フリートーク

「J-POPは低俗じゃない」「他人が酷評した音楽こそ聴く価値がある」そして「音楽はググるな」

書きたいことがいくつかあるのだけど、
みんな関連してるのでまとめて書きます。

まず初めに言いたいのは、MATT & KIMのニューアルバム"Sidewalks"が、すごくイイということ。

MATT & KIMを初めて知ったのは、今年の春頃。
ニューヨークの街なかでメンバー本人が全裸になり、
衝撃的なラストを迎えるPVで話題となった
"LESSONS LEARNED"が最初でした。

PVも新鮮だったけど、橋から落ちてるアーティスト写真や
キーボード+ドラムというミニマムな編成にも惹かれました。
さらにフジロックへの出演も決定、これは絶対観なくてはと、
当日ホワイトステージまで足を運びましたが
キムの満面の笑顔でのドラミングにこちらも思わず笑顔がこぼれるような楽しいショウでした。

でも正直、どの曲も同じような、歪んだオルガン風のシンセ音を使っているため、
表現の幅が少なく、次作を出しても同じような曲の繰り返しになるだろうと、
まったく期待していませんでした
MATT & KIMは、もうこの作品(「Grand」)で終わりだろうと、考えていました。

・・・

先週、ある人との待ち合わせ時間を1時間間違えてしまい、
渋谷のタワーレコードに時間つぶしに行った時のこと、
いろいろ試聴して回ったのですが、
その中でMATT & KIMの新作「Sidewalks」がふと目に留まりました。
「どうせ前と同じでしょ」と思いながらも、とりあえず時間もあるので試聴機のPLAYボタンを押しました。

その瞬間、前作とは明らかに異なる音色やアプローチ、さらによりメロディアスな楽曲に、
耳が釘付けになったのです。
これがあのMATT & KIM?大いなる飛躍じゃないか、と。

その後CDを購入、ちょくちょく聴いていますが、
やはり曲のクオリティやメロディが格段に向上。
さらにプログラミングも多用し、ピアノやシンセの音はもちろん、
ホーンやピチカートストリングスなど、より多彩な音が鳴っています。

Matt & Kim - "Good For Great"




でもこのアルバム、もしその日待ち合わせ時間を間違えなければ、
出会えなかったかもしれないんです。

そう考えると、すべての音楽って偶然の出会いから生まれる奇跡なんだな、とあらためて気づきました。
人々の頭の中に蓄積される、これまで聴いた音楽のライブラリって、
これまでのいくつもの音楽との偶然の出会いによって作られたもの。
そう考えると、すごく不思議な気持ちになりませんか?

たまたま入ったお店で流れていて好きになった、
たまたま好きな映画に使われていて好きになった、
たまたま好きな人が良く聴いていて好きになった・・・


人との出会いや、たまたまいた場所がきっかけになって、
僕たちの音楽の世界は無限に広がっていくんですね。


そう考えると、僕はいろんな素晴らしい音楽との出会いを大切にしたい、
どんなチャンスも逃したくないなって思うようになりました。
聴く機会があったら、迷わず聴く。
気になる音楽がお店で流れてたら、
迷わず「これ誰の曲ですか?」ときく。
そんな風に、最近は心がけています。
だってそのチャンスを逃したら、素晴らしいその曲を、この先一度も聴かずにいつか忘れてしまうかもしれないじゃないですか。

・・・

僕には学生の頃、音楽の話で盛り上がれる友人が何人かいました。
その中の誰かの家に集まり、酒を飲みながら、
朝まで延々と音楽を聴いたり
ライブのビデオを観たり。

その時に友人からSLINTやTORTOIS、PAVEMENT、TODD RUNDGREN、THE BEACH BOYS、TIM BUCKLEYなど、
いろんな音楽を教えてもらいました。
でも、それらの音楽を教えてくれた友人も今では、VAMPIRE WEEKENDさえも知らないという現状。
仕事や結婚によって、音楽を聴く時間が失われて、
音楽への興味も昔より冷めてしまったんですよね。

そんな、音楽の喜びを分かち合え、刺激を受け合える友人が減っていく中、
「あの頃」のような刺激的な毎日を過ごさせてくれるのがTwitterで出会った人たちです。
この出会いも、すごい偶然の奇跡なんですよね。

・・・

もうひとつ言いたいこと。
ここ10年の間に、インターネットが爆発的に発達して情報化社会になりました。
世の中に情報が溢れすぎてて、
何もしなくてもどんどん情報が入ってきますよね。
音楽も、自分から何もしなくてもどんどん勝手に耳に入ってきます。
そんな世の中が、「自分で音楽を見つける」ってことを人々にさせなくなったんじゃないかなって思うんです。

