初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.48(2013年6月)

2013年6月に初聴きした音源の感想まとめです。6月は以前に試聴して「これは絶対買う!」と思いつつも金銭的事情で購入を保留していたタイトルを買い込んだため、5つ星多めになりました。

<★の解説>----------------------
★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリース作ではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
----------------------------

では6月の「Album of The Month」から。


■■■■■Album of The Month■■■■■
Parenthetical Girls / Privilege (Abridged) (2013)
★★★★★
Privilege_Abridged.jpg

2010年から2012年にかけてアナログのみで5枚リリースされた連作ミニアルバム「Privillege」のAbridged(=要約)盤。そんなわけで、コンセプチュアルな作品であるとともに、当然捨て曲なし。80's風エレポップだったり、クラシックからの影響を感じさせるチェンバー・ポップだったりしつつ全体的にはヘロヘロなローファイ・サイケ・ポップで、ちょっとクセが強めなのに非常にキャッチーで、ドラマティック過剰な泣けるメロディーの連続。マシュー・ベラミー(MUSE)に憧れてるアレック・オンスワース(CYHSY)みたいなボーカルがエモキモくて最高。

Parenthetical Girls - "Careful Who You Dance With"


Parenthetical Girls - "A Note to Self"




Sigur Rós / Kveikur (2013)
★★★★★


静かで深遠なトーンに包まれた前作「Valtari」からわずか1年で、全く逆のベクトルを持つアルバムを持ってくるとは。ともすればこのまま彼らは神聖で荘厳な方向に突き進むのかとも思っていただけに、通算7作目にして大胆な変化を選んだ姿勢に賛辞を贈りたい。これまでのどの作品よりもラウドで、ポップで、そしてライブ映えのするダイナミックな曲が並んでいて、もしかすると本作は(個人的に)彼らの最高傑作となり得るかもしれない。

Sigur Rós - "Brennisteinn"




She & Him / Volume 3 (2013)
★★★★★


60'sガールポップを下敷きにしつつ、楽しげでときどき物憂げなムードも漂うポップソング集。Blondieのカバー「Sunday Girl」もぴったりハマっていて素敵だし、ラストが「Reprise」で締めくくられるストーリー仕立てな構成もいい。ズーイー・デシャネルの歌声は、特別上手いというわけではないのにもの凄く色気と哀愁と可憐さを携えていて、とても表情豊かだと思う。「I Could've Been Your Girl」のビデオで見せるちょっとバカっぽいダンスも最高。

She & Him - "I Could've Been Your Girl"




Adam Green & Binki Shapiro / S.T. (2013)
★★★★★


アダム・グリーンと言えば、映画「Juno」にフィーチャーされた曲「Anyone Else But You」で有名な超絶ローファイ・バンド、Moldy Peachesの片割れ。しかし本作にはローファイな要素は皆無で、アダムのぶっきらぼうなボソボソ低音ボーカルに、モデル業もこなす美麗お姉さんビンキ嬢のどこかラナ・デル・レイっぽい気だるい色気も感じさせるボーカルがデュエットすることで、さながらジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールのようなロマンティックな雰囲気も漂ってくる。古き良きアメリカを体現したような、レイドバックしたムード歌謡ポップ。

Adam Green & Binki Shapiro - "Just To Make Me Feel Good"




Skrillex / Bangarang EP (2012)
★★★★☆


最高に盛り上がった2012年の単独来日公演以来、ずっと聴きたかったEPをようやく。一見粗暴なようで実は計算し尽くされた緻密な音作りがとてもかっこいい。ブロステップと括られながらも他の同系統のアーティストと明確に異なるところは、その緻密さの裏側に、単なるパーティー好きとは一線を画す知的な感じが漂っているところと、ドラムンベースやレゲエ、メタルなどからの幅広い音楽的影響が随所に垣間見えるところにあると思う。今年中にリリースが噂されるデビュー・フルALへの期待も込めて、4つ星に留めておきたい。



