初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.75(2015年9月)

2015年9月に初聴きした音源の感想まとめです。



★★★★★ 年間ベスト20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリースでない場合、旧譜のみの年間ベスト20位以内クラス




9月のALBUM OF THE MONTHはこちら。当然っちゃ当然の結果となりました。


■ALBUM OF THE MONTH■
Beach House / Depression Cherry (2015)
★★★★★
Beach House - Depression Cherry

今年最も楽しみにしていたアルバムと言っても過言ではない、ボルティモアのドリーム・ポップ・デュオによる5作目。以前このブログでやった「2010年代前半ベストアルバム」では前々作『Teen Dream』が1位、前作『Bloom』が6位だったので、期待値が高いのも当然。しかしだからこそ、そう簡単には前作・前々作を超えることはできないだろうという懸念もあった。

今作はサポートによる生ドラムを最小限にとどめ、初期のようにリズム・マシンによるチープなビートを多く採用している。結果、前作のようなスケールの大きなキラキラしたサウンドは控えめになり、こじんまりとした箱庭感が漂っている。どちらかというと、2作目『Devotion』に近い印象を受けた。

しかしM2「Sparks」におけるディストーションやM9「Days of Candy」におけるクワイアの重厚なコーラスなど新機軸とも言うべき試みがなされていて、単に「原点回帰」とか「過去の焼き直し」という感じは全くない。それに加え、Beach House節と言えるメロディーの良さ、そしてヴィクトリアの声の魅力が備わることで、いつも通りの安定した素晴らしさがある。本作も捨て曲なんてないけど、とりわけM1「Levitation」、M3「Space Song」、M9「Days of Candy」が白眉。

過去2作と比べてどうかは、現時点では判断が付かない。前作と比べると一見地味なサウンドながら、すでに何度も聴くたびにジワジワきているので、今後その評価もさらに高まっていくことだろう。

Beach House - "Space Song"




Nero / Between Ⅱ Worlds (2015)
★★★★★


UKのシンフォニックかつドラマティックなダブステップ/エレクトロの3人組による2nd。前作『Welcome Reality』はUKチャート1位を獲得したけど今回はそこまでのヒットには至っていないらしい。

ただ楽曲のクオリティは下がっておらず、SFライクな世界観はそのままに、より大衆向けのサウンドに進化。前作ではSkrillex風のブロステップも取り入れていたけど、本作では四つ打ち曲の割合が増えたほか、深淵さを感じさせる重厚なダブステップを展開。派手な音色は抑え、代わりにアンビエントかつトランシーな音がたくさん散りばめられている。

紅一点Alana Watsonのヴォーカルもさらに色気や妖艶さが増していて、哀愁漂うメロディーセンスもこれまで以上に洗練されていて、個々の楽曲の完成度も非常に高いと思う。

Nero - "Two Minds"




Carly Rae Jepsen / E・MO・TION [Deluxe Edition]
(2015)

★★★★★


カナダのポップ・シンガーによる3作目。Taylor Swift『1989』と同様、80'sエレポップからの影響を感じさせるサウンドで路線転換したのは大成功だと思う。耳にタコができるほど聴いた前作までのヒットシングルは特に好きというわけではなかったけど、本作の曲はどれも耳馴染みのいい美麗なシンセ音とうるさすぎないビートで成り立っていて、Shellback、Ariel Rechtshaid、Rostam Batmanglij(Vampire Weekend)、Dev Hynes、Greg Kurstinといったプロデューサーの並びを見ただけでもそのクオリティは保証されたようなものだし、1曲目の一音目がサックスという時点ですでに最高。

しかしそれを抜きにしても、美麗エレクトロ・ポップ・サウンドとの相性もバッチリでまさにマリアージュとも言うべき彼女のヴォーカルが素晴らしい。「こんなにいい声だったっけ?」と思ってしまうほど、サウンドが歌の魅力を存分に発揮させているように感じた。ところどころハスキーになるところやブレス感、発語の美しさも含め、Natalie Imbrugliaを思い出させた。

Carly Rae Jepsen - "Run Away With Me"




