初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.52(2013年10月)

2013年10月に初聴きした音源の感想まとめです。今月はここ数ヶ月と比べるとちょっと少なめ。前半はThe Killersばかり聴いていたし、後半はゆっくり音楽を聴く時間があまり取れませんでした。

<★の解説>----------------------
★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリース作ではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
----------------------------

では10月の「Album of The Month」から。


■■■■■Album of The Month■■■■■
Lorde / Pure Heroine (2013)
★★★★★
Lorde.jpg

ニュージーランド出身とか16歳といったトピックがあるにしても、このデビュー作が全米チャート初登場3位(1位Justin Timberlake、2位Drakeという強豪に次いで)というのは単純にすごい。おまけにシングル「Royals」は全米4週連続1位、全英でも初登場1位だそう(10月30日現在)。

非常に洗練されたポップでありつつも退廃的なムードを感じさせる彼女の個性は、二年ほど前にLana Del Reyがシーンに現れた時を思い出させる。ただ、過剰なまでにドラマティックに装飾されたラナのトラックと比べると、Lordeの楽曲におけるアレンジはまさにその対極とも言えるもので、ストイック過ぎるほどにミニマル。音と音の間の残響の中にエモーションを封じ込める手法はThe xx、James Blakeといった「ポスト・ダブステップ以降」の流れを汲んでおり、そういった意匠はプロデューサーであるJoel Littleの手腕によるところが大きいのだろうと思う。

しかしそれでいて、Lordeが大人たちにプロデュースされたお人形さんアイドル、もしくはセレブ然としたポップスターなのかと言われれば、そのようなところは微塵も感じられない。憂いと色気が備わった表現力の高い歌声は、ガガやケイティ・ペリーやマイリー・サイラスといったメインストリームのポップシンガーのそれとは明らかにベクトルが異なるし、フローレンス・ウェルチやアデル、キンブラなども含めた数多の「女性シンガー」の括りの中においてさえ異彩を放っている。詩人だという母親の影響が強いであろう彼女の書く歌詞には、(「Royals」に表れているように)拝金主義のヒップな世界とは一定の距離を保ちつつ冷ややかな視線を送るかのようなアティテュードが垣間見えるし、黒いバックに名前とタイトルを記しただけのシンプルなジャケットからも、俗世間に媚びずに「個」を貫こうという彼女の芯の強さが感じられる。

ここでは大ヒット中のシングル「Royals」や「Tennis Court」を貼りたいところだけど、個人的に最も好きな「Buzzcut Season」を。

Lorde - "Buzzcut Season"




Parenthetical Girls / Privilege Appendix (2013)
★★★★★
Privilege_Abridged.jpg

タイトルに記された「Appendix(付録)」の通り、これまでにアナログでリリースしてきた一連のミニアルバム「Privilege」シリーズのまとめ版となったアルバム「Privilege (Abridged)」から漏れた曲の編集版。彼らのBandcampからDL購入可能($7USD)。

アルバムからは漏れた曲とはいえ、もともと発表されていた曲だけあっていわゆる「ボツ曲」のようなものではなく、アルバム収録曲同様に素晴らしいクオリティ。全8曲ながら、美しくも破滅的にぶっ壊れた楽曲が揃っていて、まるでThe Flaming LipsとArcade FireとAntony & the Johnsonsをごちゃ混ぜにしたような、とでも形容したくなる。ちなみに「Privilege (Abridged)」は当ブログの「2013年上半期ベストアルバム」で1位に選出された作品。

Parenthetical Girls - "Someone Else's Muse"




Pet Shop Boys / Electric (2013)
★★★★☆


昨年リリースされたアルバム「Elysium」は彼らのオリジナルアルバムの中でも初めて「スルーでいっか…」と思ってしまったアルバムだった。いや、曲単位ではとても美しく、相変わらずのPSB節だったのかもしれないけど、やはりアルバムとしては煌びやかでダンサブルな要素が少々物足りなくも感じられたので。

本作はその「Elysium」と同時期に制作されたものらしく、曲調によって「静」と「動」の2枚に分けられたうちの「動」にあたるもの。よって、始めから終わりまで80'sエレポップと90'sクラブミュージックと00's以降のEDM(本人たちは最近のEDMを批判しているけど)をPSB流儀でブレンドし、彼らが歩んできた時代のダンスミュージック史を俯瞰してまとめ上げたようなサウンドに仕上がっている。ここまでアッパーでダンサブルに振り切れたのは、1999年リリースの7作目「Nightlife」以来ではないだろうか。90年代前期~中期に彼らが多用していた壮大なオーケストラ・アレンジやゴスペル風クワイアを取り入れ、あの頃のPSBサウンドを再び蘇らせたような「Love Is A Bourgeois Construct」は、ここ10年のPSB史上でも最高の曲だと思う。



Cocteau Twins / Head over Heels (1983)
★★★★☆


セカンド作。確かにパンク度の高いデビュー作「Garlands」と、神秘性を増した3作目「Treasure」の間に位置する作品だけあって、その中間のようなサウンド。ただ、その後の彼女たちのイメージには合わない「In Our Angelhood」のようなアップテンポな曲もあり、この頃の彼女たちはその後の方向性がまだ定まっていなかったのではと思うフシも。そのため本作は、実験性を感じる意欲作ではあるけど、彼女たちの作品中ではややまとまりがない印象を受けた。ただ、1曲目「When Mama Was Moth」のイントロにおける深いエコーのかかったバスドラムの音にはゾクゾク来るものがある。



