初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.64(2014年10月)

2014年10月に初聴きした音源の感想まとめです。ここ数ヶ月はあまり新譜を買っていなかったけど、10月は結構買いました。しかもその多くが5つ星レベルという豊作っぷり。

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★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリースではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
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では10月のALBUM OF THE MONTHからいきます。


■ALBUM OF THE MONTH■
Caribou / Our Love (2014)
★★★★★
CaribouOur Love

素晴らしかった2010年リリースの前作(当ブログでは年間ベスト15位、もっと高くても良かった)『Swim』を踏襲しつつ、Daphni名義での活動からの影響も色濃く表れたダンサブルな作品。静かなイントロから徐々に熱を帯びていくセクシーなダンストラックを中心に据えつつ、Jessy Lanzaをボーカルに迎えた「Second Chance」のようなスローな曲を随所に配置することで、作品全体の流れにおいていいアクセントになっている。洗練された音色を使いながらも、あえて音程を揺らすことである種の「酩酊感」を醸し出す不穏なサウンドが、メランコリックなメロディーや繊細な歌声と見事に融合している。

Caribou - "Can't Do Without You"




Weezer / Everything Will Be Alright In The End
(2014)

★★★★★


通算9作目。デビューアルバムから20年を経て三たびリック・オケイセクをプロデューサーに迎えたことや、「Back to the Shack」で歌われる内容からも「原点回帰」の意向が感じられる。ただ、基本的に彼らは初めから一貫してポップなグッドメロディーを書いてきているので、「実験的なことをやめてメロディーに回帰した」みたいなドラスティックな変化を見せるバンドのいう「原点回帰」とはちょっと違う。

そんな中でも個人的に最も「原点回帰」を感じたのはアレンジや構成面。ここでいうアレンジとは、以前で言えば「Can't Stop Partying」でメインストリーム・ヒップホップに接近したり、「Love Is The Answer」でインドっぽさを取り入れたりというようなプロダクション的なことではなくて、『Weezer (The Blue Album)』や『Pinkerton』期を彷彿させるひねくれた展開のことで、それが本作最大のキモになっていると思う。Aメロのコードとサビのコードをシンプルに繰り返すだけではなく劇的に泣きメロを盛り上げていく「Eulogy For A Rock Band」、半端な拍やハードロック調のパートがある「Cleopatra」など、リヴァースのメロディーセンスと、アイデアに満ちた各メンバーの演奏センスが遺憾なく発揮されている。『Pinkerton』に次いで、『Weezer (The Blue Album)』『Make Believe』に並ぶ傑作として位置付けたい。

Weezer - "Eulogy For A Rock Band"




Aphex Twin / Syro (2014)
★★★★★


『Drukqs』以来13年ぶりとなるAphex Twin名義のアルバム。この数年の間に作った膨大な曲の中から選ばれただけあってどれもクオリティが高いけど、それが今までのような「先鋭性」によって生まれるものではなく、ポップソングとして、そしてこれまで以上に洗練された音作りによってそのクオリティを高めているところが新鮮。

サマソニ'09に出演した時と同様、ミディアムテンポの曲から始まり徐々にドリルンベースへと加速していくアルバムの流れは彼のDJプレイを思い出さずにはいられないし、ラストを美しいピアノ曲でシメるあたり、彼にしては珍しく「アルバム」という点を強く意識した作品だと思う。まるで13年前とは様変わりしてしまった、今の音楽の聴かれ方に対するアンチテーゼのように「アルバム」という形に対するオマージュが感じられた。

Aphex Twin - "minipops 67 [source field mix]"




The Rentals / Lost In Alphaville (2014)
★★★★★


元Weezerのベーシスト、マット・シャープによるバンドが帰還。95年の1st『Return of the Rentals』はメロディーの良さ、男女混声の美しいハーモニー、モーグシンセの音からにじみ出るポップ感は素晴らしいものの、ギターとドラムの音に難ありだった。99年の2nd『Seven More Minutes』では音はかっこよくなったけど、モーグシンセは控えめだしメロディーも弱く、後半は長ったらしかった。そして15年ぶりとなるこの新作は、1stと2ndのいい部分をしっかり継承し、逆によくなかった部分はすべて解消。復活作にして彼らの最高傑作だと思う。WeezerとThe Rentalsの新作が同じタイミングで聴けるというだけでもうれしいのに、どちらも内容が素晴らしくて感無量…。

