初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.69(2015年3月)

2015年3月に初聴きした音源の感想まとめ。最近の中ではわりと新譜多めでした。



★★★★★ 年間ベストアルバム20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリースではない場合、旧譜のみから選ぶ年間ベストアルバムの20位以内クラス




3月のALBUM OF THE MONTHはこちらの作品でした。


■ALBUM OF THE MONTH■
may.e+丘 / see you soon "session for us" (2015)
★★★★★
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シンガーソングライターmay.eを中心とした特別編成カルテットによる初音源集。デジタルダウンロードと限定カセットテープで販売されており、カセットテープの方を購入。カセットにはダウンロードコードが封入されていたけど、実はまだデジタルでは一度も聴いていない。なぜならあまりにカセットで聴くに相応しい音源だと思うから。

自分はアナログレコードよりもCDの方が好きだし、出来るだけノイズの少ないクリアな音質で音楽を聴きたい派。でもこの作品だけは別。正直、録音物としては音は悪い。マイク一本で一発録りしたのか、音はこもりがちでガサガサとしたノイズも入っている。さらにカセットテープ特有の「サー」というノイズ、そしてデッキで再生したときの「ウィーン」という機械音──これらの録音によるもの・メディアによるもの・再生機器によるものという、それぞれ異なるノイズが楽曲と溶け合い、全部含めて一つの音楽作品として完成されているように思える。グロッケンシュピールの高音は少し割れ気味で、どことなくThe Velvet Undergroundの「Sunday Morning」にも近い感触。まるで60年代に録音された、古ぼけたカセットを聴いているような気分にさせてくれる。

may.e+丘 - "地味な色 Sober Color"




Vessels / Dilate (2015)
★★★★★


Spincoasterの方でも紹介した、UKリーズ出身の5人組バンド。バンドといっても音楽的にはミニマルテクノに近く、反復を繰り返しながら徐々に熱を帯びていく構成はCaribouに近いものを感じる。また、生楽器ならではの柔らかな音が細かくビートを刻む中で、幾重にも重なっていくアンビエントなシンセのレイヤードがなんともかっこいい。こういうバンドは間違いなくライブが最高だと思うのでぜひ一度観てみたい。

Vessels - "Elliptic"




Purity Ring / Another Eternity (2015)
★★★★★


2012年のファースト『Shrines』は、それぞれの楽曲のクオリティは非常に高かったことが逆に災いし、頭ひとつ飛び抜けた曲がないという印象だった。同じようなテンポ、同じようなビートの曲が続くせいでもあったと思う。しかしこのセカンドはまずソングライティング力が格段に上がっていて、各曲の個性も際立っている。メロディアスなのは前作から変わらないが、それだけに留まらず今回はキャッチーな歌い回し(フレーズ)だったり刺激的なシンセの音色がふんだんに使われている。

アルバムの前半は『Shrines』を踏襲した美しいナンバーが続くが、特に素晴らしいのは5曲目「Stranger Than Earth」以降。ダークなメロディとレイヴィーかつハードなシンセの音の割合が増加し、ビートもより強力なものになっていく。曲順含めて素晴らしい一枚。

Purity Ring - "Begin Again"




Future Brown / Future Brown (2015)
★★★★★


男女4人組プロデューサー・ユニット。ビートのみならずトラック全体が尖っていて、とにかく「2015年型のかっこいいビート・ミュージック」が詰まっている。「ニホンゴ、デキマスカ?ワタシノナマエハ、マルカデス」という日本語も飛び出す、「さくらさくら」を彷彿させるオリエンタルなメロディが印象的な「Vernáculo feat. Maluca」など、全体的に無国籍感・ゴッタ煮感があるのも面白い。

Future Brown - "Vernáculo feat. Maluca"




The Cure / 4:13 Dream (2008)
★★★★★


約2年にわたって行ってきたThe Cureのオリジナル作品コンプリート作戦が、目下最新作である本作でついに完結。この2年間でオリジナルアルバム13作品と、コンピレーションアルバム「Japanese Whispers」「Boys Don't Cry」を聴くことができたけど、90年代後半以降の作品は比較的冗長だったりとっ散らかっている印象が強く、それはそれでいいところでもあり悪いところでもあった。

メンバーも年を重ね、キャリアを重ね、サウンド的に円熟味を増したりするのは当然のことで、本作もそういった音になっているのかと思いきや全く逆で驚かされた。ほぼ全曲ミドル~アップテンポでスロウな曲はなく、かつコンパクトでストレートなロック・サウンド。まるでこの時代にデビューした若手バンドのような瑞々しさがある。

The Cure - "The Only One"