Someone Still Loves You Boris Yeltsin / Fly By Wire
(2013)

★★★★☆


ノイジーなギターが減少しキーボード類の音が増えたことで、これまでのパワーポップ/ギターポップ感はやや薄れ、インディ・ポップらしさが増したように思う。しかし音の質感は徐々に変わろうとも、彼らの最大の持ち味であるキャッチーなメロディセンスは不変で、むしろさらに強力になっている。ボーカル含め、なんとなくBig Troublesのセカンド作「Romantic Comedy」にも近い印象を受けた。



Depeche Mode / Music For the Masses (1987)
★★★☆☆


実はこれまで彼らのアルバムをちゃんと聴いてこなかった。2000年代以降の曲はいくつか聴いたことがあったけど、EditorsやHurtsをもっと渋めのロックにした感じという印象を抱いていた。本作はいかにも80年代の作品らしく、想像していたよりもエレポップ度が高くて、メロディは暗めだけどサウンド的にはポップで聴きやすかった。この耽美な世界観はTears For FearsとJoy Divisionの中間に位置するとも形容できそう。他のアルバムも聴いてみようと思う。



Mazzy Star / Seasons of Your Day (2013)
★★★☆☆


良くも悪くも変わらないスタイルであり続けるサイケ・フォーク・デュオ、17年ぶりの新作。ホープ・サンドヴァルの美しくけだるい歌声とデイヴ・ロバックのレイドバックしたボトルネック・ギターは健在で、酩酊感のあるサイケデリック・サウンドを聴かせてくれる。パッと聴いた印象だと、セカンド「So Tonight That I Might See」に最も近いかも。全体的にスローでゆったりしているのに退屈さを感じさせず、逆に心地よいと感じさせてくれる。でも欲を言えば、もっと驚く展開があってもよかったかな。



Summer Camp / Summer Camp (2013)
★★★☆☆


ループする電子音が印象的、かつ重めのメロディから突如目の前が開けて明るくなるような「The End」から始まり、続いてのメルヘンチックでダンサブルな先行曲「Fresh」…以降5曲目までは最高なんだけど、後半はやや失速感が目立つ。後半も勢いを保ってほしかったところ。



The Cure / Faith -Deluxe Edition- (1981 / 2005)
★★★☆☆

先月初聴きした2nd「Seventeen Seconds」に続いての3rd。「Seventeen Seconds」と同様にダークな世界観に満ちているけど、こちらの方が少しだけ明るさが見える。特に「The Funeral Party」は8年後のアルバム「Disinteglation」への布石となりそうな、美しく幻想的なシンセのレイヤーがゆったりと流れる美メロ・ソング。The Cureは明るくキャッチーな曲から入ったけど、最近はこういうダークサイドが全面に出た作品の方がむしろ好きかも。



Jay-Z / The Blueprint (2001)
★★★☆☆


Jay-Zのアルバムを聴くのは今年リリースの「Magna Carta Holy Grail」に続いて2作目だけど、この2作は全く方向性が違った。「Magna Carta~」からJay-Zのトラックは先鋭的で攻撃的というイメージがあったけど、本作はJackson 5、Natalie Cole、Al Greenといったメロディアスなソウルナンバーをサンプリングすることにより、全体的にヒップホップというよりR&Bにも近いスムースなサウンドに感じられた(こんなにポップで大衆ウケしそうなヒップホップをやる人だったのか…そりゃヒットも飛ばすワケだ)。これはこれで統一感のある作風でいいとも思いつつ、欲を言えば「Magna Carta~」みたいな尖った音が聴きたかったところ。彼のラップについては…特になし。



Nas / Illmatic (1994)
★★★☆☆


よくヒップホップの名盤としても挙げられているNasのデビュー作。Nasの人となりに対する知識や思い入れがないためか、彼のラップよりもトラックそのものに耳が行ってしまい、あまりラップの印象は残らなかったんだけど、かっこいいサンプルループとタイトなビートが必要最低限の音で鳴らされているトラックはかなりかっこよかった。カリンバの音をフィーチャーした「One Love」がとても新鮮に感じられた。



The Flaming Lips / Finally the Punk Rockers Are
Taking Acid (2002)

★★★☆☆


インディーズ時代の初期アルバム3作にそれぞれEP収録曲などのレア音源をプラスした、全56曲・3枚組アンソロジー。初聴きとなるEP音源は初期の粗削りでパンキッシュなガレージサウンド全開でかっこいい。やはりリップスは2000年代以降よりもこちらのサウンドの方が自分好みだなと再認識。



Black Kids / Partie Traumatic (2008)
★★☆☆☆


本作を初めて聴いた(試聴した)リリース当時はまだThe Cureもよく知らない頃で、The Cureを引き合いに出される理由もよくわからなかったし、「I'm Not Gonna Teach Your Boyfriend How to Dance with You」と「Look at Me (When I Rock Wichoo)」くらいしかいい曲がないと思いスルー。今年に入り空前のThe Cureブーム(←個人的な)を経た今となってはイケるかも!?と思ってあらためてレンタルして聴いてみたけど、評価は以前とさほど変わらず。特にThe Cureっぽい感じもなかった。
※ちなみにあれから音沙汰のなかった彼らですが、2014年初頭にセカンドアルバム出すらしいです。

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