初聴きディスクレポート

初聴きディスクレポート Vol.90(2016年12月)

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2016年12月に初聴きした作品のディスクレポートです。今年最後なので、年間ベストに間に合うように今年リリースの作品中心に最後の追い込み。おかげで5つ星大量発生です。

さて、2016年もこれにて初聴き納め。年間ベスト考えます。




★★★★★ 年間ベスト20位以内クラス*
★★★★☆ すばらしい
★★★☆☆ 標準レベルの良作
★★☆☆☆ 気になる部分あり・もっと聴きこみ必要
★☆☆☆☆ 期待ハズレ
☆☆☆☆☆ 全然ダメでした

*今年リリースでない場合、旧譜のみの年間ベスト20位以内クラス




12月のALBUM OF THE MONTHは、遺作となったこの作品でした。



■ALBUM OF THE MONTH■
Leonard Cohen / You Want It Darker (2016)
★★★★★
Leonard Cohen You Want It Darker

カナダ出身のSSW・詩人・小説家による14作目にしてラスト作。リリース直後にストリーミング試聴した際、David Bowie『★』やJohnny Cashの生前最後の作品となった『American IV: The Man Comes Around』と同様、「自らの死を受け入れた作品」という印象を受けてゾワッとしたのだけど、まさか本作リリースの2週間後に本当に亡くなってしまうとは。

本作とボウイの『★』との共通点は非常に多い。ボウイは死の象徴として「ブラック」という表現を用い、レナードは「ダーク」を用いた。ともに「死」あるいはそれに対比させる形で「生」をテーマにしており、冒頭はやや尺の長いダークなムードの曲を据えつつも、ラストは感動的なまでに美しい曲で締めくくられ、聴き終えた後には晴れやかな気分さえ感じさせる、という点も共通している。そしていずれの作品も、「死」をネガティヴなものとして捉えるのではなく「充実した人生の終着点」とすることで、まさに「人事を尽くして天命を待つ」という、ある種の解脱感を感じ取ることができる。

Leonard Cohen - "Treaty"




Alicia Keys / Here [Deluxe Edition] (2016)
★★★★★
Alicia Keys Here

これまでのアルバムのトータル・セールスは全世界で3,000万枚以上にのぼるUSの人気SSWによる6作目。

先に公開された曲「In Common」を聴いた時は、ただトレンドに乗ってみましたという感じがして全然ピンと来なかったけど、この曲は本編ではなくデラックス盤のボーナストラックとして収録されており、どういう意図や経緯があったのか気になるところ。おそらく、本作のコンセプトに合わないと判断したのだと思うが、それだけ本作は非常にコンセプチュアルな印象を受けた。

全体的に、彼女自身が多感な時期を過ごしたであろう90年代のNYの音楽シーンを再訪するようなプロダクションで、ヒップホップがメインストリームとなった頃のビートに、ストリングスやヴィブラフォンやアコギなど多彩な生楽器、そして彼女の艶やかなピアノと力強いヴォーカルが加わり、重層的でライヴ感の強い作品となっている。Kanye West『Late Registration』やChristina Aguilera『Back to Basics』、Justin Timberlake『The 20/20 Experience』なんかにも少し近いけど、本作はそれらよりもシリアスでもっと厳か。

ラストの「In Common」はやはり浮いてはいるものの、ラストに配置されたことでなぜか締めとしてしっくりくるし、曲単位で聴いた時よりも良い曲に思えてくるから不思議だ。

Alicia Keys - "Blended Family (What You Do For Love)
feat. A$AP Rocky "





テンテンコ / 工業製品 (2016)
★★★★★
テンテンコ 工業製品

元BiSの殺し屋担当、テンテンコによる初のソロ・ミニ・アルバム。7曲全て異なるプロデューサーによるもので、七尾旅人、JINTANA、EYƎ(ボアダムス)らが参加。

