初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.54(2013年12月)

2013年12月に初聴きした音源の感想まとめです。映画も音楽も、良い作品は年末に出会うことが多い。そんなことを肌で感じた月でしたね。ところでこの初聴きディスクレポート、来年からはもっとシンプルで簡素なものにしたいと思ってます。

<★の解説>----------------------
★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリース作ではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
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では2013年最後の「Album of The Month」から。


■■■■■Album of The Month■■■■■
Arcade Fire / Reflektor (2013)
★★★★★
arcade-fire-reflektor.jpg

すでに当ブログの年間ベストトラックの1位・2位に選出されている「Afterlife」と「Reflektor」という素晴らしいトラックをそれぞれのディスクに配した2枚組アルバム。長いアルバムは基本的に好きではないんだけど、本作は30分台のアルバムを2枚続けて聴くような気分ですんなり聴ける。ディスク1を聴くと、続けてディスク2が聴きたくなるようなコンセプト性・連続性という点では、M83の「Hurry Up, We're Dreaming」に近いかも。

本作が素晴らしいのは前述の2曲が素晴らしいだけではなく、ハイチの民族音楽から影響を受けたという「Flashbulb Eyes」や「Here Comes The Night Time」といったトライバルなビートを持つ楽曲が、これまでの彼らにはなかったファンクネスを生み出している点でもある。しかもそれでいてスタイルが全く変わってしまったわけではなく、柔らかく包み込むようなメロディーを奏でる最終曲「Supersymmetry」など、従来の彼ららしい美しさに満ちた曲もある。確かに、曲単位のメロディーの良さで見れば前作「Suburbs」の方が上かな。でもこの作品は徹底してコンセプチュアルである面を含め、彼らの歴史を語る上でも後のち10年代の音楽シーンを語る上でもかなり重要な作品として捉えられることになる気がする。

ちなみにディスク1の1曲目「Reflektor」をCDで再生してからずーっと巻き戻すと、PCでは表示されない10分近い隠しトラックが収録されている。「Reflektor」(=反射させるもの)というコンセプトに基づき、CDというフォーマットならではの遊び心を忘れないところもニクイ。

Arcade Fire - "Afterlife"




may.e / 私生活 (2013)
★★★★★
maye_shiseikatsu.jpg

感想・レビューはこちら

may.e - "おちた生活 (Loose Life)"




Kanye West / Yeezus (2013)
★★★★★


各メディアから絶賛された前作「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」はあまり好きになれなかった。ヒップホップの可能性を拡張させた革新的な作品として評価が高いのもわかるし、Aphex Twinの名曲「Avril 14th」をサンプリングしたりする叙情性溢れるセンスも評価できる。でも、とにかく1曲1曲が長くて、その「長さ」にどうにも必然性が感じられず、僕の心にはすんなりと入ってこなかった。

この作品も当初はWEBで何度か聴いてもピンとこなかった。耳障りな電子音以上に、攻撃的に叫びまくるカニエの声が受け付けなくて。でも最近あらためて聴き直したら、何故だか急にトラックがもの凄くかっこよく感じられた。それと同時に、カニエのこの歌い方にしてもトラックに対して必然と思えるようになった(急に認識が変わった理由は自分でもよくわからないけど)。前作で気になっていた長さも、今回はリック・ルービンの助言の甲斐あってコンパクトで良い。

Kanye West - "Black Skinhead"




The Cure / Pornography (1982)
★★★★★


The Cureの初期作品「Three Imaginary Boys」、「Seventeen Seconds」、「Faith」はダークな作品ではあるものの、音の軽さのせいもあってあまり「重苦しさ」のようなものが感じられず、そこが物足りなくもあった。でもこの作品では無機質な打ち込みビートやゆらゆらしたシンセのレイヤー、ボトムの効いた生ドラムの音などによって全体的に重厚さが増している。ゆったりした曲が多いものの、不穏なメロディーやディレイのかかったロバート・スミスのこれまで以上に妖艶な歌声が、この作品の持つ世界観をより濃密にしていると思う。

「Wish」や「Kiss Me~」といったポップな作品から入ったけど、本作によってようやく彼らの持つダークな側面の魅力に目覚めることができた。

The Cure - "Hanging Garden"




Oh Land / Wish Bone (2013)
★★★★★


デンマークの才女・Oh Landの3作目は、ユニークで先鋭的なビート(とグルーヴ)に重きが置かれていて、まるで「Homogenic」期のビョークにインスパイアされたKimbraのよう。というのも、オープニングを飾る「Bird In An Aeroplane」のスネア・ロールはビョークの「Hunter」に似ている(サンプリングか?)し、「Sleepy Town」におけるインダストリアル風のビートは「Joga」のビートを連想させたから。そしてKimbra同様にコケティッシュでキュートな彼女のボーカルに「トランシー」や「コズミック」といった形容が思い浮かぶキラキラしたシンセ音と、ピアノやトランペットや細かくカッティングされるギターなどの生楽器が組み合わさることで、唯一無二のファンキーなグルーヴが生み出されている。