Anamanaguchi / Endless Fantasy (2013)
★★★★☆


NY出身の4人組チップ・チューン・バンド。先行シングルの「MEOW」は当ブログの選ぶ2013年上半期ベストトラックの1位に選出。他の曲も8bit音混じりのローファイ・エレクトロ全開ながら、メロディーはWeezerにも通じるほどにキャッチー。ただ、全22曲はさすがに多すぎで、途中でお腹いっぱいになってしまう。収録曲を半分くらいに減らしてくれたらAlbum of The Monthだったかもしれない。



Coyote Clean Up / 2 Hot 2 Wait (2013)
★★★★☆


デトロイト出身Christian Jay Sienkiewiczによるプロジェクトで、100%SILKからのリリース。全7曲ながら、アルバムとしては40分と長すぎず短すぎず、ちょうどいい長さで聴きやすい。深いリヴァーブのかかった「チルウェイヴ以降」を感じさせるトラックにハウスの心地よいビート(BPMもちょうどよい)。しかし何よりも、女性のボイス・サンプルを大々的にフィーチャーすることによって甘美なメロディーにさらに磨きがかかっている。ここ1、2年の作品で、洗練されたダンス・ビートとドリーミーな要素のバランスが最もとれている作品と言えそう。



may.e / Mattiola (2013)
★★★★☆
mattiola.jpg

透き通るような美しい声とクリアなギターの爪弾く音をリヴァーブで包んだ、アシッド・フォークの趣を感じさせる作品。伸びやかな高音や舌足らず気味の歌声、ぽつりぽつりとつぶやくように歌う雰囲気がどこか大貫妙子や森田童子にも通じるものがある。そのせいか本作は全曲英語詞ながら、日本の70年代フォークに近いものを感じた。

本人による歌詞日本語訳には「全曲わたしの3畳間でREC● わたしの日記」と記されてあり、クッキー・シーンのレビューにもあるように、本作は「ストーリー仕立て」であり「ひとりの女性が抱いた淡い恋心と、それによって生じる苦悩や幸福が鮮明に描写されて」いて、私小説的な意味合いが強いのだろう。彼女は余計な装飾を必要とすることなく、純粋にメロディー、詞、声の魅力のみで人を惹きつけることができるシンガーだと思う。なお本作は「Tanukineiri Records」からフリーDL可。

そんな本作以上に気になるのが、彼女のSoundCloud上に散見できる日本語詞のフォークやラップの曲。その引き出しの多さに驚かされつつ、「Mattiola」だけではまだ完全に把握できないmay.eの魅力をさらに知ることができる。「寝床」「あなた」「浜においてきて」「会話」やラップの「ピーターパンはいないの」「はじまりの合図」はいずれもフリーDL可能で、オススメ曲。特に「あなた」は当ブログの上半期ベストトラックの9位に選出されている。



Bella Darling / Man In Sea EP (2013)
★★★★☆
Bella Darling

情報が少なくてよくわからないのだけど、LA出身の女性シンガーによるソロ・プロジェクト、もしくは3人組バンド(途中で変わったのかも)。ただ、Primavera Sound 2013のオフィシャルサイト上ではスペインのアーティスト扱いとなっており、いろいろと謎。とにかく今後の活動が楽しみでブレイク必至な彼らのデビューEPである本作(捨て曲なし)は、彼らのBandcampからname your priceでDL可。ブルースやカントリー、ガレージロックを通過しつつも雰囲気的にはBeach Houseのドリーミー感があったり、重厚なストリングスやピアノの響きは耽美で、なおかつフィルム・ノワール的な退廃観も醸し出している。



Daft Punk / Random Access Memories (2013)
★★★★☆


本作に関しては「生演奏にこだわったのがいい」「単なる懐古趣味」「新しさが全くない」「彼らがわざわざこれをやる必要はない」などいろいろと賛否が分かれているようだけど、僕の感想は「単純に曲がいい」これだけで十分。このサウンドがもしダフト・パンクの新作じゃなくても、30年前の音楽でも何でもいいけど、とにかくM3「Giorgio by Moroder」、M5「Instant Crush」、M7「Touch」(当ブログの上半期ベストトラック10位に選出)をはじめとした各楽曲に漂うロマンティックな哀愁感、これがあれば満足。少し長いので星はひとつマイナス。