2年前にリリースされたシングル「Good bye, Good girl.」にヤラれ、以来ずっとアルバムを心待ちにしていた末のようやくのリリース。収録有無が心配でもあった同曲は無事収録され、ミニ・アルバムではあるものの結果的にはミニならではの「濃い」作品となった。ノイズ、インダストリアル、エレポップ(Not エレクトロポップ)、果ては幼児教育番組ミュージック(?)etc.をゴッタ煮にし、キュートでポップながらも実験精神やパンク精神が感じらせる。

テンテンコ - "放課後シンパシー"




The Weeknd / Starboy (2016)
★★★★★
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商業リリースの3作目。Daft PunkやKendrick Lamer、Lana Del Reyが参加し、全18曲という気合の入りよう。売れる気満々だ。

前作『Beauty Behind the Madness』からすでにメインストリーム感を見せていたけど、本作ではさらにそれが加速。しかし彼らしいダークでミステリアスなサウンドは冒頭の表題曲から失われることなく、いつになくアッパーな曲調と過激なMVが話題を呼んだM3「False Alarm」まで一気に畳みかける。ただ、中盤以降になるとダークさも薄れ、ユルいムードの曲も。この辺はもう少しコンパクトに、ダークなトーンで統一しても良かったかもしれない。どの曲もクオリティが高いので、曲数を減らすのも確かにもったいないのだけど。

The Weeknd - "False Alarm"




Warpaint / Heads Up (2016)
★★★★★
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LAの女性4人組バンドの3作目。

2ndはそれほど気に入らなかったし、先行公開された「New Song」を聴いた時は初期の良さが完全に失われてしまった感じがして、本作にさほど期待してはいなかった。しかし聴いてみると驚くほど良くて、むしろ1stやその前のEP『Exquisite Corpse』よりも良いのでは?

エレクトロニックなビートを多用しつつもそれが生ドラムと良いバランスでミックスされ、これまでよりもグルーヴ感が増しているし、例の「New Song」でさえもアルバムの中で聴くととてもかっこよく感じられる。最初は違和感も感じた、少しこもった感じのローファイなサウンド・プロダクションも聴き込むほどにアジが出てくる。

Warpaint - "Whiteout"




KANDYTOWN / KANDYTOWN (2016)
★★★★★
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東京・世田谷発の16人組ヒップホップ・クルーによるメジャーデビュー・アルバム。生音とエレクトロニックな音のバランスが絶妙で、JamiroquaiやSuchmosなどにも通じるかっこよさがある。ライム&フロウも秀逸で、ヘンに自己主張したり押しつけがましくない感じのラップがとてもクール。

KANDYTOWN - "R.T.N"




Kanye West / The Life of Pablo (2016)
★★★★☆
Kanye West The Life of Pablo

7作目。2月のリリースながらしばらくストリーミングのみで、現時点でもフィジカル・リリースはなかったので年末まで引っ張った(どうせそのうちフィジカルでリリースされるだろうと思い、その時まで聴かないでおこうと思っていた)。

『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』に入ってそうな曲もあれば『Yeezus』に入っていてもおかしくない「Freestyle 4」のような曲もあって、全20曲ということでやや散漫ではあるけど、これまでの集大成とも言える中身の濃さ。ゲストも超豪華で、彼がどれだけカリスマティックで人脈があり、愛されているかがよくわかる。それにしても前作の「I Am a God」に続いて「I Love Kanye」などという曲をリリースできるこの人は本当に愛すべき馬鹿だと思う。



Solange / A Seat at the Table (2016)
★★★★☆
Solange A Seat at the Table

Beyoncéの妹による8年ぶりの3rd。とはいえ「Beyoncéの妹」という肩書は不要だし、むしろ足枷だと思う。全くアプローチというかベクトルが異なるのだから。

本作でバックを固めるのはラファエル・サディークにクエストラヴ(The Roots)、Samphaと、豪華かつジャストな人選。アブストラクトでチルなムードを漂わせつつ、安易に流行に乗ってそのような装飾を施しているわけではなく、あくまで彼女のソウルフルで繊細な歌声を中心に据えつつも、それを最大限に引き立たせるためのバック・トラックという感じがする。