Oh Land - "Renaissance Girls"




The Proctors / Everlasting Light (2013)
★★★★☆


知らずに聴いたら1stの作風に戻ったThe Pains of Being Pure At Heartの新作かと思ってしまいそう。本作は18年ぶりのアルバムということでペインズよりもだいぶ先輩にあたるけど、瑞々しさは決してペインズに負けていない。キラキラのギターに浮遊感のあるシンセ、男性ウィスパーボイスとハーモニーを奏でる美しい女性コーラス、疾走感溢れるサウンドといったこの手のギタポマナーに倣い過ぎな点は否めないけど、そうとわかっていても本能的に良いと思える作品。The La'sの「There She Goes」そっくりのイントロにもニヤリとさせられた。



PUP / PUP (2013)
★★★★☆
rmr_pup_cd.jpg

パンク、エモ、ハードコア的な激しいサウンドとボーカルでありながら、超絶キャッチーなフックとシンガロングしたくなるメロディーを持つカナダ出身のバンドのデビューアルバム。ストロークス/リバティーンズ以降に登場したUKのギターバンドのように聞こえる瞬間もあれば、ポップ・パンク/ポップ・エモのようでもあり、パワーポップのようでもある。お世辞にもイイ声とは言えないけど、ツバや汗が飛んできそうな絶叫寸前の歌声がアツい。今回購入したのはカナダ盤で、2014年にはUSデビューが決定しワールドワイド盤もリリースされるらしく、今後も話題を振りまいていくことと思う。



Sky Ferreira / Night Time, My Time (2013)
★★★★☆
Sky Ferreira Night Time My Time

ヌードジャケットや逮捕騒動もあり、どうも話題先行な気がして敬遠していたけど、意外と音もメロディーも良い。「Everything Is Embarrassing」が入っていないのは残念ではあるけど、本作におけるノイジーでパンキッシュなエレクトロ・ポップの中ではあの曲は確かに浮いてしまうかも。Suicideばりの無機質ビートと絡むスカイの声はセクシーさがありつつ凛としていて、クリッシー・ハインド(The Pretenders)やベリンダ・カーライル(The Go-Go's)、デビー・ハリー(Blondie)といった「クールで力強い女性像」の系譜だと思った。



The Cure / Japanese Whispers (1983)
★★★☆☆


8曲入りの編集盤ということで軽く見ていたのだけど、これはなかなか面白い。確かに作品としての統一感はないものの、彼らの幅広い音楽性を知る上で非常に重要な曲が詰まっている。YMOみたいな「The Upstairs Room」や、ニュー・オーダーの「Blue Monday」を連想させるディスコティックなナンバー「The Walk」が特に良かった。



Eminem / The Marshal Mathers LP 2 (2013)
★★★☆☆


Eminemのオリジナルアルバムを聴くのは今作が初めて。今まで特に興味もなかったし「8 Mile」のサントラを持っていた程度だった。過去作を聴いていないので比べようがないけど、かなり高速でキレのあるラップスキルにただただ驚嘆。言葉の詰め込み型と絶妙なライムが見事だった。ただ、リアーナをフィーチャーした「The Monster」(これもめちゃくちゃかっこいい)以降の終盤はそれまでのシリアスなムードから一転して明るめの曲調が多くなることで、アルバム全体の統一感に欠ける上にランタイムの長さも相俟ってダレてくる。特にFun.のネイトをフィーチャーした「Headlights」は商業臭が強くてどうも好きになれなかった。



The Neighbourhood / I Love You (2013)
★★★☆☆


アメリカではシングル「Sweater Weather」がオルタナチャートで1位獲ったり、ラジオでも頻繁に流れたりとすでに結構な人気。ヒップホップ、トリップホップ、ダブステップからの影響が濃いバンドサウンドはモノクロのジャケやアー写イメージとの相性も良く、スモーキーでサイケな雰囲気がかっこいい。ただ、YouTubeで試聴した時には全然気付かなかったのだけど、このサウンドどこかで聞いたことあるような…、と思ったらこれは完全にLana Del Rey「Born To Die」。もちろんこちらは男性ボーカルなので歌そのものは全く違うけど、トラックは同じサンプルを使っているのではと思うほどで、物憂げな曲調もそっくり。なのでかっこいいんだけど、新鮮味には少し欠ける。