Queen / Sheer Heart Attack (1974)
★★★★☆


「Killer Queen」を収録した3作目。初期のハードロック路線とその後のオペラ路線の転換期とも言える、その両者がガッツリ絡み合った作品。ロマンティシズムとダイナミズムがバランス良く成り立っていて、いよいよこのあと彼らの個性が爆発して『A Night at the Opera』と『A Day at the Races』という名盤の誕生に繋がっていく予感を感じさせる。



SEXWITCH / SEXWITCH (2015)
★★★★☆


Bat for LashesのNatasha KhanがUKの5人組TOY、プロデューサーのDan Careyとともにスタートさせた新プロジェクトによる6曲入りデビュー音源。イランやモロッコ、タイなどの70年代のサイケやフォークのカバー曲集だそうで、そのため全体的に中東っぽい雰囲気が漂っている。

シャーマニックというよりはむしろカルト宗教のヤバい儀式みたいなムードで、ナターシャの呪術的なヴォーカルがとにかく狂気を感じさせる。特に「Kassidat El Hakka」の6:20~ラストは失禁もののヤバさ(怖いよ!)。Bat for LashesにはPortisheadみたいな方向に行っても面白いなーと思っていたけど、「War in Peace」はかなりそれに近いものがあってかっこいい。



Katy B / On a Mission (2011)
★★★★☆


UKのダブステップ/ドラムンベース/UKガラージ系女性シンガーのデビューアルバム。Magnetic ManのBengaやDJ Zincがプロデュースしている。クラブ・ミュージック系の音は流行の遷移スピードが速いので今聴くとやや懐かしい感じもあるものの、Magnetic Man同様に整然とした音の配置や洗練された音色は聴いていて心地よく、90年代のダンス・ミュージックを思わせる。

ケイティの歌声もクセのないR&B系ポップス・シンガーのようでサウンドとの親和性も高い。トランペットやエレピがフィーチャーされたアシッドジャズ風ハウスのM12「Hard to Get」がとてもかっこよかった。ただ、長い無音のあとのシークレット・トラックは減点。



The Libertines / Anthems for Doomed Youth
[Deluxe Edition] (2015)

★★★★☆


11年ぶりとなる3作目。過去2作に関してはリアルタイムで聴いてはいたものの、つい最近までそこまでの思い入れはなかった。でもここ数年で急激に好きになっていて、そんな絶好のタイミングでの新作リリースはただただ嬉しい(彼らの場合、新作がリリースされること自体奇跡のようだし)。

内容的には「落ち着いた感じ」と言えると思う。過去2作のような、ほころびながらも性急に突っ走るあの姿はない。でも何だろう、この泣ける感じは。いっそ本作をラスト・アルバムにしてしまった方がいいんじゃないだろうか。そう思えるほどに、甘くせつなく感傷的な曲が詰まっている。もしかしたら「アッパーでパンキッシュな曲が少ない」という不満の声も多いかもしれない。でも、先行シングル「Gunga Din」を聴いた時点で何となくこの方向性は予測していたし、僕自身この方向性を望んでいたので本作の内容には大満足。

ただ、曲順に関しては不満が残る。M8「Heart of the Matter」とM9「Fury of Chonburi」という、アルバム中でも特にアップテンポな2曲を何で並べてしまったのか…。ここは前半と後半にバラけさせてほしかったところ。



The Who / Tommy (1969)
★★★★☆


イギリスの3大ロック・バンドのひとつThe Whoの4作目で、ロック・オペラのスタイルを築いた作品。全24曲・トータル75分超という、当時としてもかなりの大作。最近マイブームのQueenやELOと同様、こういったコンセプチュアルな内容で大作志向の作品が個人的にアツい。同名の本作のミュージカル映画は未見のため、近日中に鑑賞してから歌詞対訳も併せて読みつつじっくり聴きこみたい。



Damien Rice / O (2002)
★★★★☆


今月の「奥さんのCD」シリーズ。アイルランドのフォーク系シンガーのデビュー作。反捕鯨派のため日本には絶対に来ないアーティストと言われ、かつてフジロックもドタキャンしている。