Mikal Cronin / MCII (2013)
★★★★☆


甘酸っぱい泣きメロとざらざらしたギター、ピアノやストリングスのアレンジがエモーショナル。とにかく曲がいい。M1「Weight」が特に秀逸。



Jimmy Eat World / Damage (2013)
★★★★☆


気付けばもう8作目。前作「Invented」は少し落ち着いた雰囲気だったけど、今回は再び少しだけロックな感じが戻ってきている。それでも全体的には前々作以前と比べてディストーションは控えめで、プロダクションもどこか音圧が抑えられた感じ。しかし地味な印象にならないのは、シンセやアコギの高音域の強調によるキラキラした質感や洗練されたグッド・メロディー、そしてジムのセンチメンタルな歌唱によるところが大きい。



Zomby / With Love (2013)
★★★★☆


2枚組全33曲のヴォリュームながら、曲が短いので比較的すんなり聴ける。初期のProdigyみたいな曲からAphex Twinのようにアシッド感とアンビエント感を融合させた曲、果てはドラムンベースまでも飛び出したりと、先人に敬意を示しつつもそれらを彼独特のダークで冷たいサウンドに包みこんで、作品全体に一貫してミステリアスなムードを漂わせている。



V.A. / World Awake V.A. (2013)
★★★★☆
worldawakeva.jpg

日本のネット・レーベルano(t)raksのコンピ第四弾。当ブログでインタビューもしたannie the clumsyをはじめ、日本のインディー・ミュージックの明るい未来を感じさせる個性的なアーティストがたくさん。他にはthe fin.、come to my party、ghostlight、Slow Beachが特によかった。ano(t)raksのBandcampからフリーDL可。



ホシナトオル / broken record (2013)
★★★★☆
hosina.jpg

「シティ・ポップ」という言葉の定義はわからないし、おそらく本来意味するところとは違うであろうけど、本作を聴いた時になぜか「シティ・ポップ」という言葉がしっくりきた。都会には様々な音楽が溢れていて、それらがごく自然に日常の中に融合しており、本作がそんな状態を体現しているように思えたから。はっぴぃえんど的なのほほんとした歌い回し(M1「まだある」、M3「ゼロフリー」)や、坂本慎太郎のソロ作にも通じるソウル・ファンク(M2「自然体」)、そしてシンセポップ(M4「ただのふつう」)やシューゲイザー(M7「おばけよりこわい」)までをもさらりと取り入れる軽い身のこなし。この、既存のスタイルに捉われることなく自由に、今まで自身が吸収してきた幅広い音楽を天然的にアウトプットできる「軽さ」や「自由な精神」は、いまや日本の「シティ・ポップ」を象徴するバンド、ceroにも通じるものがある。ホシナトオルのBandcampからフリーDL可。



Boards of Canada / Tomorrow's Harvest (2013)
★★★☆☆


先に公開されていた曲も聴かず、前情報もシャットアウトして先入観なしに聴いてみたのだけど、思った以上にアンビエント色の強い作品だった。特に後半に行くにつれてどんどんディープに、(いい意味で)眠気を誘うようなサウンドになっている。8年ぶりのアルバムということでは変化は当然だと思うけど、以前のように酩酊気味にゆらめくあの不安定な音響も、グリッチ混じりのダウンビートも影を潜め、美しい原風景が目の前に広がっていくような映画みたいな作品で、雰囲気的にはブライアン・イーノの「Small Craft on a Milk Sea」を思い出させたりも。ヘビロテするような作品ではないけど、これは2013年上半期で最も「睡眠導入剤として最適なアルバム」だと思う。



CSS / Planta (2013)
★★★☆☆


サウンドの要、アドリアーノが脱退して、サウンドがどのようになるのか非常に気になっていたが…。結果的にはチープな打ち込みドラムが増えたりして、ローファイかつDIY感が今まで以上に前面に押し出た感じに。ただ、個人的に大名盤である2nd「Donkey」や3rd「La Liberación」ほどのキャッチーなフックがなく、曲単位では当ブログの上半期ベスト・トラック14位に選出された「Hangover」以外、少し印象に残りにくそう。



