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Albums of the Month

Albums of the Month (2018年10月)

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明日からドイツに行ってきます。というわけでちょっと早いですが10月に初聴きした音源まとめ。今月は邦楽オンリーでした。



きのこ帝国 / タイム・ラプス (2018)
★★★★★
きのこ帝国 タイム・ラプス

先月このアルバムについてSpotifyで試聴(※個人的にやはりまだ、ストリーミングは「試聴」の域を出ない)したと書いたけど、CDでも聴いたのであらためて。

まず、王道のJポップマナーに則った作風というのは間違いない。それも「イマ」の王道というよりは、随所に90年代後半~00年代の意匠を感じさせる。そのため聴く人によっては「古臭い」「普通」などの印象を持たれかねないように思う。が、その時代に多感な時期を過ごし、Jポップや邦楽ロックの金字塔アルバムが次々と誕生していくのをリアいタイムで体験した身としてはそこにこそノスタルジアを感じるし、本作の真価を見出だすことができた。そして何より、ソングライティングとVo.佐藤千亜妃の表現力に関してはバンド史上最高レベルとなっている。

確かに前作『愛のゆくえ』とは少し趣が変わり、曲調だけで言えば前作のようなアンニュイさや喪失感が薄れ、全体として軽やかかつ爽やかな雰囲気を感じる。歌詞こそこれまで以上に詩的で情景豊かになっているが、ことメロディに関しては普遍的であり、そのポップなバンド・サウンドはジュディマリの、Coccoの、椎名林檎の、YUIの、そしてブリグリのそれに近い。

そんな本作の第一印象は、『猫とアレルギー』に似ているな、というものだった。実は『猫と~』はリリース当時軽く失望し、その後あまり聴いていなかったのだが、『タイム・ラプス』は『猫と~』に似ているにもかかわらず不思議と何度もリピートしてしまった。

本作をリピートするうち『猫と~』も聴いてみたくなって、久々に聴き返してみたのだが…。何これ?めちゃくちゃ良いぞ!?まるで別の新しいアルバムを聴いているかのような感覚。すべてが新鮮で、印象も180度変わった。

そもそも『タイム・ラプス』にハマった要因というのも、最初のストリーミング試聴からCDでの本聴きの間に佐藤千亜妃のソロEP『SickSickSickSickSick』を聴いたことが大きい。これを聴いたことで、『タイム・ラプス』がただの「普遍的Jポップアルバム」としてではなく、ソロ作の反動というか明確にコンセプトが分けられた「カウンター」としての存在意義が浮き彫りになったのだ。本作が普遍的ポップスである所以や、このバンドが今これを作った意味・意義のようなものを理解したことで、本作の持つ本当の魅力がさらに引き立っていったように思う。

今月は『猫と~』だけでなく、所持している彼らのディスコグラフィー(『渦になる』『eureka』『フェイクワールドワンダーランド』『愛のゆくえ』)も一通り聴き返したが、いずれもこれまでよりも一層素晴らしく聞こえた。そして、このバンドが本当に好きになった。過去作品たちにまで大きな変化をもたらせた『SickSickSickSickSick』も、今年のベストトラック候補である「金木犀の夜」を含む本作も、とにかく最高の一言。

きのこ帝国 - "金木犀の夜"




神聖かまってちゃん / ツン×デレ (2018)
★★★★★
神聖かまってちゃん ツン×デレ

(新作が出るたびに言っているけど)かつては邦楽ロック界を震撼させ多くの中毒者とアンチを生み出した神聖かまってちゃんだが、今ではもはや彼らの新譜を聴くのは以前からのファンくらいで、「よくしらんがなんか話題だから聴いてみよう」という人もほとんど見かけなくなってしまったように思う。そんな彼らもあっという間に結成10周年。2010年代の初頭は、まさか彼らの活動が10年も続くとは思ってもみなかった。ライブでグダグダしたり殴り合いの喧嘩したりカミソリで自傷行為するようなバンドは、短命の宿命(それは美学でもある)を背負っているし、何よりも飽きられやすいからだ。

そんな自分も既に彼らのサウンドにはフレッシュな感想を持っておらず、なんだか新作を聴くのもルーティンのような感覚になってきてはいて、ここ数作は「これで彼らの新作を追うのも最後かなあ」とか何度か思っているのだが、不思議とそれでも聴いてしまう。でもその理由は、彼らと出会った頃のような「ヤバいモノを知りたい好奇心」なんかではなく、単純に「安心感のあるイイ曲を聴きたいから」にいつしか変わっていった。そう、彼らは本当に「イイ曲」を書くから。

しかし今回の彼らはあざとい。「10周年」を意識した取り組みがそこかしこに見られ、の子本人監督による「8月の駅」のMVや、彼らの写真を撮り続けてきた竹内道宏氏による「33才の夏休み」のMVなど、熱心なファンなら思わず涙してしまいそうな、これまでの彼らに関するあれこれのオマージュがふんだんに盛り込まれた映像に「なにこれ解散すんの?」とツッコむ人が出てきてもおかしくないほど。

さて本題の音楽の方だが、なぜか『友達を殺してまで。』や『つまんね』『みんな死ね』の頃を思い出してしまった。原点回帰…?いや、具体的にどの部分がと言われると説明できない。もちろん、「塔を登るネコ」や「トンネル」といった古い曲をリメイクしているからというのも大きいとは思うけど、なんだかかつての「キレ」を取り戻しているように感じられる。ここ数年の彼らはその「キレ」とひきかえに「洗練性」「大衆性」を体得していったが、いかんせん登場時の奇行がインパクトあり過ぎてその後の「大衆性」に世間がスポットを当てることはなかった。でも今作は初期の「キレ」を取り戻しつつもしっかりと「洗練性」「大衆性」も備わっていて、10年の集大成と呼ぶに相応しい作品となっている。