The Rentals - "Damaris"




A Minor Forest / Inindependence (1998)
★★★★★


サンフランシスコを拠点とするマスロック/ポストロック・バンドの2nd。96年の1st『Flemish Altruism (Constituent Parts 1993-1996)』は、静と動を行き来する絶叫混じりのハードコア・サウンドに、Slintを彷彿とさせるギターのハーモニクスが超かっこいい作品だったけど、本作では絶叫ボーカルがほとんどない代わりにピアノがフィーチャーされた曲があったりと、美しさが増強。攻撃性と叙情性、相反する要素のコントラストがたまらない。

A Minor Forest - "Erik's Budding Romance"




OGRE YOU ASSHOLE / ペーパークラフト (2014)
★★★★★


OGRE YOU ASSHOLEの音楽は非常にポップだと思う反面、実験精神に溢れた崇高な音楽という、聴いていてとても不思議な気持ちになる。「ムダがないって素晴らしい」という曲名の通り、無駄な音をそぎ落とし、ミニマルな展開の中でドラム(あるいはパーカッション)やベースを軸に徐々にうねりを見せていく演奏。そこに厭世的・諦念的な歌詞が乗ることで、聴いているうちに非日常的な世界が広がっていくような、サイケ度の高い作品。前作『100年後』とも前々作『Homely』ともまた違う魅力があると思う。初回限定特典のカセットテープに収録された2曲もフリーキーに暴れ回っていてとても良い。

OGRE YOU ASSHOLE - "ムダがないって素晴らしい"




Madonna / Confessions On A Dance Floor (2005)
★★★★★


先月の「初聴きディスクレポート」にて低評価だった2000年作『Music』と2003年作『American Life』。低評価の理由は単純に「キラーチューンがない」ということで、今回は事前に「Hung Up」というキラーチューンを知っていたのでかなり期待していた。でも、そんな期待を遥かに越えるほどに徹頭徹尾、キラーチューンの連続。全曲ダンスミュージック、全曲ノンストップ、フィルター使いによる「アゲ」と「サゲ」のわかりやすさを見ても、完全にダンスフロアを意識していることがひしひしと伝わってくる。

Madonna - "Hung Up"




Royal Blood / Royal Blood (2014)
★★★★★


当ブログの「Sound of 2014」にも選出していた新人バンドのデビュー作。ドラムとベースのデュオというミニマルな編成ながら、そのパワフルな演奏からはLed Zeppelin、Jack White、Audioslaveといったハードロック/ロックンロール/へヴィロックの遺伝子が感じられる。各曲のクオリティにばらつきがない辺りも素晴らしいけど、短めに設定された曲間や曲順の流れもとても良かった。

Royal Blood - "Come On Over"




Run the Jewels / Run the Jewels 2 (2014)
★★★★☆
rtj2.png

El-PとKiller Mikeによるヒップホップ・ユニットの2ndアルバム。1stは未聴ながら、これはかなりかっこいい。重低音を効かせたぶっといビートに、Killer Mikeのキレのあるラップ。Death Gripsなき今、最もエクストリームかつエキサイティングなヒップホップ・ユニットは彼らだろう。Rage Against The MachineのZack de la Rochaが客演した「Close Your Eyes (And Count to Fuck)」は聴いててゾクゾクきた。