Björk / Vulnicura (2015)
★★★★☆


ビョークのアルバムとしては個人的に2004年の『Medúlla』以来の傑作だと思う。曲の印象というかメロディとビートの印象が薄かった前2作と比べるとかなりメロディアスで、ビョークの歌とビートとストリングスを中心に構築された1曲目「Stonemilker」は大傑作『Homogenic』の頃を彷彿させる(「エンモ~~ショナ~ア~ル」という節回しにも既聴感…これは「Jóga」のセルフ・オマージュだろうか?)。本作は今をときめくArcaとThe Haxan Cloakによるプロデュースということで、先鋭的になり過ぎるあまりメロディが弱くなるのではと密かに危惧していたのだけど、全くの心配無用。プロデューサー陣も激しく自己主張しまくるのではなくビョークに寄っていった感じでいい仕事をしている。



Sherwood & Pinch / Late Night Endless (2015)
★★★★☆


ダブ界の重鎮とも言うべきエイドリアン・シャーウッドと、ブリストル・ダブステップの旗手ピンチのよるユニット。2013年のエレクトラグライドで彼らのドープな重低音ダブ・サウンドにやられて以来ずっと本作のリリースを待っていたのだけど、両者の魅力を余すところなく融合させた見事なコラボ作品だと思う。「重いのに軽いサウンド」という点で、Holger Czukay, Jaki Liebzeit, Jah Wobbleの1982年作『Full Circle』を思い出させた。

惜しむらくは、おそらく実際は鳴っているであろうサブベースが普通のサウンドシステムでは可聴領域を超えているところ。これはやはりライブの現場で、最高のサウンドシステムで体験したい。



KRS-One / I Got Next (1997)
★★★★☆


97年のリリース当時にハマって、生まれて初めて「ヒップホップってかっこいいな」と思わせてくれた「Step Into a World (Raptures Delight)」収録。この曲はBlondieの名曲「Rapture」をサンプリングしており、そのネタだけでも最高なのだけど、それに加えてビートもラップのフローもかっこいい。本作はインタールードのせいでやたらと曲数が多いものの全体的な長さは約50分とそれほどでもなく、「Step~」以外の曲もハードコアかつキャッチーで聴きやすい。終盤には突然グランジ風な「Just to Prove a Point」があって驚かされたが、ヒップホップ畑の人が無理にヘヴィロックやってみました的な付け焼刃感はなく、むしろロック目線で見ても十分なクオリティ。



Ultraísta / Ultraísta (2012)
★★★★☆


Radioheadの長年のプロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチの在籍するバンド。しかしRadioheadっぽさはそれほど感じられなく、ボーカルが女性であることやシンセの音が華やかなこともあって非常にポップで、RadioheadというよりはStereolabに近い印象。このバンドにはこれまでさほど興味を持っていなくて、特に期待もせず、ただ安かったので買ってみただけだったけど想像以上に良かった。この作品以来音沙汰がない彼らだが、次のアルバムを楽しみにしたい。



Kendrick Lamar / good kid, m.A.A.d city (2012)
★★★★☆


先日ニューアルバム『To Pimp a Butterfly』がリリースされ、全米・全英ともに1位を獲得したばかり。が、別にそれに乗っかったわけではない。リリース当時は全く心に刺さらなかった本作をふとしたことからあらためて聴きたくなり、たまたま借りたタイミングで新作が思いがけずリリースされたので正直驚いた。

当時MTVでかかりまくっていた「Swimming Pools (Drank)」はさすがに耳タコ状態であるものの、うねるベースラインがかっこいい「Good Kid」、攻撃的な「Backseat Freestyle」、哀愁漂う「The Art of Peer Pressure」など聴きどころ満載。この勢いで新作もほとんど試聴せずに買ってしまったほど。



QUEEN / News of the World (1977)
★★★★☆


去年のサマソニでベストアクトだったQUEEN。これまで2枚のベスト盤しか聴いたことがなく、オリジナルアルバムを聴きたいと思っていたのだけど、何しろ作品数が多くてどれから聴けばいいのかわからない上にリイシューが何度もされており、中古盤店でもどの盤を買えばいいのかわからないままだった。

そんな中でもジャケが気に入り、そして手頃な値段の中古盤を見つけたので本作から手を付けたのだけど、「We Will Rock You」も「We Are the Champions」も入っている。調べてみたところQUEENの中でも最高傑作に挙げる人が多い作品らしい。今後も他のアルバムを掘り下げていきたい。



Sinitta / The Best of Sinitta (1998)
★★★★☆


ユーロービート黎明期を代表するレーベルPWL、そしてユーロビート黎明期を代表するプロデューサーチームであるストック・エイトキン・ウォーターマンが手掛けたことにより一世を風靡したシンガーのベスト盤。ほとんどの曲は20年近く前に両親に聴かされていたものばかりで初聴きという感じはしないが、今あらためて聴くとあの頃は特に意識していなかったギターのカッティングの音やファンキーなベースライン、ホーンセクションやパーカッションなど非常にかっこいい。



