初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.81(2016年3月)

brian-eno-karl-hyde.jpg

2016年3月に初聴きした作品のディスクレポートです。今年リリースの新譜(予約含む)を10枚以上まとめ買いしたけど、まだ手元にないので次回以降ですね。届くのが楽しみです。



★★★★★ 年間ベスト20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 若干気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリースでない場合、旧譜のみの年間ベスト20位以内クラス




3月のALBUM OF THE MONTHは、先日のBeat Recordsポップアップ・ショップにてゲットしたこのコラボ作でした。


■ALBUM OF THE MONTH■
Eno • Hyde / High Life (2014)
★★★★★
Eno Hyde High Life

先日ニューアルバムをリリースしたばかりであるUnderworldのKarl Hydeと、アンビエント・ミュージックのパイオニアであるBrian Enoによるコラボ・プロジェクトの2nd。このプロジェクトの1stアルバムからわずか2ヶ月後にリリースされたことでも話題となった。

もしこのアルバムを2人のコラボと知らずに聴いたとしても、きっと「Brian EnoとUnderworldのハイブリッドのようだ」と思っただろう。ここにはイーノのアンビエント・ミュージックも、彼がプロデュースしたTalking Heads『Remain In Light』のアフロ・ファンクも、Underworldの高揚感溢れるダンス・ビートも、カールの無機質なヴォーカルも、そしてニューウェーヴもソウルもある。まさに2人がこれまでに関わってきた多種多様な音楽の集大成のようなサウンド。踊れる曲もあればチルアウトできる曲もあり、実験精神に満ちた曲もあるが決して難解な作品ではなく、しっかりとメロディがあって非常にポップなところも素晴らしかった。

Eno • Hyde - "DBF"




大森靖子 / TOKYO BLACK HOLE (2016)
★★★★★
大森靖子 TOKYO BLACK HOLE

結婚と出産を経て初のアルバムで、通算4作目(メジャー2作目)。おそらくプライベートは超多忙だったはずなのに、それを感じさせないほどに彼女が今クリエイティヴィティの絶頂期にあることを証明してくれる快作。

インディーズ時代は弾き語りメインの曲とメンヘラ気味な歌詞がアイデンティティだったけど、メジャーデビュー以降は激しくJポップ化。ここで離れた初期ファンもいたかもしれないけど自分としてはこの方向性は大歓迎で、メジャー1stである前作『洗脳』はこのブログでも年間ベスト・アルバムの5位に選んでいる。

パンクやダブステップやプログレなども飲み込み、「カオティック・ハイパー・ポップ」とでも形容したくなる『洗脳』と比べると本作は非常に「純・Jポップ」。こう書くと没個性的になってしまったようにも思われそうだけどそうではなく、例えば椎名林檎やクラムボンといった、音楽的な素養の高さに定評がありながら典型的な日本のポップ・フォーマットに則ったアーティストを彷彿させるサウンドに仕上がっているし、と同時に今や多様化を極めつつある現行のJポップ・シーンを凝縮したような内容になっている。

またヴォーカルに関して、もともと様々な声を使い分けることが得意だった彼女だけど、本作ではさらに新しいバリエーションも聴くことができる。囁くように歌う表題曲「TOKYO BLACK HOLE」、ソウルフルで艶めかしく、それこそまるで椎名林檎のような「無修正ロマンティック ~延長戦~」(カーネーションの直枝政広とのデュエットだが、椎名林檎「長く短い祭」における浮雲の存在を思い出させた)など、曲のアレンジに最適な歌唱法の選び方も見事だ。

とは言っても、彼女の最大の魅力はアレンジでも歌でもライブ・パフォーマンスでも歌詞でもなく、やはりそのソングライティング・センスだと思っている。至ってオーソドックスなコードを使いながらも、まるでジェットコースターのようにめまぐるしく展開するメロディ。とりわけ先行シングル「マジックミラー」や表題曲は出色の出来で、あらためてソングライターとしての才能の高さを見せつけている。

大森靖子 - "TOKYO BLACK HOLE"




Siouxsie and the Banshees / Kaleidoscope (1980)
[from Classic Album Selection (2016)]
★★★★★
Siouxsie and the Banshees Kaleidoscope

スージー・スー率いるUKゴス/ポスト・パンク・バンドの3作目。The Weekndの「House of Balloons」Cappellaの「U Got 2 Know」(こっちは知ってる人少ないだろうな…笑)でサンプリングされたことでも有名な「Happy House」収録。

