初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.65(2014年11月)

2014年11月に初聴きした音源の感想まとめです。そろそろ年間ベストアルバムの声がちらほらと聞こえてきましたね。僕もだんだんと意識して、今年中に聴きたいアルバムをポチポチし始めました。

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★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリースではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス
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では11月のALBUM OF THE MONTHからいきます。


■ALBUM OF THE MONTH■
Les Sins / Michael (2014)
★★★★★
Les Sins Michael

かつてはチルウェイヴの文脈で語られ、Washed Out、Memory Tapes、Neon Indianとともに「チルウェイヴ四天王」とも呼ばれたToro Y MoiことChaz Bundick。自分もかつてチルウェイヴにハマったリスナーの一人だけど、その中でToro Y Moiだけはあまり好きではなかった。ファンク、AOR、ニューエイジといった、なんとなく泥臭くて懐古趣味なイメージがあり、『Underneath the Pine』(2011年)のキモイアートワークのせいもあってずっと苦手意識があった。

しかしそれも、2012年のHostess Club Weekenderで観たライブや2013年作『Anything in Return』によって徐々に薄まっていったが、そんな中リリースされた彼のダンス・プロジェクトLes Sins名義による本作は、何とも多彩なエッセンスが詰まった洒脱なダンス・アルバムになっていて、僕の苦手意識も完全に吹き飛んでしまった。彼がこれまでに吸収してきたであろう過去のさまざまな音楽を自己流に解体・再構築し肉体的なファンクネスを注ぎ込んだ、完全フロア仕様のアルバムとなっている。

そんなわけで、本作で鳴っているサウンドは新しくもどこか懐かしい。「Sticky」なんて、まるで小学生の頃に父からもらった古いカセットテープ(ラジオを録音する用に、不要なものをもらっていた)に入っていたブラコン(死語)、AOR、フュージョンなんかのようだ。終盤のハイライト「Call」と「Drop」にしても、兄が高校生の時にハマっていたせいで毎日のように聴かされていたジャングルやハードコア・テクノみたいな音がサンプリングされていたりと、僕の音楽の原体験とも言えるサウンドが見え隠れしている点にも惹かれた。そして「過去の音楽」を参照しつつ、しっかりと現行のトレンドに沿った音にアップデートされているところがまた素晴らしい。音に反してユルすぎるジャケも最高。

Les Sins - "Call"




Katy Perry / Prism [Deluxe Edition] (2013)
★★★★★


すでにヒットしているシングル5曲が立て続けに収録された前半こそ新鮮味が薄かったものの、中盤以降のシングル以外の曲でもクオリティが全く落ちないところが素晴らしい。もちろんDr. Luke、Max Martin、Greg Kurstinといった売れっ子プロデューサーの手腕によるところも大きいのだろうけど、共作含め全曲の作曲を手掛けているケイティのソングライティング能力も相当なものだと思う。しかも3、4つのコードしか使わず、Aメロもサビも同じコード進行のシンプルな曲がほとんど。にもかかわらず、サビでしっかりと盛り上げ、かつ印象的なフレーズを挿みこむことができるのは、ソングライティングの妙と、彼女の歌の表現力の高さによるものだろう。

Katy Perry - "Unconditionally"




NATURE DANGER GANG / The Best of NDG + α
(2014)

★★★★★
Nature Danger Gang_Best of NDG

すでに3回ライブを観ているけど、毎回新しい驚きと感動と興奮を与えてくれるNDG。でも、彼らの魅力はそのカオティックなライブパフォーマンスのみにあらず。ジューク/フットワーク、トラップ、ドラムンベース、ゲットー・ベース、ハードコア・テクノなどゴッタ煮&高速回転させたサウンドは、興奮剤としても機能するし、普通に「音楽」としてリスニングするにも十分なクオリティ。本作は昨年末にCDでリリースされたアルバムに新曲2曲を加え、HMV限定でアナログ化されたものだけど、家でも彼らの音楽が楽しめるというのは純粋にうれしい。ただでさえライブで一度聴いただけで覚えてしまうようなキャッチーなフック満載の曲ばかりなのに、自宅のオーディオやポータブルプレイヤーで聴くと、途端にあのフレーズたちが脳内をぐるぐるし始める。この中毒性の高さ、かなり危険(DANGER)。

NATURE DANGER GANG - "くノ一Bomber!"