※下記公式サイトからフリーDLも可能
http://www.runthejewels.net/



Flying Lotus / You're Dead! (2014)
★★★★☆


Miles Davis『Bitches Brew』とSquarepusher『Hard Normal Daddy』を想起させる、ジャズに大きく振り切れた作品。でもどんなに新しいことをやっても、特徴的な「意図的にずらしたビート」やKendrick Lamar、Captain Murphy(…って、自分でしょ?)らをフィーチャーしたラップが乗る高密度なサウンドは、どこをどう切ってもFlying Lotusらしさがある。イラストレーター・駕籠真太郎が手掛けた、「死」をテーマにしたアートワークも、スピリチュアルでカオティックな音にマッチしている。



Esben and the Witch / A New Nature (2014)
★★★★☆


先行リリースされていたスプリット盤収録の「No Dog」は最高の出来だったし、アルバムをスティーヴ・アルビニがプロデュースということで、2014年下半期で最も期待していたアルバムだったんだけど、結果的には期待したほどではなかった。これまで彼らのサウンドを覆っていたリヴァーブは完全に取り払われ、ゴリゴリにハードコア化した点については高く評価。ただ、いまいち全体の音のミックスバランスが悪いし、ギターもベースも凶暴に歪んでいるだけで「重さ」が感じられない。アルビニにより再録された「No Dog」もどこか貧弱で、断然スプリット盤ver.の方が音に深みや鋭利さが感じられて良かった。

とはいえ、期待値が高すぎたことによる肩透かし感を抜きに判断すれば、今年最強のハードコア・アルバムと呼べると思う。レイチェルの歌声もPJ HarveyのポーリーやPortisheadのベスを彷彿させる情念系の歌唱に進化していて、まるでその二者とGodspeed You! Black Emperorがセッションしているかのようだ。



The Juan MacLean / In A Dream (2014)
★★★★☆


John MacLeanと、LCD Soundsystemのメンバーとしても活躍していたNancy Whangを中心とするDFA所属のユニット。今回はアートワークにNancyをフィーチャーしていることからもわかるように、彼女の存在感が大きなものになっている。洗練されたアーバンなダンス・トラックの数々は、7月のAlbum of the Monthにも選出したLa Rouxの最新作『Trouble In Paradise』にも通じるクールさがあった。



U2 / Joshua Tree (1987)
★★★★☆


例の「U2って誰だよ」騒動からおよそ1ヶ月、僕にとって初めて聴くU2のオリジナル・アルバムとなったその『Songs of Innocence』は、気付けばお気に入りのアルバムとなっていた。そんなわけで、これまでベスト盤しか聴いたことのない程度だった僕は彼らに興味を抱き、多くの人が最高傑作として挙げている本作を手に取った。

プロデューサーとしてブライアン・イーノが参加しているだけあって、心地よいアンビエントなシンセや、ジ・エッジ(※戦場カメラマンじゃない方)によるあのディレイの効いたギターカッティングなど、随所にColdplayの『Viva La Vida or Death & All His Friends』との類似点が感じられ、彼らがU2から受けた影響の大きさを今さらながら知ることができた。

ただ、主にドラムにおいて音圧を極限まで抑えてあるようにも感じられた。これには賛否両論あるのだろうけど、個人的には壮大なサウンドなはずなのに音圧が弱いのが物足りなく感じた。そこはイーノの意図があって、と言われれば確かにそうなのだろうけど…。



大滝詠一 / EACH TIME (1984)
★★★★☆


やはりこの人の作るサウンド、メロディー、歌詞、声が好きです。懐かしくも瑞々しい、センチメンタルになれる音楽。



may.e / スパンコール (2014)
★★★★☆
mayeスパンコール

彼女のBandcampにて200DL限定フリーでリリースされるも、数時間で上限に達してしまった6曲入りデモアルバム。現在はフィジカル盤と、有料配信で販売中。散文詩的に綴られる言葉によって、淡い水彩画のようにぼんやりと情景が浮かんでゆくフォークソング集。以前より若干キーが上がり、かつての気怠くアシッディなムードが薄れたのは少し寂しい気もするけど、その代わり相変わらずの透き通るような美声には爽やかさが増している。