ノイジーなギターやスーのパンキッシュなヴォーカルによるオドロオドロしいムードが印象的だった前2作とはガラッとサウンドが変わり、音はスッキリ(というかむしろスカスカ)、メロディはポップに、そしてスーのヴォーカルも妖艶さと美しさを纏まったものに。前作から1年でここまでのドラスティックな変化を見せた要因はギターとドラムが変わったことによるものだろう。

ポップ化してもなおゴシックで呪術的なムードを失うことなく、ヴォーカルもギターもベースもドラムも(さらに本作ではシンセも使われている)表現力が格段に増していて、さらなる名盤である4th『Juju』への布石となっている。

Siouxsie and the Banshees - "Christine"




Laura Nyro / Eli and the Thirteenth Confession
(1968)

[from Original Album Classics (2010)]
★★★★★
Laura Nyro Eli and the Thirteenth Confession

ニューヨークはブロンクス(って、かつて結構な危険地帯だったところですよね)出身の女性SSWによる2作目。かつて60s~70sの女性SSW(Joni MitchellやCarly Simon、Rickie Lee Jones、Linda Ronstadtあたり)にハマってた時期に名前だけ知りつつもスルーしてしまっていたけど、こんなに好みの声と音楽だったとは。

曲はカントリーやソウルの要素を盛り込みつつ、どこか祝祭感に満ちていてとてもキャッチー。歌声は高音から低音までよどみのない優しげな美声で、Carol KingやJoni Mitchellを思い起こさせた。

また、バックカバーのデザインがBeach Houseのアー写の元ネタ(男女の向き合うシルエット)っぽかったり、The 1975「So Far (It's Alright)」のピアノリフの元ネタが「Once It Was Alright Now (Farmer Joe)」だったこともわかって、そういった部分でも楽しめた。

Laura Nyro - "Sweet Blindness"




Is Tropical / Black Anything (2016)
★★★★★
Is Tropical Black Anything

いつの間にかKitsunéを離れ、Axis Mundiというインディーレーベル所属となったロンドン出身バンドの3作目。そしていつの間にか女性メンバーが増え4人組に。「いつの間にか」ばかりなのは、これまでこのバンドをさほど熱心に追っていたわけではなかったから。

2013年の前作『I'm Leaving』は、女性ゲストヴォーカルを加えた脱力ディスコ・ポップのシングル「Dancing Anymore」は好きだったものの、それ以外の曲は凡庸だった。しかし本作では「Dancing~」の女性ヴォーカルが正式加入、しかもほぼメインヴォーカル的な役割を担っている。

それに伴い、彼らの歪なポップ・センスや風変わりなエレクトロ・サウンドのセンスが女性ヴォーカルとの相乗効果により開花。ほどよい脱力感とサイケ感により、ケイト・モスとPrimal Screamによる「Some Velvet Morning」のカバーを彷彿させる出来に仕上がっている。まさか彼らがここにきてこんな快作を届けてくれるとは思ってもいなかったけど、インディーということでCDリリースもなくあまり話題になっていないのがとても残念。

Is Tropical - "Cruise Control"




Paul Simon / Still Crazy After All These Years (1975)
★★★★★
Paul Simon Still Crazy After All These Years

Simon & GarfunkelのPaul Simonのソロ4作目。奥浜レイラさんが某TV番組で「泣ける曲」として表題曲を紹介していたのがきっかけで購入。

この曲は本当に美しくて泣ける曲だと思うし、他の曲も全体的にしっとりとしたアコースティックな楽曲で彼の繊細な歌声にピッタリ。その中で「50 Ways to Leave Your Lover」のようなディスコ曲や「Gone at Last」のような軽快なカントリー(この曲はカントリーの定番「Jackson」っぽい)がアクセントになっているところも良かった。アフロ・ビートな作風の6作目『Graceland』とはまた異なる魅力がある。

Paul Simon - "Still Crazy After All These Years"




FKA twigs / LP1 (2014)
★★★★★
FKA twigs LP1

「今さら」という感じがしなくもないが、リリース当初はあまりピンと来ずスルーしたものの、去年フジロックで観て以来ずっと買おうと思っていたFKA twigsのデビューアルバム。