きのこ帝国 / フェイクワールドワンダーランド (2014)
★★★★☆


ミニアルバム『渦になる』と1stフルアルバム『eureka』は、ともにこのブログで一つ星の低評価だった。しかしまず本作収録曲「クロノスタシス」を聴いて「おっ!?」となり、そしてこのアルバムを聴いて、このバンドに対する認識が完全に変わった。

これまでは、凛とした魅力を放つボーカルの佐藤+ごく普通のメンバー3人という印象が強かったのだけど、本作ではギターもベースもドラムも「歌っている」。それは「クロノスタシス」一曲を聴いてもわかるほどにドラスティックな変化を見せている。ディストーションと音圧に頼るのではなく叙情性に重きを置いていることは、とりわけミディアムテンポな曲群に顕著である。今回新たに「軽さ・明るさ」のようなものが加わったことで、普通の「オルタナ・ギターロックバンド」から頭ひとつ抜きん出たように思う。「クロノスタシス」の他、エモーショナルな中に「ぱっぱっぱ」コーラスで軽さを添えた「東京」、YUIにも通じる真っ直ぐな歌声が心に響く「疾走」、爽快で力強い歌声がアラサー世代的には初期LINDBERGっぽさを感じさせる「Telepathy / Overdrive」が特にお気に入り。



Andy Stott / Faith In Strangers (2014)
★★★★☆


2012年の前作『Luxury Problems』は海外の音楽メディアからも高い評価を受け、Twitterのフォロワーさん周りでも年間ベストに挙げる人が多かったものの、自分にはいまいちピンと来なかった。本作ではアリソン・スキッドモアという女性ボーカルを大々的にフィーチャーしたことによって、よりメロディアスでキャッチーになった印象を受ける。

また、ビートレスな部分も多いものの、ビートの効いた部分とのコントラストを強調することによって緩急が生まれ、それがアルバムとして一層面白いものにしている。ビート自体はインダストリアル・テクノからの影響が感じられるが、ビートレスな楽曲、あるいは楽曲のビートのないパートに関しては完全にアンビエントで、冷淡なシンセがミニマルに展開されるさまはAphex Twinの『Selected Ambient Works Volume 2』からの影響を感じずにはいられない。特に幽玄で美しくミニマルな表題曲は、Aphex Twinの新曲と言われても結構信じてしまったかもしれない。

一つ残念なのは、本作の中で最もノイジーでアグレッシヴな曲「Damage」が浮いてしまっていること。完成した曲をスピーカーから流し、それを外部録音したような音質になっているせいもあるとは思うけど、この曲はない方が作品としてキレイにまとまっていたと思う。



Ride / Going Blank Again (1992)
★★★★☆


Rideは1st『Nowhere』しか持っておらず、他のアルバムはジャケがイマイチすぎてこれまで聴く気にならなかった。先日再結成を発表したことを受けて、中でも最もジャケがひどいと思っているこの2ndを聴いてみた。

シューゲイズ要素を前作よりもさらに押し進めつつもメロディアスさはそのままに、そして手数の多いドラミングも健在。オープニングを飾る8分超えの「Leave Them All Behind」をはじめ長尺曲が増え、サイケデリックな展開も加わっている。後続のシューゲイザーバンドの多くはマイブラの『Loveless』よりも実は本作をフォーミュラ化しているのでは?と思うほど、シューゲイザー作品として完成されている感がある。



Iceage / Plowing Into the Field of Love (2014)
★★★★☆


前作で顕著だった「ハードコア」と「メロディック」な要素を失うことなく、大胆な変化を見せた意欲作。カントリーやトラッド風な要素がありつつも、エリアスの粗野なボーカルやパンキッシュな演奏から、個人的にはThe Poguesを思い出させたりもした。最もポップな「The Lord's Favorite」はThe Libertines(というかピート・ドハーティ)の影もちらつく爽快でやんちゃなギターポップ。



Fugazi / End Hits (1998)
★★★★☆


先月聴いたファースト『Repeater』は荒削りなハードコア・パンクといった趣だったけど、本作では音はより凶暴になりつつも各パートのフレーズに知性が感じられる。ブレることなくハードコアだけど、ここではポップ感もあり複雑な展開もありで、『Repeater』と比べても別バンドに思えるくらいに進化している。



Rustie / Green Language (2014)
★★★★☆


盛り上がりそうでなかなか盛り上がらないオープニング2曲に「?」と思いつつ、その後は必殺曲「Raptor」など縦横無尽に炸裂するビートやシンセ音がやたらかっこいい。前作『Glass Swords』は素人っぽいミックスや音色選びが気になってあまり惹かれなかったけど、こちらはそれらが解消されていて良かった。



TM NETWORK / QUIT 30 (2014)
★★★★☆


今年でデビュー30周年を迎えた彼らの、『QUIT 30』という何とも意味深なタイトル…。それはともかく、7年ぶりとなるオリジナルアルバムは再始動後に彼らが取り組んできたプログレやトランスをうまく取り入れた、第二期TMの集大成的な作品になったと思う。にしても音がとても良くて、最初の10秒だけで彼らの音質に対するこだわりを感じられる。



暗黒大陸じゃがたら / 南蛮渡来 (1982)
★★★★☆


これは、完全に『Remain in Light』期のTalking Heads。アフロビートとポストパンクとファンクが混然一体となり、そこに江戸アケミの初期衝動の塊としか思えない歌が加わって、日本はもちろん世界にも二つと存在しない唯一無二の音楽を鳴らしている。1982年の日本にこんな音楽が存在したこと自体に驚きと感動を覚えた。