きのこ帝国 / 愛のゆくえ (2016)
★★★★☆
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メジャー2作目。インディーズ時代のアルバム『フェイクワールドワンダーランド』はそれまでの「重さ」「喪失感」を失うことなく、いい意味での「ユルさ」すら手に入れたポップな名盤だったが、その後のメジャー1st『猫とアレルギー』はさらにポップに突き抜け希望に満ちながらも、それゆえに物足りなさのようなものも感じた。

このままメジャー感のあるロック路線で行くのかと思いきや、本作では再び「喪失感」をテーマにしているように思える。冒頭のタイトル曲「愛のゆくえ」で歌われる"生きてるの"という問いかけ、そしてラストの「クライベイビー」で歌われる"なんにもいらないんだよ きみが生きていてくれれば"という願望。これは、かつて「疾走」(『フェイクワールド~』収録)で歌われた、失踪してしまった友人への想いを歌った"いつかまた会いましょう どこかでまだ息をしてる"と同じテーマなのではないだろうか。会いたいのに会えない人、この先会えるのかどうかすらわからない人への、行き場のない想い。グッと大人っぽくなり表現力も増した佐藤千亜妃のヴォーカルからもそんなエモーションが垣間見える。

ただ、そんな「前作からの揺り戻し」も感じられる本作において、新境地もかなり窺うことができる。「LAST DANCE」は、彼らの「クロノスタシス」にも近いムードを持つソウル・ナンバーだが、今回はさらに肩の力が抜けているし、「夏の影」におけるレゲエ/ダブの意匠からはフィッシュマンズやPolarisの面影も感じられる。そしてフィールドレコーディングによる「Landscape」を中盤に挟むことで、時間の流れ、季節の移ろい、そしてそれにより増幅/軽減されゆく「喪失感」が、つまり「愛のゆくえ」というタイトルにも繋がっているのではないだろうか。

まるで映画や小説のような作品。全9曲は大正解だと思う。



Fifth Harmony / 7/27 (2016)
★★★★☆
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オーディション番組、「The X Factor USA」から誕生した女性5人組グループの2nd。

大ヒット曲「Work from Home feat. Ty Dolla $ign」ばかりが注目されがちだけど、他の曲もトレンド感があってかっこいい。まんま90年代初頭のマイケルやプリンスみたいな「Not That Kinda Girl」が特に良かった。思わず「Do You Remember?」と歌いたくなる…。



Lust for Youth / Compassion (2016)
★★★★☆
Lust for Youth Compassion

スウェーデンの3人組エレクトロニック・バンド。

彼らとわりと近しいと思っていたReal Liesが2ndで失速した感がある中、こちらは快作。まずDepeche Modeのようなオープナー「Stardom」から始まり、その後はNew Orderばりの美メロ哀愁シンセ・サウンドを展開。M7「Tokyo」は都民としては嬉しくなるほど良い曲だし、ラストの「In Return」はナショジオのサイエンス系番組のBGMみたいなスピリチュアル感に満ちていてかっこいい。さながらDeep Forest×ポエトリー・リーディングという趣。



BiS階段 / BiS階段2 (2015)
★★★★☆
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2014年に解散した(現在はメンバーチェンジして再始動)アイドル・グループBiSと、ノイズ・バンド非常階段によるノイズ×アイドル・ユニットの2nd。というか、解散後にこんなものをリリースしていたとは知らなかった。ちなみに本作はBOXセットに入っていたり、フランスのレーベルからのアナログ盤などで流通している。

2013年リリースの1stは当ブログの2014年上半期の旧譜ベストアルバムでも、当時BiSのことをよく知らなかったにもかかわらず8位にランクイン。刺激的なサウンドでありつつポップな泣きメロに惹かれた。本作のアプローチは基本的に1stと同じなので、1stと比べるとどうしてもインパクトでは劣るし、選ばれたBiS楽曲自体も1stの方がクオリティは高かったとは思う。