とっつきにくいイメージがあったけど聴いてみるとポップな歌モノとしても十分に機能しているし、何よりもか細いヴォーカルを幾重にもレイヤーしたコーラスがとても美しかった。ちなみに「EP 1」収録の全4曲が追加された国内盤を購入。このボートラも素晴らしかった。

FKA twigs - "Two Weeks"




Jellyfish / Spilt Milk (1993)
★★★★☆
Jellyfish Spilt Milk

Roger Joseph Manning Jr.が在籍した90年代パワー・ポップ・バンドの2ndにしてラスト作。「パワー・ポップ」に括られがちなので勝手にFountains of Wayneのようなサウンドをイメージしていたけど、いい意味で裏切られた。これは完全にオルタナ世代のQueenでありCheap Trickだ。

ピアノやストリングス、ホーンを用いた華やかなサウンドと重厚なコーラス、そしてギターのビッグなサウンドはまさしくQueenのそれ。でもサウンド・プロダクションは完全に90年代以降のドンシャリの効いたものになっているし、全ての曲が恐ろしいまでにキャッチーで、まさしく「ポップの魔術師」という言葉が相応しい。

Jellyfish - "Joining a Fan Club"




宇多田ヒカル / DEEP RIVER (2002)
★★★★☆
宇多田ヒカル DEEP RIVER

今年「人間活動」から久々の復活を果たす予定の宇多田ヒカル。先日『1998年の宇多田ヒカル』(宇野維正著、新潮新書)という本を読みとても面白かったけど、その影響でこれまでベスト盤と『Distance』しか聴いたことのなかった彼女のアルバムを聴いてみようと思った。

ファンの中でも最高傑作との呼び声が高い本作(3作目)は、全12曲中5曲がシングル曲ということで既知だったが、これらのシングル群と同様にアルバム曲も哀愁メロディが炸裂しており、アルバム通して聴くと非常にコンセプチュアルで内省的な作風に感じられる。ただ、「光」がラストという曲順にどうも違和感を感じてしまったのが唯一の惜しいところ。



David Bowie / Aladdin Sane (1973)
★★★★☆
David Bowie Aladdin Sane

6作目。前作・前々作と同様のバックバンドThe Spiders from Marsによる編成で、いわゆるボウイのグラム期の作品。ストーンズの「Let's Spend the Night Together(夜をぶっとばせ)」のカバーが収録されているけど、全体的にピアノの力強いストロークがフィーチャーされていたりとストーンズっぽさが強い(つまりかっこいい)。



Bauhaus / Burning from the Inside (1983)
[from 5 Albums Box Set (2013)]
★★★★☆
Bauhaus Burning from the Inside

ポスト・パンク・バンドBauhausのBOXセットより4作目。ラスト作ということで、初期作に見られた攻撃性は少し残しつつも非常にポップな作風にシフトしている。特に最終曲「Hope」はタイトルの示す通り、これまでのイメージからすると意外過ぎるほどにポップでメロディアス。パンクでダークなイメージのバンドがラストアルバムの最後にこういう曲を持ってくるというのが何ともニクイ。



The Prodigy / Music for the Jilted Generation (1994)
★★★★☆
The Prodigy Music for the Jilted Generation

1990年結成、昨年リリースのアルバム『The Day Is My Enemy』もパワフルだったUK出身バンドの2nd。デビュー・アルバム『Experience』と比べ格段に音がマッシヴで、ヴォーカルも増えてよりポップになり、全世界で1,000万枚・22ヶ国で初登場1位という大ブレイクを果たした3作目『The Fat of the Land』への布石となっている。

中学の頃、本作収録のシングル「No Good (Start the Dance)」を初めて聴いたのが彼らとの出会いだったけど、やはりこの曲は今なお衝撃的にかっこいいと思う。



BEAK> / BEAK> (2009)
★★★☆☆
BEAK BEAK

PortisheadのGeoff Barrowを中心とするバンドのデビュー・アルバム。クラウトロック的要素あり、ノイズありの、アナログシンセの音が印象的なサウンド。無機質でありながらアナログな質感もあり、全体的にはこの前年にリリースされたPortisheadの『Third』に近い雰囲気。