The Ting Tings / Super Critical (2014)
★★★★☆


前作は商業的には振るわなかったものの個人的には好きなアルバムで、時代錯誤的なことを敢えて取り入れながら自分たち流にアレンジするのが上手いバンドだなと思った。今回は彼らにしては珍しく時代の流れに乗った70's~80'sディスコ・ソウル路線で、ダンサブルではあるけど煌びやかではない、クールかつアンニュイなムードは、La RouxやThe Juan Macleanの近作にも通じるものがある。



Ok Go / Hungry Ghosts (2014)
★★★☆☆


トリックアートの手法を駆使した「The Writing's on the Wall」や総勢2,400人が出演した「I Won't Let You Down」のミュージックビデオにばかり話題が行きがちだけど、まずこの2曲は楽曲がとても素晴らしい。他は前作でも見られたプリンス趣味のファンク色の強い曲が多く中盤やや中だるみもするものの、随所でキャッチーでアップリフティングな楽曲が差し込まれている。プロデューサーであるデイヴ・フリッドマンもまたまた良い仕事をしていて、相変わらずドラムサウンドが素晴らしい。次はぜひ本作屈指の名曲「The One Moment」をシングルカットして、さらに最高なミュージックビデオを制作してほしいところ。



The Wytches / Annabel Dream Reader (2014)
★★★☆☆


当ブログの「SOUND OF 2014」でもピックアップしていた、英ブライトンのガレージ・サイケ・トリオ。The Crampsばりのファズギター(そういえば記事にアップしたアー写でもThe CrampsのTシャツを着ていた)に絶叫ダミ声ボーカル、そしてアートワークなどからも猥雑性とオカルト的な要素が感じられて良い。ただ、シングルの頃は個性が光っていたけど、アルバム通して聴くと個々の楽曲の印象が弱く感じる。幼稚園生が作った粘土細工みたいなジャケもイマイチ。



Echosmith / Talking Dreams (2013)
★★★☆☆


現在アメリカを中心にシングル「Cool Kids」で大ブレイク中の4人きょうだいバンド。制作時は全員がティーンエイジャーで、主にSmiths、Joy Division、New Order、Fleetwood Macなどから影響を受けたようだけど、確かにUKのポストパンクやニューウェーヴと、彼らの生まれ育ったUSのオルタナやフォークやカントリーとが程よくミックスされたサウンドになっている。ブレイクを受けて今後どのように進化していくのかとても楽しみ。



One Direction / Midnight Memories
[Ultimate Edition] (2013)

★★★☆☆


現在最も成功を収めているボーイズ・アイドル・グループと言える1D。先日4枚目のアルバムをリリースしたばかりで、こちらはその前作にあたる。「これぞアイドル・ポップ」なキャッチーな曲がずらりと並べられ、80年代のオマージュが感じられるちょいダサな「Midnight Memories」も含めて、一聴しただけで口づさめるようなキャッチーな楽曲ばかり。どの曲も3分程度でコンパクトにまとまっている点も良い。ロックやエレクトロポップ路線の曲よりもカントリー/フォーク色の強い曲の方が深みがあって好きだけど、その代表とも言える「Story of My Life」はかねてからとても好きな曲。ただこの曲は2曲目ではなく、もっと後半に配置すべきだったと思う。



Charisma.com / アイ アイ シンドローム (2013)
★★☆☆☆


「現役OLラップデュオ」として昨年デビューした彼女たちの1stミニアルバム。今年リリースされた1stフルアルバム『DIStopping』はこのブログでもALBUM OF THE MONTHに選ばれたけど、そちらと本作では楽曲のクオリティがまるで違う。MCいつかのラップスキルに関してはこの頃から完成されてはいるものの、キャッチーでメロディーもフックもビートもしっかりしていた『DIStopping』に対して、このミニアルバムはまだそれらが備わっていないように感じた。



YUKI / FLY (2014)
★★☆☆☆


give me walletsが楽曲提供したダンサブルなシングル「誰でもロンリー」をはじめとして、前半はグルーヴィーで粒揃いなポップチューンが並ぶ。ただ、全16曲・トータル67分という大ヴォリュームに加え、終盤は「締め」モードな曲が何曲も並ぶので「なかなか終わらないなあ」という気分になってくる。もちろん「STARMANN」などそれらの中にもいい曲があるのに、全体の長さのせいでそう思えてしまいもったいない。



▼次月予告(まだ聴けていないもの)
Taylor Swift / 1989 [Deluxe Edition] (2014)
坂本慎太郎 / ナマで踊ろう (2014)
5 Seconds of Summer / 5 Seconds of Summer (2014)
Arctic Monkeys / AM (2013)
青葉市子 / 0 (2013)
andymori / ファンファーレと熱狂 (2010)
U2 / No Line on the Horizon (2009)
Madonna / Hard Candy (2008)
YUKI / PRISMIC (2002)
V.A. / Wild Style Original Soundtrack (1994)
Scritti Politti / Cupid & Psyche 85 (1985)
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