Marissa Nadler / Strangers (2016)
★★★★☆
Marissa Nadler Strangers

ブルックリンのインディ・レーベルSacred Bones Records所属の女性SSW。

英語版wikipediaではジャンル欄にフォーク、アンビエント、ゴス、ブラックメタルなどが挙がっているが、そのジャンル表記的に近いChelsea Wolfeと比べるとこちらはだいぶポップ。しかしそこはSacred Bonesらしく退廃的な耽美さがあり、おそらく最も音楽的に近いのはLana Del Reyだと思う。



My Little Lover / re:evergreen (2015)
★★★☆☆
My Little Lover reevergreen

完全新曲の新作と、デビュー・アルバムのリプロデュース盤『evergreen+』の2枚組で、デビュー20周年を記念してリリースされた。デビュー当初、ラジオで初期のシングル曲聴いたことがある程度で特に思い入れはなかったが、最近90年代を振り返る企画などで名前が挙がることが多かったので聴いてみることに。

まず『evergreen+』の方は、「懐かしい」と思う一方で「こんな曲だったっけ?」と思う部分も多かった。この「リプロデュース」というのは再録ではなく、おそらく新しい音を加えたりリマスタリングしたものだと思うけど、いわゆる2010年代的なJポップ・マナーの「やたら輪郭のくっきりした、整然と音が並べられて音圧の高いミックス」ではない辺りはさすがポップ職人の小林武史という感じ。

新曲音源の方は1曲目からクリスマス・ソング(しかも大滝詠一っぽい)だったり、全体的に冬を感じさせるのでこの時期にぴったり。akkoの歌声が変わらず「エヴァーグリーン」なところもすごい。



スピッツ / 醒めない (2016)
★★★☆☆
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15作目。前半は良かったけど後半は少し遊び心(?)のある曲があったりするが、そこがちょっと求めているものと違った。おそらく先月にシングル集『CYCLE HIT 1991-1997』『CYCLE HIT 1997-2005』を聴いて本作に備えたせいでハードルが恐ろしく上がってしまったせいだと思うが…。ラストの「こんにちは」はなぜか青春パンク風。これを聴くとジュディマリの「クリスマス」を思い出す。



Dolores O'Riordan / Are You Listening? (2007)
★★★☆☆
Dolores ORiordan Are You Listening

アイルランドを代表するバンド、The Cranberriesのヴォーカリストによるソロ作。

ドラムの音がやたらとかっこいい。ハードなギターが鳴り響くオルタナ感の強い曲もあれば繊細な曲もあるというのはバンド時代とほぼ変わらず。



Angel Olsen / My Woman (2016)
★★★☆☆
Angel Olsen My Woman

米ミズーリ出身の女性SSWによる3作目。Sylvie VartanやConnie Francisを彷彿させる60年代オールディーズのような親しみやすいメロディとエモーショナルなヴォーカルは、PJ Harveyの「The Community of Hope」にも通じる。ラストの「Pops」は好きなタイプのピアノ・バラードだけど、ヴォーカルの割れ気味のエフェクトは余計だった気も。



David Bowie / Scary Monsters (And Super Creeps)
(1980)

★★☆☆☆
David Bowie Scary Monsters And Super Creeps

13作目。今年1月に亡くなったことをきっかけにボウイの過去作を15枚ほど購入し少しずつ聴いてきたが、本作でそれも聴了。が、このアルバムはその中でも唯一「良くない」と感じた。

というのもやはり1曲目「It's No Game (Part 1)」はインパクトが強すぎるというか、われわれ日本人からするととても滑稽に聞こえてしまうし、その印象を結局最後まで引きずってしまう。しかしその一方で、本作の3年前に『Low』、3年後には「Let's Dance』を出しているということで、あらためてボウイの変幻自在で強烈な個性が実感できる。



【今後の予定】※購入or予約済みでまだ聴けていないタイトル
Siouxsie & The Banshees / Classic Album Selection #2 (2016)
Jenny Hval / Apocalypse, girl (2015)
Destruction Unit / Deep Trip (2014)
The Smashing Pumpkins / Adore [Super Deluxe Edition] (2014) ※Disc 5~7
En Vogue / Funky Divas (1992)
Pink Floyd / The Wall (1979)
Electric Light Orchestra / A New World Record (邦題:オーロラの救世主) (1976)
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