最近のJ-POPは低俗だっていう意見もありますが、
これってリスナーの、音楽に対する意識も変わったからだと思う。
リスナーが、膨大な情報に飲まれて自ら音楽を探求しなくなった。
それで、テレビなどから聴こえてくる音楽だけを聴いて、満足してしまう。
それ以上深くは掘り下げない。
なぜなら、そんなことをしなくても自然にどんどん新しい「J-POP」が耳に入ってくるから。

僕は、最近メディアが報じるような「若者の洋楽離れ」とか、空論じみたことを言うつもりはないけど、
自分の身の回りに起きている事実に基づいて、
そういうことが本当に起きているんだと感じています。

J-POPの質が下がったと感じられるのは、
アーティストの意識が低下したんじゃなくて、
リスナーが音楽を求めなくなったことが、
根本の原因じゃないかなって思う。

例えば、2年くらい前にPERFUMEが大ブレイクした時に、
人気の秘密は?とか言って
彼女たちの音楽は40代~50代にも人気の「テクノ・ポップ」だからだって紹介されていた。
もしくは「YMO以来の日本のテクノ・アーティスト」とも。
本人たちも、「そう言われて初めて自分たちの音楽がテクノなんだって知った」と語っていました。

じゃあ、そこで何人の10代の若者が、それをきっかけに「テクノ」や「テクノポップ」を掘り返そうとしたのか?
wikiで調べて、YMOが出てきて、ああ坂本龍一が昔いたんだ、
Youtubeでライディーン聴いて、ああプロレスの入場曲で聴いたことある、
最近で言うと、「あーポッキーのCMの人たちね」
それで満足、テクノについてよくわかりました、で終わっているんじゃないか、と。

インターネット検索は、必要な情報だけ探し当てて、
満足してしまう頻度が高い気がします。
かといって技術そのものを否定はしないですけど、
もっと深く掘り下げれば、もっといろいろなことが分かるのにって思う。

それって、さっき言った偶然の出会いの奇跡を、
いくつも逃してるってことなんじゃないか。
そんな風に考えてしまうのです。

僕は数年前、小西康晴氏が手掛けたYMOのリミックス曲をきっかけに、
YMOを聴き、高橋幸宏さんがやっているSKETCH SHOWや、細野晴臣作品を聴き、
はっぴぃえんどから遠藤賢治、あがた森魚といったフォーク・シーンまで掘り下げて聴きました。
日本にも70年代、こんな音楽があったんだ!
と毎日新しいCDを買う度、ワクワクした覚えがあります。

話を戻すと、Perfumeきっかけで「テクノ・ポップ」ってなんだろうという疑問から、
本を探して読んで、ついディープなテクノの歴史の本を買ってしまい、
「あっ、何かこれ違うな・・・」と思いながらも読んで、
そこから、デリック・メイとかジェフ・ミルズとか、
KLFやアシュラテンペルやエイフェックスツインに興味が湧いてもいいんじゃないかな、と思うのです。

欲しい情報がすぐに手に入って、満足してしまうんではなくて、
どんどん手探りで情報を集めることで、
思いもよらなかった音楽との出会いが広がる。
これが、音楽を聴く、音楽を愛する醍醐味だと思っています。

でも、実際そんな掘り下げてる時間なんてない・・・
確かにそう。
そんな人たちに、少しでも多くの素晴らしい音楽に出会ってほしくて
僕はこのブログを始めました。
このブログを見て、初めて知った曲が
みんなにとって思い入れのある1曲になってくれたらうれしいです。

あと、僕が聴いたアルバムの感想を書いて、星の数で評価を付けていますが、
ぜひとも★マークが少ないアルバムを聴いてほしいと思っています。
なぜなら、僕のこれまで聴いてきた音楽によって形成された趣向と、
他の人の趣向は、すべて異なるから。
人生のいろいろな経験によって、趣向が形成されるのだから
好みが人それぞれなのは当たり前。

他人が酷評した作品こそ、聴いてみて新たな発見や出会いがあり、それが面白いと思っています。

最後に、僕がこのブログを始めたもう一つの理由。
それは、自分がもっと音楽を自ら探求して掘り下げれるくせをつけたかったから。
音楽を紹介する立場になって、今までよりもはるかに目が外に向いて、
いろいろ聴くようになったと思います。
海外の音楽サイトも見るようになったし…
とにかく、最近音楽聴いてない、最近何が流行ってるのかよくわからない、
そんな風に年を重ねていきたくなかった。ただそれだけです。

というわけで、長くなりましたが〆ます。
誰かの人生を変える、素晴らしい音楽の出会いを、
本のきっかけづくりでも提供できれば。
というわけで、このブログをこれからもご愛読よろしくお願いします。
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