ライブレポート

ライブレポート:yule『symbol』リリースツアー「caravan」@月見ル君想フ

1年半ぶりのライブレポート。今回はこちらについて書きました。

yule 「symbol」リリースツアー 「caravan」

出演:yule / MARQUEE BEACH CLUB / Special Favorite Music
2017/5/13
@青山 月見ル君想フ

「symbol」がアルバムタイトル、「caravan」がツアー名となります。ブログタイトルのみ、当ブログのライティングルールに則って表記を「symbol」から『symbol』に替えさせていただきました。






2月にリリースされたyuleのデビュー・アルバム『symbol』を記念したツアー「caravan」のファイナルである東京公演に行ってきた。


外苑前駅から徒歩数分、外苑西通りから一本路地を入ったところにあるライヴ・スペース「月見ル君想フ」。今回初めて行ったが、独特の雰囲気を持つその名から、以前より気になっていたハコだ。


入口を入るとステージを見下ろす椅子とテーブル付きの2階席があり、そこを降りるとステージと1階フロア、バーカウンターがある。バーカウンター付近の天井はテントのように布が垂れ下がっていて、ステージの後方には大きな月が照らされるなどそのハコ名に沿ったロマンティックなムードが漂っており、まさにyuleの音楽にピッタリの会場かもしれない。ドリンクも「よなよなエール」などがあったりするのが嬉しい。


まずは一組目のゲスト、Special Favorite Musicが登場。今回出演する3組はいずれも6名以上という編成だが、このバンドが最も多い7人組。初めて観たのだけど、ヴァイオリンやサックス/フルートの音がサウンドに彩りを持たせており、特に中盤に披露されたカントリー調のアップリフティングな2曲(およそ1年ぶりに演奏された、結成初期の曲だという)がとても良かった。他にもJackson 5を思わせる(というか、それをなぞった小沢健二といった方が近い?)ソウルフルな楽曲などもあり、自然と体が心地よく揺れた。

sfm.jpg



二組目はMARQUEE BEACH CLUB。様々な音が鳴りながらも隙間のあるグルーヴが心地よかったSpecial Favorite Musicとは逆に、こちらはグイグイと引っ張っていくタイプ。シューゲイザー風の轟音ギターや美麗シンセを鳴らしつつも、うるさい感じや過密感はなく、どの音もかき消されることなくクリアに聞こえた。この辺のバランスは緻密に計算されているのだろうと思う。


洋楽でいうとPhoenixやTwo Door Cinema Clubといったシンセ×ギター主体のダンス・バンドでは、繊細でハイトーンな男性ヴォーカルな場合が多いが、このバンドの男性Vo.コイブチマサヒロは芯のある伸びやかな低音。女性Vo.のシマダアスカのハイトーンとのコントラストも良かった。またMCでは、コイブチマサヒロとyuleのVo.、Reiが同郷で学生時代からの友人という話も。そんな間柄の二人が、こうして共にインディー界隈で名が知られるようになってリリパで共演できるなんて、素敵なことだと思う。

mbc.jpg



さて三組目、本日のメインyuleは一人ずつメンバー登場。先ほどまで月が照らされていたステージ後方に、彼らのトレードマークである羊のイラスト(Reiが描いたもの)が掲げられている。

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ライヴは「Morgenrot」からスタート。ちなみに奇遇にも、会場から100メートルも離れていないところに同名のアート・ギャラリーがある。後にReiのMCでも語られたように、かなり緊張していたためか序盤には少しミス(?)のように聞こえた部分もあったがすぐに立て直し、彼らの持ち味であるドリーミーかつ祝祭感に満ちたムードに。Reiの歌声も、以前と比べ心なしか繊細さというよりは力強さが感じられた。


かねてから、このバンドの神髄はライヴにあると口にしてきた僕だが、この日もやはりそれを痛烈に感じさせてくれるものだった。結成から2年ほどだったりアルバムを一枚出したくらいのバンドだと、音源通りに演奏するのが普通だと思う。もちろん間奏を引き延ばして観客にハンドクラップとシンガロングを煽る程度のライヴ・アレンジならどのバンドもやるけど、このバンドは曲の構成やリズムまでガラッと変えてくることがあるから面白い。しかも、音源と異なるライヴ・アレンジをされると「微妙だな…音源通りにやってほしいのに」と思ってしまうアーティストも多い中、彼らは非常にライヴ向きな"しっくりくる"アレンジを取り入れてくる。


それが最も顕著だったのは中盤の「hope.」だ。アルバム音源ではこの曲は1分半ほどしかなく、ドラムもベースも入っていないとてもシンプルなものだが、それゆえにAnnaの透き通る歌声が清涼剤のような作用をもたらし、(尤も、彼らの楽曲はどれも清涼剤的ではあるのだが)アルバム中盤のアクセントになっている。しかしライヴでは2コーラス構成で、リズム隊も加わえたアレンジがされていた。確かにライヴではシンプルで短い曲はどうしても「中休み」感が拭えなくなってしまうし、逆にアルバムではあのアレンジが最適だと思う。「適材適所」という言葉をよくわかっているなあと感じた。


大衆に受け入れられ、大きくなっていくバンドは単にいい曲を書くバンド、盛り上がる曲を書くバンドだとは思わない。そういうバンドも、成長をしなければすぐに飽きられてしまうからだ。でも彼らは、常にアイデアに満ち、日々実験と研究を行っている。しかも、彼らは初ライヴの頃からそうだった。思えばあの時ラストに演奏された「羊が眠る頃」は、それまでsoundcloud上で聴いていた音源とは比にならないほどの轟音シューゲイザー・サウンドだったのだから。


アンコールで演奏された「舟乗りとバルカロール」はアルバム未収録の新曲で最近よく演奏されているそうだが、そんな彼らのことなので次の作品に収録される頃には、きっとこの曲も全く異なるアレンジになっていることだろう。今から楽しみである。


それともう一つ、今回のライヴであらためて感じたのは「バンドの状態の良さ」だ。「バンドの状態の良さ」というと非常に抽象的だが、そこにはいろんな意味が含まれている。具体的には「仲の良さ」「メンバー間のリスペクト」「メンバー間の信頼関係」「作品に対する満足度」「ライヴすることの幸福感」「自分たちのやりたい音楽を演奏していることの満足感」「オーディエンスの反応から得られる満足感」「オーディエンスへの感謝の気持ち」「謙虚さ」「現状に甘んじることない上昇志向」「スタッフや関係者、ゲスト二組への感謝」「未来への希望」etc.…。バンドを代表し、はにかみながらMCをするRei、それをフォローするAnnaの言葉の端々から、それらが溢れ出ていた。


最後にオーディエンスをバックに記念撮影をしたのも、一度このリリースツアーファイナルを持って気持ちに区切りをつけ、この光景を胸に次なる挑戦を続けていくためのものだったのではないだろうか。そんな彼らが頼もしくも思えた一夜だった。カーテンコールは見事にタイミングがバラッバラだったけど(笑)。

yule2.jpg


■2017/5/13 setlist
Morgenrot
ゴーストタウン
Symbol
Starry Song
Call
hope.
It's dark outside
Ruler
sleepless sleep
羊が眠る頃
(en.)舟乗りとバルカロール


Spincoasterでのyuleインタビュー(インタビュアーは僭越ながらわたくし)もぜひ。
http://spincoaster.com/interview-yule

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