!!! / THR!!!ER (2013)
★★★☆☆


これまでと違ってジャム・セッションからではなく、しっかりと曲を書いてからレコーディングしたそうで、それでは彼らの持ち味である、即興によるカオス性や変態性が薄れるのでは?と思ったし、何よりも前作がいまいちパッとしなかったのでいろいろと不安だった。しかし蓋を開けてみれば、確かにソングライティングを重視したような曲もあったけど本質的には変わっておらず、非常にダンサブルでかっこいい。特にラストの「Station (Meet Me At The)」がガレージっぽい雰囲気があってズバ抜けてよかった。他のトラックも悪くはないのだけど、ラストに全部持っていかれて影が薄くなってしまったのが残念。この曲に匹敵するものが1、2曲目にあれば最高だったと思う。



Neon Neon / Praxis Makes Perfect (2013)
★★★☆☆


前作「Stainless Style」から5年振りのセカンド。今回も実在の人物をテーマにしたコンセプト・アルバムらしい。相変わらずの80'sエレポップ趣味全開でメロディアスではあるけど、前作ほどの完成された世界観はなく、曲のフックも少し弱め。あと曲順も再考の余地ありだと思う。



Is Tropical / I'm Leaving (2013)
★★★☆☆


「Dancing Anymore」をはじめ、曲単位ではとてもポップな曲が並んでいる。ただアルバム全体を通して聴くといまひとつフックが弱く、「ポップで親しみやすい曲」レベルに留まってしまって印象に残りにくかった。



V.A. / Dr Pepper And Adult Swim Present
Garage Swim (2013)

★★★☆☆
GarageSwim.jpg

企画もののガレージ・ロック系コンピレーション(こちらからフリーDL可)。Black Lips、King Tuff、Thee Oh Sees、Mikal Croninなど2010年代らしさに溢れる新世代ガレージ・ロック系バンドの楽曲が収録されている。ラストのWeekend「Teal Kia (demo)」だけ毛色が異なり浮いているが、この曲が一番好きかも。



V.A. / Clubhouse Split (2013)
★★★☆☆
clubhousesplit.jpg

Art FagのYohunaが中心になって集まったカセットコンピレーション。詳しいことはよくわからないけど、どの曲もドリーミーで美しく、統一感がある。YohunaのBandcampからフリーDL可。



Slum Village / Fantastic, Vol. 2 (2000)
★★★☆☆


Jディラが在籍したヒップホップ・グループによるセカンド作で、ゲストにQ-Tip(ATCQ)やD’angeloが参加。Jディラの「Donuts」とは全く違った印象で、こちらはオーセンティックなデトロイトスタイルのヒップホップ。「Donuts」を聴いた後だったのでちょっと物足りなさも感じたものの、やはりビートやサンプリングの使い方などはかっこいい。



Aye Nako / Unleash Yourself (2013)
★★☆☆☆
ayenako.jpg

エモーショナルでガーリィなパンク・バンド。まだあどけなさも残しつつ少しハスキーな女性ボーカルがキュート。ギターの音がややこもりがちなのと、ドラムのフィルがワンパターンな点、そして初期のThe Get Up Kidsを連想させた「Molasses」を初めて聴いた時ほどの新鮮さがあまり感じられなかったのが残念。Aye NakoオフィシャルサイトからフリーDL可。



Best Friend / Best Friend (2012)
★☆☆☆☆
bestfriend.jpg

ジザメリ風の甘いメロディー自体に新鮮さはないけど、ローファイ・シューゲイザーとも呼べそうなサウンドとの相性はいい。ただ、悪い意味でのローファイさが出まくってしまい、全体的にこもったような音質と、イコライジングで低音のレベルを上げ過ぎなせいでバスドラのリリース(残響)音に余計な低音が響いているのがかなり耳障り(ヘッドホンで聴くとかなり目立つ)。あとドラムと他パートのタイミングのズレも非常に気になった。Best FriendのBandcampにてname your priceで販売中。
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