音楽的にはこれまで漠然とBon Iverっぽいイメージを抱いていたんだけど全然違っていて、もっとポップでメロディアス。哀愁感はあるけど陰鬱ではない。歌もしっかりと歌い上げていて、繊細というよりは力強さを感じる。しかしこれも長い無音のあとにシークレット・トラックがあって減点。



Elliott Smith / XO (1998)
★★★★☆


2003年に亡くなったシンガー・ソングライターのメジャー1作目(通算4作目)。シンプルなアコギ弾き語りのイメージがあったけど、メジャーからのリリースだからかしっかりしたバンドサウンドとホーンセクションなど凝ったアレンジだったので驚いた。メロディアスな楽曲と彼の繊細な歌声が非常にマッチしていて、これからの季節にもぴったり。



OFF & ON / Good Talk Vol.1+2 (2015)
★★★☆☆


ボストンの4人組。本作は2枚のEPの編集盤らしい。ちょっとひねくれた展開と脱力なメロディーの男女混声エレクトロ・ポップ。ドラマーはおらず、ヴォーカル/ギター/キーボードのメンバーがドラム・プログラミングもやっているらしいけど、楽曲の割にビートが単調だったのがやや残念。インディーズなだけにプロダクションが甘いけど、いいプロデューサーが付いてソングライティングがもう少し良くなれば大化けする可能性もあり。



XTC / Skylarking (1986)
★★☆☆☆


先月、1980年リリースの4作目『Black Sea』と同時購入した、UKのニューウェーヴ・バンドによる9作目。彼らの中でも人気の高い作品ということで選んだんだけど、まず「え?一体どうしたの?」というのが率直な感想。XTCというバンドは時代によって音楽性が異なるというのは予備知識として持っていたにしても、まさかここまでとは。

『Black Sea』はFranz FerdinandやThe Futureheadsの祖先という感じのポストパンクな音だったので、今回もそれに近い音を想像していたのだけど、本作はアコースティックな音と多彩な楽器を主体としたオーケストラル・ポップ。しかも曲によって曲調も結構バラバラで、王道の80'sポップみたいな曲もある。

でもクレジットを見たらその謎は解けた。本作のプロデューサーは、今年のフジロックでも観客を困惑に陥れたトッド・ラングレン。そうと知ると、本作の内容にも納得できた。さまざまなジャンルを取り入れるトッドのセンスと「ポップスの魔術師」と言われる手腕が如何なく発揮されていて、特に後半はソフト・ロック名盤ばりの輝きがある。



Avril Lavigne / Let Go (2002)
★★☆☆☆


こちらも「奥さんのCD」シリーズ。先日Nickelbackのチャド・クルーガーとの離婚を発表したカナダの女性ロック・シンガーのデビューアルバムで、世界で1,800万枚を売り上げている。シングル群はよく聴いていたけど、アルバムを通して聴くのはこれが初。

アヴリルというと「Girlfriend」「What the Hell」のようなアップテンポなロックのイメージが強かったので、あくまでメインは「Sk8ter Boy」のようなアッパーな曲で、アクセントとして「Complicated」のようなミディアム調の曲があるのかと思っていたけど、バランス的には逆でミディアムな曲が多めだったのが意外。デビューアルバムらしく、もう少し明るくはっちゃけたポップ・パンク曲が欲しかったところ。



【次月予告】※購入済みや予約済みでまだ聴けていないタイトル
Jack Ü / Skrillex and Diplo present Jack Ü (2015)
Editors / In Dream (2015)
Neon Indian / Vega Intl Night School (2015)
Muse / Drones (2015)
MEW / + - (2015)
Tinashe / Aquarius (2014)
NOKIES! / Between The Blinks (2012)
t.A.T.u. / 200 km/h in the Wrong Lane (2002)
The Beta Band / The Three E.P.'s (1998)
Sonic Youth / Washing Machine (1995)
Kylie Minogue / Enjoy Yourself (1989)
松田聖子 / Strawberry Time (1987)
Electric Light Orchestra / Balance of Power (1986)
Eurythmics / Sweet Dreams (Are Made of This) (1983)
Donald Fagen / The Nightfly (1982)
Electric Light Orchestra / Time (1981)
Queen / The Game (1980)
Queen / Jazz (1978)

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