気に入り。



Yeah Yeah Yeahs / Mosquito (2013)
★★★☆☆


以前からビート感覚と音作りのセンスには長けていた彼女たちだけど、本作のプロデューサー、デイヴ・シーテックの手腕も手伝ってか、リズムに対するこだわりと独特な音やフレーズの随所にセンスが感じられる。若干装飾過多な印象もあるものの、パーカッションやダビーなエフェクト、ゴスペル風コーラスなどからは、これまでと同じような作品は作らないという彼女たちの気概が感じられた。初めて聴いた時、初めのうちはメロディーのキャッチーさに欠けると感じたけど、ラスト3曲で大逆転。ただ、この3曲はもっとバランスよくばらけさせて配置するべきだったように思う。



The Wedding Present / Yé Yé : The Best of The RCA Years (2007)
★★★☆☆


1985年にイギリスで結成されたバンドのベスト盤。疾走感のあるギターポップに、激甘キャッチーなメロディーの組み合わせがツボ。そこに乗る太くて低音のボーカルは、初めこそ少し違和感があったものの(こういうサウンドだとウィスパー系のボーカルの方が聴き慣れている)、聴き進むにつれて不思議と馴染んでくる。とにかくメロが良い。



Poliça / Give You The Ghost (2012)
★★★☆☆


本作リリース時に試聴した時は全然ピンとこなかったけど、先日のコーチェラの配信を見て以来気に入って購入。90年代のトリップホップを思わせるスモーキーでノワールな世界観とダブサウンド、そして女性ボーカルとの相性はとても良く、そこにダイナミックな生ドラムが加わることで唯一無二のサウンドを生み出している。ただ、オートチューンみたいなボーカル・エフェクトはちょっとやり過ぎ。



Speech Debelle / Speech Therapy (2009)
★★★☆☆


2012年リリースのセカンド「Freedom of Speech」は、ロック系ばかりの個人的年間ベストアルバムの中で32位と健闘。このデビュー作はセカンドと比べ、よりオーガニックで温もりを感じさせるアコースティックなサウンドが印象的で、哀愁を帯びたメロディーと痛々しいまでのメッセージ色の強い歌詞が突き刺さる。2009年のマーキュリー・プライズ受賞作品。



Pixies / Surfer Rosa & Come On Pilgrim (1988)
★★★☆☆


あらためて、ピクシーズは変態だなあと思った。それも笑ってしまうほどに。コード進行や曲の展開が、こちらの予想から遥かに外れていきつつもキャッチーさを失わずにまとまっているのが、他のどのバンドにも真似できない彼らの特徴だろう。本盤は彼らのファーストアルバムに、ファースト以前にリリースされたEPを追加収録したもの。



Hey Anna / Pompette EP (2013)
★★★☆☆


ブルックリン出身、女性ボーカルのインディー・ポップ。ヴァンパイア・ウィークエンドmeetsアロー・ダーリン(Allo Darlin')とも形容できそうなキラキラした陽性のサウンドは、ギヴァーズ(Givers)やサン・シスコ(San Cisco)好きも要チェック。フルレングス・アルバムへの期待も高まる。以下からフリーDL可。
http://heyanna.bandcamp.com/


Aimee Mann / Bachelor No. 2 or, The Last Remains
of The Dodo (2000)

★★★☆☆


すでにソロだけでも20年のキャリアを持つエイミーの代表作。優しく温もりのあるボーカルと耳触りのよいサウンドがとても心地よい。そのためか引っかかる部分がなく、スッと入ってそのまま抜けていってしまう面もあるけど、これからじっくりと聴きこんでいきたい。



The Cure / Wish (1992)
★★★☆☆


先月聴いた「Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me」もそうだったけど、曲単位ではいいものの、アルバムとなると全12曲で約66分とやたらと長いのがどうしても気になってしまう。よってアルバム全体の評価は3つ星止まり。ただ、「Friday I'm In Love」はやっぱり素晴らしい。



Animal Collective / Strawberry Jam (2007)
★★☆☆☆


アニコレのアルバムを全て聴いているわけではないけど、本作はサウンド的には「Merriweather Post Pavilion」と「Centipede Hz」の中間にあるように感じた(リリース順としては「Merriweather~」の前作にあたるが)。ちなみに「Merriweather~」は2009年の個人的年間ベストアルバムの3位に選んだほど好きである一方、「Centipede Hz」は試聴のみで購入に至らなかった(理由については割愛)。本作はそんな両作品のいいところと悪いところがどちらも含まれているように感じられる。



Frankie Goes To Hollywood / Welcome To The
Pleasure Dome (1984)

★☆☆☆☆


80年代に「Relax」のヒットを飛ばした彼らの、その曲収録のアルバム。それにしても、前半「Relax」をモチーフとした曲が延々と続いたり、かと思えば唐突にブルース・スプリングスティーン「Born To Run」のカバーがあったりと支離滅裂な内容。残念ながら聴き返すことはもうなさそう…。
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