Lisa Loeb / Firecracker (1997)
★★★☆☆
Lisa Loeb Firecracker

アメリカのSSWによる3作目で、グラミーにもノミネートされている。前作『Tails』よりもさらにメロディアスになり、彼女の美声もとてもマッチしている。



Rustie / EVENIFUDONTBELIEVE (2015 / 2016)
★★★☆☆
Rustie EVENIFUDONTBELIEVE

イギリスのトラック・メイカーによる3作目。昨年末に突如ストリーミングで公開され、今年日本限定でCD化。2nd『Green Language』をさらにハイパー化したサウンドは強烈だけど、いわゆる「焦らし」の部分が多くてアガリそうでアガらない感じがややもどかしい。それにしてもこのジャケ、空に浮かぶアザラシが謎すぎる。



Gwen Stefani / The Sweet Escape (2006)
★★★☆☆
Gwen Stefani The Sweet Escape

先ごろリリースされた10年ぶりのソロ3作目『This Is What the Truth Feels Like』がめでたくソロで初の全米チャート1位を獲得したばかり。その前作にあたるのがこちら。

1st『Love. Angel. Music. Baby.』は80sやエレクトロ・クラッシュなども取り入れた作品でとても好きだったけど、本作はシングルがあまり気に入らず永らくスルー。3作目リリースをきっかけにようやく購入に至ったが、The Neptunes、Nellee Hooper、Akonといった当時の旬なプロデューサー陣の作るサウンドは今の耳で聴くと若干古臭く感じてしまった。



Project:Komakino / The Struggle for Utopia (2009)
★★★☆☆
Project Komakino Struggle for Utopia

イギリスの4人組ポスト・パンク・バンドによる日本独自企画盤。Joy Division直系のサウンドにバリトン・ヴォーカルはとてもかっこいいのだけど、リズム隊がイマイチ。ドラムがあまりに単調すぎる上に、複数の曲で同じようなドラムだったりする点もマイナス。本作以降リリースはなく、現在活動しているのかどうかすら不明だけど、ドラムがかっこよければもっと売れていたはず。



INXS / X (1990)
★★★☆☆
INXS X

The 1975が影響を受けたと語っていたり、「Love Me」がINXSっぽいと指摘されていたのを受けて家にあった奥さん所有のアルバムを聴いてみることに。

これまで数曲聴いたことがある程度だったけど、あらためて聴くと確かにThe 1975に通じるファンク/ニューウェーヴ感、そして軽さ・セクシーさ・力強さ・男臭さのようなものがある。ジャケはダサいようで、一周廻ってなぜかかっこいいようにも見える。







【再購入したもの】
※初聴きではないため★評価なし。感想は割愛。

Siouxsie and the Banshees / Juju (1981)
Siouxsie and the Banshees Juju

2013年下半期 旧譜ベストアルバム20」でも3位に選んだ4作目。まだ彼らのアルバムを全て聴いたわけではないけど、暫定で最高傑作。






【次月予告】※購入済みや予約済みでまだ聴けていないタイトル

The Lumineers / Cleopatra (2016)
M83 / Junk (2016)
PJ Harvey / Hope Six Demolition Project (2016)
Pet Shop Boys / Super (2016)
Katy B / Honey (2016)
Baauer / Aa (2016)
HÆLOS / Full Circle (2016)
Lion Babe / Begin (2016)
Gwen Stefani / This Is What The Truth Feels Like (2016)
Birdy / Beautiful Lies (2016)
Weezer / Weezer (The White Album) (2016)
Savages / Adore Life (2016)
Chelsea Wolfe / Abyss (2015)
David Bowie / The Next Day Extra (2013)
Bauhaus / Singles (2013)
Siouxsie and the Banshees / Nocturne (1983)
Siouxsie and the Banshees / A Kiss in the Dreamhouse (1982)
David Bowie / Scary Monsters (And Super Creeps) (1980)
David Bowie / Lodger (1979)
David Bowie / Heroes (1977) *
David Bowie / Low (1977) *
David Bowie / Station To Station (1976)
The Rolling Stones / Black and Blue (1976)
Laura Nyro / Smile (1976)
David Bowie / Young Americans (1975)
Pink Floyd / Wish You Were Here (1975)
Queen / Queen II (1974)
The Rolling Stones / It's Only Rock 'n' Roll (1974)
David Bowie / Diamond Dogs (ダイアモンドの犬) (1974)
David Bowie / Pin Ups (1973)
Laura Nyro / Gonna Take a Miracle (1970)
Laura Nyro / Christmas and the Beads of Sweat (1970)
Laura Nyro / New York Tendaberry (1969)
Laura Nyro / The First Songs (1967)

* 再購入
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