あと、今回歌詞がとても良い。初期はイジメ体験や自殺願望など少年期の実体験をテーマにした生々しい歌詞が多かったが、ここ最近は大人になったこともあって「リアルな衝動」を前面に出すことはあまりなかった。しかし今回はこの10年を振り返っての後悔や反省、もどかしさやフラストレーションが随所に見てとれ、「決戦の日」という曲では

せんせーもワーナーもうるせぇ てめえ何様だ?
黙って待ってろよカス
口出してくんなカス


という歌詞が登場する。まあここだけ抜き出すと陳腐でただの汚い歌詞に見えるが、全体を通して聴くと「レコード会社からのプレッシャーやセールス状況を受けてバンドの方向性に迷ったり悩んだりしてきたけど、今まで周りの大人の言うことを聞いてきたのに結局うまくいってないじゃん!ならもう自分たちの好きなようにやらせてもらうぜ!」という吹っ切れた思いが、作品全体からヒシヒシと伝わってくる。10年間、試行錯誤と浮き沈みはあったが、ようやく彼らは長いトンネルを抜け出し、背伸びせず自分らしく、そして過去にすがることなく純粋にかっこいい音楽を鳴らせるようになったんだと思う。彼らにこう言いたい。「きっと良くなるさ」、そして「おかえり」。

神聖かまってちゃん - "33才の夏休み"




宇多田ヒカル / 初恋 (2018)
★★★★★
宇多田ヒカル 初恋

何だよこれ、『Fantôme』超えじゃん。前作におけるテーマ「母との別れ」の流れを汲むエモーショナルな作風だとは思うが、今回はこれまで以上に「リズム」や「ビート」に重きを置いた作品になっていると思う。「リズム」「ビート」とはもちろんドラムも含まれるけど、より印象的だったのは歌詞の譜割りのリズムだ。

今さら何言ってんだよ、宇多田ヒカルはデビュー当時から独特のリズムを持った譜割りで評判だっただろと言われそうだが、なんか今回はさらに次元を飛び越えた感じがする。とにかくカラオケで正しく歌える気がしない。

全体としては、「儚さ」と「侘び・寂び」が織りなす美しさ、そして音と音の隙間に生まれる透明なリズムの妙が堪能できる素晴らしい作品だと思う。それらはとりわけ「誓い」「Too Proud featuring Jevon」「嫉妬されるべき人生」において顕著だ。RadioheadとAlicia Keysがコラボしたらこんな感じになるんだろうか。

宇多田ヒカル - "初恋"




V.A. / TETSUYA KOMURO ARCHIVES "T" (2018)
TETSUYA KOMURO ARCHIVES T

V.A. / TETSUYA KOMURO ARCHIVES "S" (2018)
TETSUYA KOMURO ARCHIVES K

今年引退した小室哲哉のプロデュース曲、楽曲提供曲を2タイトル各4枚組に収めた集大成的コンピレーション。これは★評価なしで。まず小室哲哉と言えば思い入れが強すぎるし、さすがに全100曲も入っていると大好きな曲もあれば全然知らないイマイチな曲もあるので評価できない…。80年代の女性アイドルへの提供時代から90年代の小室ブーム、そして最近の曲まで網羅しているけど、円谷優子や大賀埜々など、小室ブーム全盛期だったことでglobeや安室・華原らの陰に隠れてしまった佳曲も収録されているのが嬉しい。

2000年代に入ってからは小室ワークスを熱心に追っていたわけではないので知らない曲も多かったのだが、個人的に注目したのは小室哲哉 vs ヒャダイン名義の「22世紀の架け橋」という曲。イントロ2秒を聴いた瞬間に「この音は!!」とガタッときた。というのもこの曲はヒャダインこと前山田健一のファースト・シンセであるYAMAHAのEOS B700という、90年代に小室氏がプロデュースしたシンセ内臓の音源のみを使って作られているのだが、このシンセこそ僕のファースト・シンセでもあるからだ。なのでこの曲を聴きながら、「あ!これはプリセット36番のピアノの音!」みたいな感じで「思い出の音色」の洪水に大興奮。それにしても今ではさすがに「音、古いなあ」と思ってしまうシンセだが、プロが使うと「鳴り」が全然違う…。

あと、田中美奈子の「夢みてTRY」には思わず笑ってしまった。この曲を聴いたのは初めてだったんだけど、これどう聴いてもSinittaの「Right Back Where We Started From」ですわ。この「Right Back~」、オリジナルはMaxine Nightingaleという人の曲だけど、アレンジ的に参照元はSinittaの方だろう、と思ってちょっと調べてみたが、Sinittaのプロデュース・チームである「PWL」のウィキペディアに「小室哲哉がダンス・ミュージックに興味関心を抱き、1987年にPWLのスタジオを見学したり」とか「 SAWのヒット曲を連発させた(PWLの)プロデュース手法は、小室哲哉等にも影響を与え、その後の日本の1990年代の小室哲哉プロデュース楽曲ブームを生み出すことになった」とか書いてあって、完全に確信犯(笑)。小室氏がここまで露骨な「パクリ」をするのはちょっと珍しい気も。オマージュレベルの曲は多いけど。

田中美奈子 - "夢みてTRY"


Sinitta - "Right Back Where We Started From"




渡辺美里 / Love Go Go!! (2000)
★★★☆☆
渡辺美里 Love Go Go!!

「今月の渡辺美里」は12作目。お気に入りは9曲目「十六夜の月 ~izayoino tsuki~」だが、この曲のアレンジやサビのメロディ展開はSuzanne Vegaの「World Before Columbus」がベース…?絶対意識していると思う。他、ボサノヴァな「Lazy sunny afternoon」が新鮮だった。
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