Fugazi / Repeater + 3 Songs (1990)
★★★★☆


米ワシントン出身のポスト・ハードコアバンドのデビューアルバム。初めて知ったけどこの不思議なバンド名の由来は「Fucked Up, Got Ambushed, Zipped In」の頭文字らしい。2001年リリースのラスト作『The Argument』しか持っていなかったけど、久々に聴いたら「Epic Problem」がかっこよすぎて再ブーム到来。デビュー作ということもあって初期衝動に満ちたサウンドは生々しさがあってかっこいい。こちらもU2と同様、もう少し音圧が欲しかったと思う一方で、この音だからこそ感じられる「作り込まれていない感」も魅力的。



David Bowie / "Heroes" (1977)
★★★☆☆


先日NME誌がThurston Moore、St Vincent、Johnny Marr、Wild Beastsらの意見も取り入れて発表した、「ボウイのベスト・ソングTOP40」でも1位に選出された「"Heroes"」を含むアルバム。表題曲はもちろん素晴らしい。ただ、B面にあたる部分は同年リリースの前作『Low』と同様の、インストが数曲続くという構成自体がどうも好きになれない(そこが本作の魅力だという意見もあるのだろうけど)。というか、A面とB面でガラッと雰囲気が変わる構成が単純に好きではないので…。ただ、それらのインスト曲の後にラストを飾る「The Secret Life of Arabia」がめちゃくちゃかっこよかった。



神聖かまってちゃん / 英雄syndrome (2014)
★★☆☆☆


インタビューを読む限り今回は「打ち込みを入れたかった」らしいけど、そこまでガッツリ取り入れてはいない。そんな中でも、最も打ち込みが効果的に使われている「ロボットノ夜」「彼女は太陽のエンジェル」の2曲が抜群に良くて、他の曲もこのレベルのクオリティだったら間違いなく素晴らしいアルバムになっていたと思うけど…。残念ながらこの2曲が良すぎるせいもあり、他の曲との差が目立ってしまったように思える。打ち込みの導入を意識していたのなら、シングルのB面として発表されている「源氏蛍」や「僕のHIPHOP」を収録していれば印象もまた違ったはず。

以前と比べると荒削りな部分や少年性は減退しているけど、僕はこれを特に気にしていないし、当然の変化だと思う。弾き語りから始まり終盤に向けてノイズインプロ的な展開を見せる「おかえり」など、打ち込みと同様に新機軸を見せようとしているけど、メンバーにノイズインプロ的なセンスがないためか中途半端に思える。「やりたいこと」と「やれること」のバランスにズレがあって、場合によってはそれが絶妙な「ぶっ壊れ感」の魅力ともなり得るけど、かまってちゃんの場合はそうなっていない。これは別に演奏テクニックのことではなく(そもそも自分は彼らにそれを求めていない)、演奏センスの話。MONOのピアノはよく言えば特徴的、悪く言えば手癖が付いてしまってマンネリ気味。もっといろんな音色でいろんなフレーズを弾いてほしいと思う。の子以外のパートでグッときたところは「背伸び」におけるみさこのドラムロールの部分くらいだった(短すぎるけど)。ほとんどの曲でアウトロを延々と繰り返してフェイドアウトで終わるところも、アレンジ力の無さが露呈しているように思った。歌詞にしても引っかかるワードがこれまでよりも少なく、言葉数が以前よりも減ったせいで一音を長く伸ばす歌い方が増えているのがて、の子の作詞もスランプ気味か?と気になった。

前作『楽しいね』では大きな進歩が見られただけに、今回は少し後退しているようにも感じられて残念だった。




▼次月予告(音源入手済だけどまだ聴けていないもの)

Rustie / Green Language (2014)
Iceage / Plowing Into The Fields of Love (2014)
The Wytches / Annabel Dream Reader (2014)
Les Sins / Michael (2014)
Ok Go /Hungry Ghosts (2014)
YUKI / FLY (2014)
One Direction / Midnight Memories (2013)
Katy Perry / Prism (2013)
Arctic Monkeys / AM (2013)
Fugazi / End Hits (1998)
暗黒大陸じゃがたら / 南蛮渡来 (1982)
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