Smashing Pumpkins / Zeitgeist (2007)
★★★★☆


スマパン再結成後の最初のアルバムで、唯一持っていなかったオリジナルアルバム。イハもダーシーもいないし、メタル色が強い印象からずっとスルーしていたのだけど、実際聴いてみるとギターリフやドラムの音などはかなりハードなサウンドに仕上がっているもののラウド一辺倒というわけではなく、従来のスマパンらしい繊細さも十分備わっている。当時聴いていてもあまりハマらなかったかもしれないけど、最近の自分のモードには合っている。

アートワークにおける痛烈なアメリカ批判もビリー・コーガンらしくて良いのだけど、残念なのはその名もズバリな「United States」という曲。とてもかっこいい曲なのに、途中のドラムソロ&ギターインプロ部分はやや冗長だった。それと、いつの間にバンド名に「The」が付かなくなったんだろうか?



Rick Astley / Hold Me In Your Arms (1988)
★★★★☆


こちらもSinittaと同様、ストック・エイトキン・ウォーターマンのプロデュースによる、ユーロビート黎明期を代表する男性シンガー。厳密には初聴きではなく、幼少期によく聴かされていたアルバムので懐かしい。こちらもやはりSinitta同様、あらためて聴くとバックトラックがとてもかっこいい。



シャムキャッツ / AFTER HOURS (2014)
★★★★☆


Pavement直系の脱力系ひねくれポップなイメージを抱いていたのだけど、アップテンポな曲も多く、曲順も交互に緩急つけてくるような感じなのでダレたり尻すぼみになることがないところが良かった。ギターの音がかなり多彩で、曲によってネオアコ風味、パンク風味、ダブ風味と様々なエッセンスを加えているのも良い。



Bobby Brown / Don't Be Cruel (1988)
★★★★☆


ニュージャックスウィング全盛期を代表する名盤。甘い歌声とこのルックスで、当時はとてもイケてる黒人シンガーだったと記憶している。メロウなR&Bナンバーも魅力的。



Sunny Day Real Estate / Diary (1994)
★★★★☆


エモの名盤としてよく知られている作品。そしてなぜかジャケがかわいい。ギターの歪ませ方や乾いたドラムの音などがいかにもこの時代の作品という感じがする。メロディはJimmy Eat WorldやThe Get Up Kidsには劣るものの、個人的に「エモ」と呼ばれるバンドの中でもメロディ以外で最も重要視している「ハイトーンでかすれがちなシャウト」という要素がしっかり備わっている。



Manic Street Preachers / The Holy Bible (1994)
★★★★☆


実はマニックスのオリジナルアルバムをちゃんと聞くのは初めて。初っ端からドラムの音のしょぼさにずっこけたけど、全体的にとてもキャッチーなメロディばかりだし、たまにフレディ・マーキュリーっぽく聞こえるジェームスの声質も好き。そしてリッチーの書いた歌詞も凄まじい。



Duck Sauce / Quack (2014)
★★★☆☆


アーマンド・ヴァン・ヘルデンとA-Trakによるプロジェクト。60's~70'sのソウルやR&Bなどをサンプリングしたファンキーなハウスミュージックはとてもハッピーな気分にさせてくれる。



WU LYF / Go Tell Fire to the Mountain (2011)
★★☆☆☆


当時Hostess Club Weekenderでライブを観たりもしたものの、Vo.エルリーの声に苦手意識があってずっとスルーしていた(今ではこの声はとても好きだが)。彼らのサウンドは神秘的で宗教的で、壮大でありながらも粗野でパンキッシュな一面もあり、そんなところが当時は最大の魅力であり個性だったと思うが、現在ではそういったバンドも増えてきたことで新鮮さが特に感じられないのが残念。

現在はバンドは解散しメンバーはそれぞれLUHやLos Porcosとして活動しているが、それらの楽曲を聴くと、もしWU LYFが解散せずに2015年に新譜を出していたらきっと時代を代表する素晴らしい作品を出していたに違いないと思えてくる。解散が非常に惜しまれるバンド。






【次月予告】※購入済みや予約済みでまだ聴けていないタイトル
The Go! Team / Scene Between (2015)
The Prodigy / Day Is My Enemy (2015)
Kendrick Lamar / To Pimp a Butterfly (2015)
Soko / My Dreams Dictate My Reality (2015)
Tuxedo / Tuxedo (2015)
Sufjan Stevens / Carrie & Lowell (2015)

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