Imagine Dragons / Night Visions (2012)
★★★☆☆


もうすでにラジオやらMTVやらで耳タコ状態の彼ら。リリースから1年半遅れで聴いたけど、今までのイメージを軽く覆された感じ。ボーカルの声質的にもっと男臭い感じかと思いきや、曲はバリエーションに富んでいて繊細な曲やインディ・ポップ的な曲も。特にボーナストラックとして収録された初期音源は、良い意味で垢抜けていないこじんまりした感じが良かった。全体的にとてもメロディアスで、彼らの中で最も有名な「Radioactive」が一番メロディアスではないのでは?と思うほど。



Cyndi Lauper / She's So Unusual (1983)
★★★☆☆


デビューアルバムにして1600万枚を売った超名盤。よって名曲だらけで、10曲中7曲がシングルカットされたというのもすごい。ベスト盤などによって既に知っている曲が大半を占めていたため、あらためてオリジナル作を聴いても大して新鮮さはなかったものの、作品全体に漲る、この作品を名盤たらしめるポップなメロディーとクールなサウンドとアグレッシヴかつキュートな歌声は30年を経た今でも全く色褪せていない。



N'夙川BOYS / Timeless Melody (2013)
★★★☆☆


前作「24HOUR DREAMERS ONLY!」でも少しだけ打ち込み/キーボードを用いた曲があったけど、今回はさらにその比重が増えた気がする。特に80年代風のチープな打ち込みドラム。打ち込みの正確なリズムに対する生演奏のズレが余計に目立ってしまっているのが気になるものの、露骨にズレている「Boys and Girls」からするとわざとそうしていると思われ、そんな稚拙さが彼ららしくもある。シューゲイザー風のギター音が鳴っていたり、新機軸もいくつか見られるけど、とにかくメロディーに定評がある彼らだけあってやはり曲はいいし、リンダの声も相変わらず最高。海外の著名なプロデューサーが手掛けたら大化けしそう。



Built To Spill / You In Reverse (2006)
★★★☆☆


「Keep It Like A Secret」(名盤!)のイメージでいたので、1曲目「Goin' Against Your Mind」のイントロの疾走感には驚かされた。前半はかなり自分が持っていたイメージと異なる部分もあったけど、後半は「Keep It~」路線のミディアムテンポの泣きメロもしっかりある。しかしやっぱり「Keep It~」と比べてしまうとインパクト弱いかな。



Arca / &&&&& (2013)
★★★☆☆
arca.jpg

深海生物のようなジャケがキモくて気になった。カニエの「Yeezus」にプロデューサーとして参加していた彼の楽曲は、先鋭的な低音の効いたビートとサンプリング・ボイスとリヴァーブのかかったシンセ音によって構築されていて、確かにエッジィではあるけどもう少しメロディーらしいメロディーがある方が良かった。
ArcaオフィシャルSoundcloudからDLできます。



Millionyoung / Replicants (2011)
★★★☆☆


各曲のタイトル的に宇宙好き?ジャケは何故かハワイアンだけど、キラキラしたシンセポップ。曲が短かったり、少しデモっぽい感じが強かった。



möscow çlub / Station M.C.Ç.B. (2013)
★★☆☆☆


日本のインディーロック界隈では近年最も高い評価を得ている、と個人的に捉えているバンド。最新作がSoundCloudからフリーDL可能なのを最近知った。個人の年間ベストにも結構上位に顔を見せていたりと評価がいいので相当のクオリティを期待してしまったためか、ちょっと肩すかし気味。メロディーは確かにポップで、キラキラしたシンセの音も心地いい。ただどうしても既存の概念としての「みんなの好きなシンセ音・みんなの好きなメロディー」という枠の中に収まっているように感じられて、新鮮さはなかった。加えてミックスのバランスも雑に感じられ、十数年前に友人が作ったオリジナル曲を聴かせられた時のような感覚を覚えたりも。これはKissesの「The Heart of The Nightlife」を聴いた時にも感じたことで、ボーカルとビートとベースラインに関して、輪郭の付け方と音量バランスが取れていないと悪い意味でのローファイ感が出てしまって好きになれない。



The Boo Radleys / Giant Steps (1993)
★★☆☆☆


「Wake Up!」の印象のまま聴くと「ええっ」となるアルバム。というかこれ「Wake Up!」よりも前の作品なのか…。何となく、「Wake Up!」でブレイクした後に4、5年経ってから、前作と違うことをやろうとした過渡期の作品のような。当時NMEのアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれたらしく、確かに革新性を持った、芳醇な音楽性とか高い表現力を持った作品だと思うけど、ギター・ポップとかブリット・ポップのバンドという認識でいたところへ急にレゲエとかぶち込まれてかなり戸惑った。加えて全17曲というのもあり、咀嚼にはまだまだ時間がかかりそう。
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